戦いたくなんてなかったんや   作:魚介(改)貧弱卿

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静寂の夜に響く鐘

「天龍、いるか?」

 

俺は現在、以前の襲撃時の特別褒賞……と称してクリスマスプレゼントを配りにきていた

 

全員に

 

わざわざ『功労者に配布』と称してまで全員を部屋に待機させたのは

このための布石である

 

もちろん後でパーティ自体はやるし

そっち用の、個人の意見を反映したプレゼントは別に用意してある

 

今回配っているのは単純に

資金面でのプレゼント……つまり、慰労金

 

「お?提督?なんだよ」

「お前な……ほら、お前に特別褒賞、龍田にもあるから、居るなら呼んでくれ」

 

クリスマスプレゼントと呼ぶには些か不適かもしれないが、それはそれ

俺からの個人的なプレゼントなど配ったとなればそれは不当な物販配布……つまり、ロンダリングや横流しになってしまうわけだ

なので、みんながこの後

クリスマス当日に彩られた街にでも行って楽しめるように、というわけだ

 

「龍田ー提督が呼んでんぞー」

「は〜い!」

 

ガチャっと、扉が開いて

出てきた龍田は

「入浴中だったのか……すまない」

「別に良いですよ〜……そ、れ、と、も〜……責任取ってもらえます?」

 

「……無理」

 

バスタオル一枚という、明らかに良くない格好だった

 

「うふふ…でしょう?」

「それじゃあ俺はこの辺で……」

 

あられもない格好のまま婉然と微笑む龍田の気迫に押された俺は速やかに撤退を選択し

全速力で逃げ出した

 

「ドーモ、川内=サン」

「ドーモ、提督=サン」

 

逃げた先は川内型の部屋

龍田も流石にあの格好のまま追跡に来れるほどの剛毅な性格ではない

 

身なりを整えてから改めて追ってくるのならまだあり得るが、そこまで時間を掛けていれば俺が逃げ切る方が先だし、その前に龍田も冗談で済ませるつもりだろう

 

「那珂と神通はいるか?」

「那珂はいないけど神通はいるよ?

ほらそこ」

 

ブラインドにされていたらしい衝立付の筆記机、その向こうから姿を現した神通、その手に、とりあえずぱっと封筒を握らせる

 

「神通、君……いや功労者への慰労金だ、なにに使ってもかまわないので

自由に使いなさい」

「ぇ……?提督、慰労金ですか?」

 

「あぁ、慰労金、俺個人からのだから帳簿には残すなよ?」

 

「はい、わかりました」

「つまり……これはパーッとはしゃいじゃう時の資金にしろって事?」

 

後ろから俺の服の裾を掴んで川内が訪ねてくる

 

「川内正解、その通りだ

どう使うかは自由だが、だいたいそう言う使い方を想定してる、普段制限してる金銭面でのバックアップだな」

 

「いやったー!これで夜戦できる!」

「夜戦はできないぞ?流石に無断出撃は無視できないから、街に出るなら別に良いが」

 

「夜戦(意味深)!」

 

ぎゅっと俺の軍服の裾を引っ張ってくる川内に笑顔で応えて……振り解く

「許せ川内、また今度だ」

 

「あ……ずるいよ提督」

「うるさい、それに意味深の方は無しだ、出撃なら今度工面してやる」

 

川内にデコ遁の術を喰らわせて

神通に向き直る

 

「那珂は居ないようだから、神通から渡してくれ、三人とも同じ額だから気にしなくていいが、一応各々に宛名があるから間違えないようにな?」

 

封筒には全て各々の名前が書かれているので、一応混乱しないようにはなっている

艦型、艦種ごとに違う額ではあるがだいたい、駆逐・潜水は1万、軽巡・給油・給料が2万、重巡・軽空母・水母が3万、正規空母・戦艦が5万

大人になるほど上がっているが、これは単純に消費額の傾向と割合から計算しているだけだ

 

