あれから二週間が経ち
蒼龍は無事に復帰を果たした
速吸については視力が低下して、普段は眼鏡をかけざるを得なくなってしまったが、艤装装備時は問題ないそうだ
むしろ眼鏡をかけてこちらに微笑みかけつつ『似合いますか?』とか言われて不覚にも可愛いと返してしまった
龍田は左腕の運動、感覚機能に多少障害が残ったというが、そんな様子はまるで感じられない
むしろ軽く薙刀を振っていた様子は
艤装なしでもかつてに匹敵するほどに鋭いものだった
「いや、俺にはそう見える、というだけなのかもしれないがな」
多少の希望的観測が混ざるだろうし、俺からの所感では正確な測定にはならない
そういうのは本人の感覚が一番正確なのだ
「提督、それで今日は何をするんだい?」
「みんな講堂に集まってるっぽーい」
おっと……時間に遅れそうなのか
わざわざこの二人が呼びにきてくれたようだ
「お、おう……よし」
どうせ帽子をかぶるので適当に纏めているだけの髪は放置して、一応鏡を見る
…………よし
「んじゃ行くよ」
現在時刻午前9:30
指定時刻の午前10:00からだいぶ早いが、それだけみんな気になっている事があるのだろう
「さて、諸君…おはよう」
講堂にたどり着いた俺が、開口一番つげたのは……至極一般的な挨拶だった
《おはようございます!》
元気の良い駆逐艦達、眠そうな軽巡一名、起き抜けで頭が回っていないのだろう姉さん一名、他色々の声が聞こえる
「よし……それじゃあまず説明から入るが、先日に起こった戦闘のことを覚えているだろうか?」
返事はいちいち聞かない
そんな事、覚えていて当然だ
むしろそれを聞くためにここにいるのだろう
「先日の戦闘で大破した蒼龍、龍田、速吸についてはこれを修復、前線復帰に成功した
みんなにとってもそれは喜ばしい事だろう……だが、それだけで片付く話ではない
あの戦闘の敵襲は、あまりにも唐突だった
それは、敵が881研究室の開発していた試作装備を用いていたからだ」
確証が掴めている話だから
あえて断定形で宣言する
「皆には伝えていなかったが、大本営のなかもやはり一枚岩とはいかない
身中に潜む虫も、いる」
それはまぁ全く面倒な輩が、いるのだ
「装備研究に携わっていた881研究室の連中はどうもすでにやられていたらしく
裏切り者が現れてしまった
深海棲艦側に艤装や開発中とされていた装備が大量に流出しておることが判明している
そのうち一つがテレポーター、そう、先日の侵攻の際に使われた光のポータルだ
アレはもともと、大本営で研究されていた奇襲用特殊兵装だったものだ」
艦娘達はやや驚いているようなもの、泰然としているもの、完全に割り切っているのか、無表情を貫いているものと様々だ
「詳細なスペックは省くが、とにかく敵が運用してくるのなら、我々は今後常に奇襲の脅威にさらされることになる……とはいえだ」
暗いニュースだけではいけない
それだけでは気が滅入る
だから
「敵戦力には相当に消耗を強いることができたし、ちょうどシーズンに入った
大本営戦術科の予測と俺の個人的な勘、それに一ノ瀬提督の戦略予報を総合して
新年、1月の6日までは艦隊単位での深海棲艦が出てくる可能性は低いとのことだ
というわけで……みんな、クリスマス!大晦日!新年!祝うぞ!」
あえてハイテンションで、わかり切った事実を告げる
目に見えてキョドっている数人と
純粋に祝いムードに入った数人
そしてバッドニュースを強く受け止めている大多数という構図に別れる艦娘達は
それでもなんとかプラスの方に思考を向けてくれたようだ
「テレポーターの方はジャミングができないか?逆探知して攻撃できないか?とか試しているらしいから、近々成果も出るはずだ
祝いの方は先にまず、クリスマスの方だな」
俺は手早く話を終わらせて、クリスマス会の打ち合わせのほうに入るために話題を変える
「まぁそれは置いといて、先日はなぁなぁになってしまったが、功労者には特別賞の配布があるから、今日の午後は秘書艦をのぞいて艦娘は全員自分の部屋にいるように……以上、終了」
「提督に、敬礼!」
最後に大淀がかけた号令で
艦娘達がみな一斉に敬礼する
まぁ、集会の時はこういう規律をしっかりさせたいのだろうから、あえて無くす必要もないだろう
「……」
俺も答礼して、壇上を去る
とりあえずもうやるべきことはない
遠征指示もいつもどおりで終わっているし、修理が必要な艤装も少ない
こんな時は…………
「寝ましょう、そら」「寝よう」
久しぶりに二度寝でもしよう
寝られる時に寝ないと体がもたないからな!
600話記念番外編は
-
過去編軍学校
-
過去編深海勢
-
裏山とかの話を
-
テンプレ転生者(ヘイト)
-
ストーリーを進めよう
-
戦争が終わった後の話を!
-
しぐ……しぐ……