〈提督!強制解除直後の状態では、装着の衝撃に耐えられないです!やめてください!〉
秘書妖精の声が聞こえる
大淀の通信機を奪ったのか
いや、そんなことを気にしている場合ではない
「変身」
ガシャリ、とカードを再装填
龍田と天龍のカードは
何も起こさなかった
「……クククク…ハハハハッ!
愉快愉快!何ヲスルノカト期待シテイレバ!何モ起コラナイトハ面白イ!」
ル級の声が響くなか
「…」
俺は二枚のカードを見つめる
共に属性は『光』同じ型の艦である以上、この二枚なら間違いなくソウルを発現する…はずだった
だが、艤装の展開どころかベルトの起動にすら失敗している
「まさかこの二枚…シナジーがない…!?」
そんなはずは無い
天龍と龍田は共に天龍型であるし、カードは両方同じ属性、最低限のシナジーは確保している筈だ
だと言うのにベルトは光りも鳴りもせず、概念艤装が展開される様子もない
「どうなってるんだ…?」
俺の問いかけに、
答えるものはいなかった
「フハハ…!コチラカラ行クゾ!」
「クソ…面倒なっ!」
概念なしで必死に避ける
俺の方に集中しているのか、赤城を慮外に置いているようだが、俺に取ってはそちらの方が脅威だ、
とはいえ、俺に集中している以上、攻撃は俺一人が避け切れば良い
それにも限界はあるが、やはり今は避ける事に全力を集中して、砲撃を回避し切る
「ドウシタドウシタドウシタドウシタ!」
「うざったいんだよっ!」
跳躍、着水、匍匐姿勢からの加速
砲撃を躱した俺の取った一連の動作は、美しい流れとは言うべくもないような
見苦しいもので
しかし、最低限の目標は達していた
着水の勢いと姿勢制御で携帯用無線機をホルダーから外し、それを手に握って
ノールック操作
通信で呼びかける
「大淀!北上の!」
〈はい!〉
僅かに二言だけ、叫ぶ
それだけで十分だ
たった二言で伝わる、それだけの信頼関係を築いてきたのだから
「…今度ハ何ヲスルンダ?」
「さぁて…なっ!赤城!やれるな!」
「はい、準備完了です!」
射線から離れ、十分な距離を確保した赤城が
流星改二を射出、展開させる
それは既に爆弾を使い果たした
爆装を持たないフェイク
つまりは数ばかりのハリボテなのだが、ル級にはそれを知る由もない
フェイクに見事に釣られたル級は負けじと対空戦の構えを取るが、
その背後で、真打を担当する俺は
ただ浮いていたモノを
龍田の薙刀を手にして
ル級の強力な装甲を抜くために
装甲能力の綻びのある関節を狙った
龍田の普段使っている薙刀
艤装を装備していない時でも所持していることの方が多いそれは
俺がなんども修理し、調整して
彼女専用に設えたモノ
当然、俺自身が振るって試した事もある
その時は、龍田に笑われてしまったものだが
今この時に、見栄えや技術は必要ない
ただ力があれば良い
そのために刃を研いできたのだから
「ゥェェエイ!」
〈awaken〉
薙刀の間合いにル級を捉え、
刃筋を立てて振り抜く
その瞬間、龍田のカードがベルトから外れて、薙刀に突き刺さった
「甘イ!」
たかが人の一撃、いかに艤装の一部を使っていても、所詮それを使うための力が足りない見掛け倒し
そう判断したのだろう
ル級は装甲を集約する事もなくそれを真っ向から受けて
腹の半分以上を分断された
「…一撃では届かなかったか」
「ガァァァッ…」
ずぶしゃぁ、と濁った音と共に
半ばまで切り裂かれた腹から血が吹き出す
深海棲艦に犠牲装甲は存在しない
その肉体へのダメージは全てが致命打となり得る
しかし
「ゴァァァッ!沈メェェッ!」
獣の如き咆哮が上げられ
ル級は切られた腹を意にも介さないかのような様子で主砲を振りかざす
「赤城、手を貸してくれ」
「はい、提督」
俺の真横から急加速した赤城が目の前を横切り、俺の手を取って引く
ぐっと引っ張られる感覚、それに逆らわずに移動して
「来ました」
背後から迫る、北上の魚雷を躱す
赤城と俺の方に集中して
海面を見ていなかったル級にそれを躱す術はなく
艤装任せのハリボテでも、技術頼りの狙撃でもなく、霊力の乗った、本物の一撃が
ル級へと突き刺さった
爆発と共に、艤装の装甲が完全に破壊され、コアである深海呪華が光を失う
その瞬間、敵艦隊は旗艦を失い
烏合の衆へと成り下がった
600話記念番外編は
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戦争が終わった後の話を!
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しぐ……しぐ……