戦いたくなんてなかったんや   作:魚介(改)貧弱卿

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白く染まる

「…艤装改造、完了、

大井はちゃんと改造後の状態に慣れてから戦っておくれよ?」

 

「もう、念を押さなくてもわかりますから、大丈夫ですよそんなの!」

 

大井が艤装を付けていくのを眺めながら念を押すと、口早に断られてしまった

 

「分かってるならそれでいいんだ

じゃあ、出撃してくれ」

「はいはい…行くわよ!」

 

先に海に出て待っていた北上と合流して

大井は装備を確認しながら進んでいく

 

主機の変調やら装備の偏重はないようだが、心配になる

 

〈…艤装は今のところは…問題ないです〉

「こちらも確認した、

 

よし、ポイントに向かってくれ」

 

一方的に声を返して、通信を切る

 

あとできることは

長門たちの帰還を待つだけだ

 


 

「デース…なんて言ってる余裕はないネ!」

「是非もない」

 

正直に言えば、金剛が応援に来た時は驚いたものだが、それも提督の差し金だろう

私の継戦能力は限界が近い

提督が私の損傷をカバーするために金剛を送り込んだと考えるのは難くはなかった

 

「提督のおかげで私は一時的にせよ、艤装の能力を十全にあつかえる状態

損傷の目立つ長門よりはましよ」

「分かっている、だが装甲能力の優れる私の方が総合的には丈夫なはずだ」

 

ふざけた口調をやめた金剛を横目に見ながら、正面から撃ってきた敵に撃ち返し

そのまま進む

 

電探の反応と味方の識別信号からして、もう200メートルと離れていないはずだが

敵が多すぎて蒼龍達の姿が見えない

 

「ええい面倒な…!撃てぇっ!」

「全砲門…Fire!」

 

一斉発射で活路を開き

その道を

 

「行け金剛!」「了解!」

 

金剛が突っ切る

私などよりもはるかに早い、駆逐艦にすら追いつくほどの脚を持った金剛

その駆け抜ける道を両脇から塞ごうとする敵に、遠慮なく砲撃をくれてやる

 

進むべき道を塞がせる訳にはいかない

 

そして、金剛がついに

敵の密集地を抜けた

 

「よし!…っ!」

 

そこに広がっていた光景は

 

血塗れの蒼龍と、倒れている龍田

そして唯一立って、そのまま気絶している速吸の姿

「な!…そんな!」

「遅かった…とでも…いうのか…!」

 

ギリィ、と何がが軋む音がした

どこから鳴っているのかと気配を探るまでもなく、それは、自分の歯が立てる歯軋りであると分かった

 

そして

 

「貴様らぁぁっ!」

 

怒りが、新たな力を呼び覚ます

 

 

赤く染まる視界は海も空も区別なく

全てを血色へと変えていく

 

遠のく意識を気合で食い止め

握った拳を高く掲げる

 

走る空電は装甲を焼き、

その色を黒く塗り変えていく

 

鉄の艤装は唸りを上げて、限界を超えて動き始める

 

ヒビが入り、悲鳴を上げ

血を巡らせて、産声を上げる

 

「う…ウ…ぅ…ウォォォォォッ!」

 

振りかざす主砲は

見慣れた41センチ連装砲ではなく

それよりもさらに一回り大きなものに変化している

 

焼きの入った鉄の黒ではなく

塗り潰されたような漆黒の装甲

私はそれに、酷く見覚えがあった

 

そして、私たちはそれを嫌悪していた

 

それは間違いなく

深海棲艦、戦艦棲鬼の有する主砲だった

 

「喰らェェェっ!」

 

その事実に構うことなく

その主砲を発射する

 

無念と呪詛と怨嗟を込めて、この一撃を斃れた仲間たちへの手向の礼砲として

 

爆発

 

あれほどにいた敵の一角を、ただの一撃で切り崩し、その陣形に大きな穴を開ける

しかし、それだけでは満足などするはずもない

 

「二度と…コンナことは起こサセナイ!そのために!皆殺シニしてやる!」

 

私の密かな自慢だった黒髪は、まるで老婆か病人のように白く変わり

私が日々磨き上げ、そして提督の助力によって万全な輝きを宿していた艤装は

漆黒の生物的な艤装はと変化して

 

しかし、それでもなお

私の望む力を提供してくれる

 

ならば、それで十分だ

その事実だけを確認して、私は躊躇いなく引き金を引き、攻撃を仕掛ける

 

「貴様らぁっ!逃げルナァァッ!」

 

反転した軽巡級に全速力で追いつき

その背中に拳をくれてやる

 

その内臓を打ち潰す感触ののち

腕を引き抜くと、ずるりと腕が抜けたあと、そこには向こうが見えるほどの大きな穴が開いていた

 

それだけではない

いや、それだけで済ませない

 

ここの全ての深海棲艦を沈めなければ、満足など到底できない!

 

「死ね貴様ラ!死んで詫ビロ!

コレは蒼龍の分!コレは速吸ノ分!これハ龍田ノ分ダァァっ!」

 

ぐしゃあ、ぐしゃあ、ぐしゃあ

そんな、気色の悪くなる音と共に

瞬く間に三体分の死体を使った私は

その骸を海へとたたき返し

 

「この程度デ収マリハしないぞォッ!」

 

次の獲物を求めて絶叫する

 

「次は誰ダ!沈みたイノハ誰ダ!」

 

「長門!」

 

その時、背後から聞こえた声

私はその方向に反射的に砲撃して

 

「うぐぅっ…!長門!私よ!」

強引に接近してきた金剛に抱き留められた

 

「…………」

「長門!そっちへ行っちゃダメ!

戻ってきなさい!」

 

「…………金剛…」

 

「長門、私たちが今するべきことは、敵の殲滅じゃありまセン

するべきは行方不明になった艦隊の回収、つまりはあの子達を鎮守府に連れ帰ることデース」

 

言い聞かせてくるような声、柔らかな感触と共に、少し高い体温を感じる

 

「だから、もう良いのヨ

あの子達だって、まだ死んで無いネ…勝手に弔い合戦なんてされても迷惑デース」

 

いつのまにか普段の口調に戻っていた金剛が、私の背中を軽く叩いてくる

 

「…そうか…三人は…死んでいなかったか…」

「そう、長門が敵を引き付けてくれたおかげネ…あと一撃でも受ければ

本当に死んでいたかもしれないワ

だから…ありがとう、長門

…一緒に、帰りマショウ」

 

「…あぁ…」

 

600話記念番外編は

  • 過去編軍学校
  • 過去編深海勢
  • 裏山とかの話を
  • テンプレ転生者(ヘイト)
  • ストーリーを進めよう
  • 戦争が終わった後の話を!
  • しぐ……しぐ……
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