〈天龍さん、お願いできますか〉
「おう!」
通信に大声で返したオレは、そのまま飛び出してきた駆逐を撃ち抜き
大破に追い込んでから斬りつけ、爆散させる
簡単な事だ
性能自体はそう高く無いオレでも簡単にこなせる仕事だ、だがそれだけじゃねぇ
「憂さ晴らしだが……付き合えや!」
龍田が、いや鎮守府の仲間が大破した
それも普通の大破じゃねぇ
艤装が限界まで破壊された状態で直接ダメージを受けていた
オレの知る限り、あんな現象は
普通はその前に艤装が完全にお釈迦になって轟沈しちまうからだ
甚振られ、生殺しで撃たれ続ける痛みを知るオレだからこそ、それはわかる
だがそれには納得できない
この怒りがある限り、オレは攻撃の手を止めない
「突入は禁止なんだったよな……?」
「天龍さん!」
背後から五月雨の声
そして、正面から雷跡
向こうからこちらの、そしてこちらから向こうの情報を知ることはできない
単独で出てきた駆逐
撤退の確認もなく来た雷撃
つまりこれは『駆逐を生贄にした奴らの囮攻撃』
「死ねやゴラァァッ!」
足元に滑り込んでくる魚雷を機銃で撃ち抜き、爆散させる
巻き込まれた誘爆で波が立ち
海中が白く濁る
その中に一瞬、潜水艦の姿を見た
「こんのぉ!」
叫びは一瞬、味方に指示を出す
対潜攻撃を要求する
その直後に空襲、ヲ級が二体出現
潜水ヨ級も捨て石なのか
「お前ら…そんな戦法で勝つつもりかっ!」
激昂と共に、至近距離から主砲を連射
反動を気にもせず、飛ぶ弾片で頬を切りながらも連射は止めない
いや
止められない
オレのために、オレ自身の正義のために
オレの在り方が正しいと、証明するために
「うぉぉぉっ!」
弾薬が尽きるまで撃ちまくり
ヲ級の片方を大破させる
しかし、もう片方は味方の後ろに隠れて小破にとどまり、何事もなかったかのように艦載機を出撃させる
「どこまでも苛立たせてくれる!」
大破した方のヲ級が突進してくる
おそらく狙いは……五月雨
「行かかせねぇよ?」
「ドケェェ!」
ヲ級の叫びを無視して、すれ違いざまに腹を両断する
「ガァ…………ァ……」
爆発、轟沈
最後の一言も、辞世の句もなく
ただただ沈んでいくヲ級
その姿に、オレはかつての仲間たちを重ねた
駆逐艦や軽巡艦は戦艦や空母の盾にされ、明らかに回避できる攻撃も避けようとすれば殴られる
破壊された艤装は満足に防御機能を発揮してはくれない
どうにかして抵抗しようとした艦娘は皆んな沈められてしまった
提督を辞めさせようとした艦娘もそうだ
追い出されるか、殺されるか
仕舞いにはそいつだけ残して姉妹全員を解体されたりした奴もいた
オレはそんな光景を見ている事だけしかできなかった
同じ顔、同じ名前の艦娘が『補充』されても、それはあいつらとは違う
失われてしまった存在は
二度と戻っては来ない
だからこそ、たとえ敵だとしても
そのやり方は二度と許さない
だから、そんなやり方で戦おうとするような奴は
「粛清してやる!」
牙を剥いて
ポータルを背にするヲ級へ突撃し
勢いのままに全力で魚雷を投擲、その魚雷を狙撃して空中で爆発させ、爆煙と弾片を目眩しに接近
「死んどけ」
副砲をヲ級の顔面に叩きつけ
そのまま引き金を引く
グシャリ、と気色の悪い感触が伝わる右手に構わず、顔に飛び散った返り血を拭う
「お前ら一人残らず…ぶっ殺す」
滴る返り血は海に溶けて
消えた
「…徹底的に嫌がらせ、そういう戦法ね」
クスリ、と微笑みながら
窓枠に掛けていた腕を戻す
「今回私は…まぁ敵に見間違えられてしまう可能性もある事だし
残念ながら私たちはお留守番
だからその分は戦闘詳報を書く
もともと実戦には出ない約束だったから構うことは無いでしょうけど
そのくらいの義理は立てなきゃね?」
呟いて、すっかり冷めてしまったコーヒーを呷る
「随分と大規模な戦闘だけれど
犠牲者がいなくて良かったわ」
私に艦娘側の艦載機を運用できれば
私が彩雲を飛ばすくらいの事はした
いや、したかった
結局、この身は深海棲艦
艦娘から見れば明らかに敵そのもの
たとえ共に過ごす仲だとしても、外見が敵と変わらぬのなら見分けるのは至難
誤射してしまう可能性はある
だから私は、単独でしか戦えない
提督との心柱の縁が切れていても、私たち深海棲艦は戦力を維持できる
そもそも私たちは単独で完結する戦闘存在なのだから
でも、私達が前線に出たら
また深海の呪詛に囚われてしまう可能性もある
「屈辱ね……私たちは戦力を持っているのに、戦うことができない
戦力を失っても戦う事を強要される艦娘とは真逆だわ」
「みゅー」
「あら、
でも今はダメ、無駄になるだけよ
だから、耐えて
私たちの力が必要になる時が、きっとくるから」
裾から出てきた艦載機が
撃ち落とされていった味方の機体を惜しむように声を上げる
その声はやはり哀切に満ちていて
その声に応える事は、私たちには出来なかった
そうして私は、再び筆を取る
自分の戦場で、自分にできる事をするために
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