戦いたくなんてなかったんや   作:魚介(改)貧弱卿

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生還の義務

「金剛型全員に緊急招集、至急、出撃ドック前に集合され」「もう全員揃ってマス」

 

言い切るよりも前に金剛に遮られ

言葉を止める

「わかった、んじゃあ全員…制服艤装は着ているな?…よしこれより説明を行う

傾注!」

 

ビシっ!と姿勢を整える金剛型四人

それを横目で見ながら

一番左の金剛の艤装を指差す

 

「まず、今作戦では金剛型四人の内、金剛にのみエネルギーを集中させる

これにより、一時的に低下した戦力を補う形になる

ただし、比叡・榛名・霧島には戦力の向上効果は発生しないので、絶対に!変色海域には入らないように

 

これを前提として行う作戦は…単純だ、金剛の全速力での突撃、すでに戦闘中の長門と合流

長門と共に当該海域に漂着しているであろう蒼龍・速吸・龍田の三隻を回収

その後速やかに鎮守府に撤退

これで終わりだ

 

現状、長門以外には通信が通じていないため、現地での捜索を行うことになるが

長門と、加賀の彩雲によれば敵に視界を埋め尽くされるほどの数が待ち伏せている

危険であるのならすぐに撤退してくれ」

 

言葉を切って、全員に目を向ける

 

「艤装の改造については最低限のものとしているが、なんらかの違和感、改造に伴う性能の変化か起こる可能性がある

もし、なんらかの不具合があれば、即、報告するように

いいな!?…特に金剛!」

 

「ハイ!」

 

「…説明は以上、第四艦隊、出撃を許可する!」

 

金剛型四人姉妹の構成は

奇しくも第四艦隊の解放任務と同じだった

 

 

「やっとワタシ達の出番ネ!」

「…行きます!」

「どんな状態でも、榛名は大丈夫です!」

「霧島、出撃します」

 

出撃していく四人を見送り

そっとその場に腰を下ろす

 

やるべきこと、できることはやり切った

最小限に改造を限定したが

結果としては上手くいった

姉妹艦の相互接続をそのまま金剛に収束させ、旗艦と僚艦の接続をループするようにした

金剛から他の艦へ流れたエネルギーはほぼ全てが金剛へ再回収される形になり

そのまま金剛を強化する

 

「…頑張ってくれ」

 

そう言って、改造中は視界の邪魔になるために切っていた視界接続を再び繋いだ

その瞬間

 

「龍田!」

 

視界に映ったのは

槍を失い、装甲の大半を砕かれ

片目から血を流している龍田の姿

 

すぐそばには

上着まで血で赤く染め上げ

目を抑えて呻く速吸と

腕を折られているのか、弓を失い

甲板も服もひどく損傷した蒼龍の姿があった

 

「まずい…!」

 

長門に通信を繋ごうとしても

ジャミングされているのかつながらず

往生際が悪いと思いながらも何度も確かめる

 

「…クソッ!俺じゃダメだ!

大淀っ!通信を試してみてくれ!」

 

執務室に走りながら、無線を大淀につなぎ、後半の言葉を流す

「長門の通信が途絶えた!ジャミングによるものと思われる!」

 

〈了解しました、こちらからの呼びかけを試行します)

 

大淀はしっかりとこちらの意思を汲み取ってくれたらしく、すぐに通信が切られる

 

大淀は電探や通信機器の出力が高く、通常では通らない通信も送れることがある

もしかしたら、大淀なら

 

「…すみません、提督

こちらからも送受信不能です」

 

「完全に音信不通…か」

 

やられた、と嘆く間も惜しんで

金剛へと繋ぎ

 

「金剛、緊急事態だ、長門との連絡が途絶えた…彩雲も時期に落とされる

ここから先は通信が完全に途絶してしまう危険がある…重々注意してくれ

もし、本当に危険であれば

単独ででも撤退してくれ」

 

断腸の思いで言葉を絞り出す

 

〈テートク!それは!〉

「単独ででも!帰還を最優先としてくれ!

全員で生きて帰れなくても

一人でも多く、帰って来るんだ…いいな!」

 

全員未帰還となってしまうよりは

一人でも多く、生きて帰って来る方が良い

 

あなたの目があなたを躓かせるなら、目を抉り取って捨てなさい、両目揃ってゲヘナに投げ込まれるよりも、片目でも神の国に入る方が良いからである

 

聖書の一節に、こんな文があったはずだ

 

即ち、犠牲を最小限に抑えるために最小の犠牲を許容する行為だ

 

人命に貴賎なしとはいえ

どうしても優先順位は生まれてしまう

 

確実に救える命があるのなら

不確実な全員生還よりも、確実な単独帰還の方が良い

 

そんな俺の選択を察したのか

金剛はひどく暗い息を吐き

 

〈わかりマシタ…絶対に、生きて帰りマス!〉

 

変色海域へと突入した

 

「回避重点!」

その声が届いたかどうかはわからない

 

だが、その瞬間に飛来した射撃を

金剛は躱した

 

〈そんな見え見えの攻撃に

当たるわけナイワ!〉

 

金剛は高速戦艦、装甲に頼って受け止めるのではなく、速度を活かして回避するのがメインスタイルだ

 

奇襲に対応する際の戦法の違いが表面化したと言えるだろう

 

〈彩雲からでも見えるんデスよね?テートクー!見えてますかー!?〉

 

「見えてるよ、金剛」

 

パタパタとこちらに手を振る金剛を軽く諫めて、長門たちの方に向かわせる

最終通信地点のすぐそばまでたどり着き

 

そこで、ついに彩雲が撃墜される

 

「!」

〈!テートク!〉

 

「俺じゃない!姉さんだ!」

 

彩雲が撃墜されたフィードバックは、俺ではなく、加賀方に向かう

視覚が途切れ、聴覚のみが頼りとなったその時

 

「うぉぉぉっ!」

 

喧騒に混じって

聞き覚えのある声が聞こえた

 

裂帛の一声

それは確かに、生存を知らせるもので

俺が何よりも望む

全員生還への道標だ

600話記念番外編は

  • 過去編軍学校
  • 過去編深海勢
  • 裏山とかの話を
  • テンプレ転生者(ヘイト)
  • ストーリーを進めよう
  • 戦争が終わった後の話を!
  • しぐ……しぐ……
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