龍驤、隼鷹、千歳など良く呑む奴等には戦艦と同じ額、つまり5万を出しているし、間宮さんは半額で十分と言って返してきたし、鳳翔さんは正式所属の艦娘ではないと受給を固辞している

大和は5万でも多分使い切ってしまうし、霞は出所を聞いて突き返して来た

赤城さんは全力で食い倒れる気満々であったらしく、今から食べ放題の店の情報を漁っていた

 

クリスマスの夜に焼肉屋ともなれば、野郎どもが涙を流しながら焼いているだろうから、少し心配でもあるが、赤城さんは大丈夫だろう

 

「なにせ素で強いからな……」

 

あの人は本当に異常なまでに強い

鍛え上げられた肉体……なのかはわからないが、艤装無しの素手でも俺を片腕で薙ぎ倒すくらいにはパワーがあるし、尋常ではないスピードの金剛にも対応できるほどの合気を修めている

 

そこらの暴漢・酔漢では夜道にノビるのがオチであろう

 

「あーがーのー?いるかー?」

コンコンとノックをしてみると

なにやらガタガタと物騒な物音がなり、

 

「ちょ……ちょっとまっててー!」

 

うん、だらし姉ぇさんは今日もだらしなかったようだ

 

どうせ俺が全員の部屋に来ることを悟った上で、後の方に来るのだろうと予測して片付けを先延ばしにした結果

予想よりも早く来た俺に突然訪問されて焦って片付けを始めた、と言う事だろう

 

「何分まてば良い?」

「30分お願いしますー!」

 

「はぁ……全く」

 

部屋は少し遠いが、長良型の方に先に行くべきだっただろうか?

 

「いや、それじゃあ結局変わらないか」

 

とりあえず阿賀野を焦らせることには成功したので、別の艦のところに行こう

 

「球磨型と長良型のところに行くか」

 

とりあえず比較的近い長良型の方に向かう

 

「おーい?」

「あ、提督!いらっしゃい!」

 

扉をノックするよりも先に開かれて

五十鈴に迎えられる

 

「予測していたのか?」

「五十鈴には丸見えよ、……なんてね?」

 

左手に艤装装備そっくりなエアガン(アサルトライフル型)を抱えた五十鈴は

どこぞに狙いを付けるようなポーズをとって微笑む

 

対潜攻撃のつもりなのだろう

 

「って、そのエアガン、どこから?」

「私のは通販から、個人的に買ったものよ?それに私のしゅみでもあるの

……やっぱりおかしいかしら?サバゲー好きな女の子なんて」

「え?……いや、少数派かもしれないが、それをおかしいと断定はしないよ

珍しいのは事実だが、それが五十鈴の趣味であるなら否定しない……ただ、四六時中銃や砲を抱えていると疲れてしまうんじゃないかと心配はしてしまうけどね?」

 

急にしゅんとした表情になった五十鈴を庇うような言葉を返すと、五十鈴は目を煌めかせてこちらに縋ってきた

「ねぇ!提督はサバゲー好き?」

「俺?……やったことないから良くわからないな、時間が空いたらその魅力とやらを教えてくれないか?」

 

「ええ!わかったわ!

機会があれば、提督と一緒に一戦してみたいものね!」

 

「……と、すまない、忘れるところだった、これをどうぞ……みんな分あるから、各々配ってくれ」

「はーい……提督、上がって行かないの?」

 

「流石にな、クリスマスとはいえ、女の子の部屋に上がり込むのは良くないだろう?

それじゃあ、メリークリスマス」

 

「えぇ、メリークリスマス、提督」

 


一方その頃

 

「どうしよーっ!片付けおわんないよぉー!」

「普段から片付ける習慣をつけておかないからそうなるのよ……」

 

阿賀野と矢矧は部屋の片付けを急いでいた

600話記念番外編は

  • 過去編軍学校
  • 過去編深海勢
  • 裏山とかの話を
  • テンプレ転生者(ヘイト)
  • ストーリーを進めよう
  • 戦争が終わった後の話を!
  • しぐ……しぐ……
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