戦いたくなんてなかったんや   作:魚介(改)貧弱卿

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初々しいずいずい

「提督さん、提督さん」

 

なにかの声が聞こえる

いつもの秘書妖精や目覚し時計の様な声ではなく、間違いなく聞こえる別人の声

 

「提督さん!」「!?」

 

飛び起きた俺は、その声の主人の方を見て

 

「瑞鶴っ!?」

 

その直後、昨日から放置されていたと思しき瑞鶴が不満げな声を上げる

 

「提督さん、お腹すいた」

「……おう、そういえば結局昨日、なにも食べて無いからな……」

 

流石にいつまでもサンタコスは辛いだろうし、瑞鶴の私服を手配してあげないといけない

いや、その前に朝食と建造直後の顔合わせだ

 

「とりあえず着替えるからちょっといいかな」

 

執務室から出て、瑞鶴の手を離してもらい、まずは自室に戻って提督としての軍服に着替える

 

執務室で座ったまま寝てしまったからか、やたらと背が痛いが、それらはできる限り無視する

 

「うごごごご……!」

 

腰がギリギリと悲鳴を上げるなか

なんとか着替えた俺は

そのまま部屋の外で待っていた瑞鶴に捕獲されて、食堂まで腕を掴まれていた

 

「瑞鶴、朝だから軽めにな?」

「分かってる、ていとくさんは?」

 

瑞鶴からの返事と質問

その答えに一瞬思考を巡らせて

 

「俺……は、良いや、朝食ってしっかり食べる気にはならないし」

「それはいけません!」

 

カウンター越しに突然出てきた間宮さんに怒られてしまった

 

「朝食は1日の始まり、栄養の補給だけではなく、生活リズムの構築のために必須の行為です!形骸的であったとしても『一杯のコーヒー』を『breakfast(朝食)』などと称してはいけません!

一汁三菜とまでは言わずとも、せめて糖分の補給のためのお米と水・塩分のためのお味噌汁、それになにかの添え物くらいは食べてください!

 

というか散々お話ししましたよね!

あとで正式に呼びますよ提督っ!」

 

グイグイくる間宮さんに

若干引いた様子の瑞鶴

 

「あら?……瑞鶴さん!はじめまして、かしら?」

「はい、はじめまして……間宮さん?」

「その通りです、今は艦娘の間宮として、食堂で働いています」

 

なにやら海軍艦娘トークが始まった様なので、いったん退避した俺は

早々にテーブルの一つにつかまっていた

 

「提督ー、なんで逃げたの?」

「ちょ、金剛!口調!」

「そんなことはどうでもいいのよ、まずは提督が逃げたことを問わなくてはいけない

そうではなくって?」

 

グイグイグイグイっ!と正面から顔を寄せられ、仰反る俺と迫る金剛

すでにキャラクター崩壊はどうでもよくなっているのか、金剛が普段の口調を崩している

これは金剛の、普段の全力をさらに一歩超えた本気モードだ

 

「いやその……」

 

「テートクの子供が欲しい、それは普通の事デース」

「いや白々しいわ!そんな普通があってたまるか!」

 

俺が言葉に詰まった瞬間

金剛は隙ありとばかりに強引に話を通そうとしてくるが、流石にそうは問屋が卸さない

 

「テートクはクリスマスのプレゼントもくれないんデスカー?」「あげただろアレ……髪留め、それにそもそも子供って言ったって、まず退役して艤装を解体してからじゃ無いと、出撃のローテーションとかどうあがいても関わってくるし、そもそも艦娘の子供ってどんな存在か分かってる?」

 

「テートクと私の愛の結晶ネ!」

「そんな都合のいい言葉で隠すな、そもそも妊娠には生活に不都合な事も多いし

体調の変化だけじゃなく、精神的にも影響が出てくる、それに艤装を妊娠中に装備したら、艦側に近づく肉体は胎児の存在を許容できない、結果流産だ、分かってるのか?」

「くっ……」

 

「まぁその熱意自体は分かるし、それだけ好意を向けられているというのなら嬉しいのだが、その好意に応えられるような状況でも人物でもなく、そしてお前もまたそんなことを言っている場合じゃ無い

それだけのことなんだよ」

 

そっと話を切りつつ

金剛が注文していたカレーうどんを一口、

 

白い軍服はカラーが目立ってしまうため、カレーうどんは悪手だったと言わざるを得ないが、それでも俺の好きなうどんに類する物、一時期あまりにもそれしか食べなかったために間宮さんに禁止されてしまったうどんを食べられる貴重な機会なのだ、

 

「……テートク、ワタシが言うのもなんデスガ、白い服でカレーうどんはやめた方が良いデスヨ?」

「お前は対策してるもんな?だが俺はこいつが好きなんだ、だからうどんは我慢しない」

 

金剛は普段の制服艤装をとは違って平服、いかにもな軽装である

そもそも今日に限らず戦艦級の艦娘には早々出撃の機会はない、もちろん出撃する日もあるが、駆逐艦のようないつ出撃するか分からない艦種とは違うのだ

必然的に冬場は私服が多くなる

 

「テートクは技師さんだった頃からよくうどんでご飯済ませてマシタからね……」

「よく覚えているな」

 

遠い目をする金剛に答えながら、慎重に麺を手繰り、カレーの味とうどんの食感を楽しむ

スパイスの味は強いから、今の俺でも刺激がわかると言うのは素晴らしいと思う

 

「あ、提督さん!」

「瑞鶴?どうした?」

 

話が終わったのか、瑞鶴が俺の方に駆け寄ってくる

 

「瑞鶴?……あぁ、翔鶴のsisterデスネ!」

「そう、金剛は初対面だったよな」

 

建造された瑞鶴は魂の方の瑞鶴とは人格が違う、そのため魂の方の面識は役に立たず

一から交流関係を作らねばならない

 

これまで何人もの艦娘を『建造されては轟沈・異動』というサイクルで失っている金剛も、あくまで初対面のスタンスで行くつもりらしい

さっきの間宮さんも、瑞鶴と初めて会うかのように接していたし、古参の艦娘達は大方そういう方針をとっているのだろう

 

「ハジメマシテ!瑞鶴サン」

「は、はじめまして、金剛さん」

 

こうして、やや変則的ながら

瑞鶴の初顔合わせか始まった

600話記念番外編は

  • 過去編軍学校
  • 過去編深海勢
  • 裏山とかの話を
  • テンプレ転生者(ヘイト)
  • ストーリーを進めよう
  • 戦争が終わった後の話を!
  • しぐ……しぐ……
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