長門は大きく名乗りを上げ
同時に装甲を輝かせる
そこに砲撃が着弾し…受け流される
傾斜装甲の理論で砲弾を逸らしたのだ
そう理解するより早く
長門は素早く踏み込み、拳で至近距離の敵軽巡を爆散させる
〈はぁぁぁっ!〉
気合の入った声に、次々と繰り出される小技
身につけ、磨き上げ、そして練り上げられた艤装に依らない戦い方が、今輝いている
「待っていろ…今!この長門が向かうぞ!」
赤く染まった海面に
暗く曇った空に
彼女の声が響いた
「蒼龍さん!」
「まだまだ…行ける…大丈夫!」
掛けられた速吸の声に
すでに大破して、発着艦も叶わぬ身でありながら、気丈に笑って
あらんかぎりの力を振り絞る蒼龍
「提督に…任されたんだから…
この艦隊は…私が守ってみせる!」
空にあるままの流星を見つめて
最後の爆弾を使う
「燃料はまだある…艤装だって動く
主機も回ってる…たかが甲板に穴が空いた程度で…私は諦めない!」
蒼龍の叫びは、その空へと響き
消えゆくよりも前に
「その通りです!私たちは!」
「絶対に負けられない…!」
龍田と速吸が応じる
すでに敵の接近を許し、艤装能力の一部が破壊されてしまった現状
変色海域から通常の海域に復帰するためには、応援の艦を呼ぶしかない
だが、通信は不通
よりにもよって電探や通信の機能を持つパルックを破壊されてしまった龍田はともかく
無事なままの速吸まで電波妨害が及んでいるのか、鎮守府への通信はできない
「速吸流星隊!発艦!」
唯一無事な速吸が流星を出し
独特な動きで攻撃
集中攻撃で一体ずつ、確実に沈める
もともと攻撃隊を複数に分散するほどの練度はなく、操作難度の高い高位機体である流星を扱うためには自然と一体に攻撃を集中する形になるうえ
速吸はもともと空母ではないのだ
周囲全体に一斉攻撃を仕掛けろ、などと求められるほどの力はない
「ぉおおおっ!」
速吸が似合いもしない叫びを上げて
次々に攻撃対象を切り替え
対空砲に落とされながらも爆撃を続ける
しかし、いくら同調率を下げたとしても艦載機のダメージはやはり艦娘へのフィードバックが起きる
ましてや速吸は今、完全手動操作のフルシンクロ状態なのだ
一機でも落とされれば身を引き裂かれる程の痛みが襲う、その状態で
すでに十数機が撃墜された現状
いつ倒れたとしてもおかしくはない
「ぐぅぁ……ぁぁあっ!」
また一機
「ぁぁ…まだ…まだぁっ!」
また一機
落とされるたびに悲痛な声が上がり
ついには目から血涙が流れ始める
「…ぅ……」
「速吸ちゃん!」
足元のおぼつかない速吸に
龍田が飛びついて支える
しかし
「大丈夫…まだ…大丈夫です
私はまだ…戦えますから…!」
血で染まった両眼は
しかし曇りなく龍田を見つめて
そして、再び空へと
「…やれます…まだ!」
彼女の艤装は、空母のように艦載機運用に特化した装備ではない
どちらかといえば前線での戦闘には向いていない艤装である
基本的には後衛を務め、泊地や基地から洋上補給のために前線に向かうことはあっても
最前線で敵に囲まれながら戦えるかといえば否だ
だが、だからと言って
諦めて良いわけではない
(これは提督に命じられた任務であってそれは達成可能な任務なはず
ここで頑張れば…また
提督の元へと帰れる…
必ず…やり切って見せます!)
足の動く内は、主機の回る内は
まだ…諦めるわけにはいかない
長門は大きく、同時に目立ちやすい
海域中の敵を撃ち潰しながら
攻撃を続け、攻撃を集中させ続けている
赤く染まった海上で、周囲全てを囲まれながら、それでも構うことなく
攻撃を続けていく
その姿を見ながら
拳を握り締める
「ベルトももう使えないし…カードが足りない…どうするか…」
ふと呟いた、その瞬間
執務室の扉が開く
「テートクー!ワタシ達を出して欲しいデース!」
「金剛!?」
「ハイ!ワタシ達だって戦艦ネ!
たとえ練度が低くテモ、戦力としては運用出来る筈デス」
「しかし、変色海域への突入は危険だ、練度如何の問題ではなく
変色海域では艦娘の能力も落ちる
いかに戦艦であっても現在の状態では危険が過ぎる!だから長門を単独で出したんだぞ!」
「…はぁ…テートク?良いデスカ?
ワタシは戦艦であり、高速であり、鎮守府最古参でもありマス、
当然デスガ低練度の状態でも戦い慣れてイマス、それに…今は姉妹達も居ルノ」
「お前達全員の艤装を、改造しろと?」
「ハイ、その通りデス
長門達は改造して、ワタシ達ではダメなんて事は無いデショウ?」
「……チッ…問答している暇はないか」
副作用未確認の改造
いかに小規模とはいえど
本来ならあってはならない行為だ
厳重に管理され、手順が確立され
その上で一般化した艤装改造ならばまだしも、今世界で初めて運用されるような試験すら行われていない改造を施せと言われても
俺は絶対にごめんだ
…だが、必要なのだ
それに金剛達の言い分も理解はできる
時間がない、戦力が足りない
逐次投入は愚策と言っても
する他にない
「四分で終わらせてやる」
「テートク、40秒で終わらせて」
「おう」
600話記念番外編は
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過去編深海勢
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裏山とかの話を
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テンプレ転生者(ヘイト)
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ストーリーを進めよう
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戦争が終わった後の話を!
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しぐ……しぐ……