「大掃除完了っ!」
「はい、お疲れ様、みんな手は洗ったな?」
とりあえず食堂に呼び集めたみんなに、間宮さんからのご褒美……つまり
間宮のスイーツが振る舞われる
「はい皆さんどうぞ、間宮特製品でーす!」
「っぽーいっ!」
「そういうことね……」
「提督太っ腹じゃん!」
「うむ、鈴谷の言い方は良くないが、提督も信賞必罰の理念を理解しているということだろうな」
一部のアイス好きはこの冬の寒さの中でもアイスを選び、他の大半はモナカや乾果、堅菓類を選んだようで
「……ん、間宮さんのバタークッキーおいしぃよ」
「ありがとう、時雨ちゃん」
一人ひとりの感想に笑顔で応じる間宮さんの姿は、どこか輝いて見えた
「提督は何にする?」
「部屋に備蓄の菓子があるからそれ食うよ、ポテチとか」
俺も突然後ろから声をかけられて、それに応対するべく振り向いて
「て、い、と、く?」
「…………?」
そっと背後から、肩に手が置かれた
「ポテチ、そうおっしゃいましたか?」
「………………?」
「わたくし、掃除の後のご褒美だから、と普段よりも頑張ったのですよ?」
「………………」
「提督は、わたくしよりも一袋298円のポテチの方が好み、と仰るのですか?」
「………………」
「提督?なにか一言でも、お答えいただけませんか?」「すまない失言だった」
「て、い、と、く?」
「……間宮さん、その」
徐々に間宮さんの顔が近づいてくる
そな無表情で整った顔に異様な圧迫感を感じた俺は、不利な食堂から撤退するべく
速やかに周囲の環境を確認して
「逃がさない」
ぐっと背中に腕を回される
「ねぇ、答えてくださいよ提督
間宮のなにが不満なんですか?
私はそんなに嫌われるようなことをしましたか?」
その内側に咎めるような意思を湛えて、少しずつ近づいてくる栗色の瞳
その瞳に射竦められて
反射的に固まる俺
そして
「そらは譲れません」「ふぬぉ!」
姉さんの平手が測頭部に直撃し
俺の視界が揺れる
視界が正常に戻るまでの約2秒間
そのわずかな時間で、俺は姉さんに奪い返されていた
「いくら間宮さんといえど、そらは譲りません……必要とあらば、何をしても」
「ちょっと姉さん!?その手段に俺への物理攻撃が含まれちゃうの?!」
「そらはちょっと叩いた程度で潰れるほど柔な提督ではないわ
そう、信じているもの」
普段通りの澄ました顔で
恐ろしいことをいう姉さんに戦慄しながら
ひとまず飛んでいった帽子を拾い
間宮さんに謝る
「すまない間宮さん、別に間宮さんからの菓子よりポテチが好きというわけではなく
単純に艦娘達の分配量の懸念からの発言だったんだ、みんなが好きな菓子は
やはり少しでも多い方がいい
だから俺は部屋でポテチでも食ってよう、という考えからの発言だったんだが……言葉が足りなかったようだ」
背後で少しざわついていた艦娘達も、特に問題なさそうだと判断したのか
すぐに歓談に戻り
姉さんはしれっと二つ目のアイスに手を伸ばしていた
「あぁ……そういうことだったのですか、なら心配はありません
『間食として過剰にならず、且つみんなが満足できる量』くらい計算して作っていますから!
さぁ、提督もどうぞ、提督はあまり間宮食堂も『甘味処間宮』も使ってくださいませんし、提督だけは量の計算ができていないんです」
さぁさぁ、とばかりにクッキーやモナカを勧めてくる間宮さん
それは伊良湖さんの得意料理なのでは?と一瞬考えたが、勤勉かつ努力家で、時間にも比較的融通が効く間宮さんが伊良湖さんの技術を吸収していてもおかしくはないと即座に考え直す
「そういうことなら、頂きます」
「はい、どうぞ」
牛乳に合いそうなバタークッキーはサクッとした食感と甘味、そしてわずかな塩味を感じられる
俺の壊れかけた味覚でここまではっきりと味を感じられるのは久しぶりなので軽く驚く
「美味しいです、間宮さん
ありがとうございます」
「うふふっ、喜んでいただけると私も嬉しいです」
やめてくれ、その輝く笑顔は俺に効く
「司令官、鼻の下伸びてるわよ!だらしないわね!」
「うぉわ、陽炎?どこから出てきた!?」
「普通に横から、そんなことも気づかないなんて、本当にどうしたのかしら
間宮さんの大人の色気にやられた?」
「んなわけあるか!」
べしっ、と頭を軽く叩く
「んなことよりも、もうじき4時だし、そろそろおやつは下げるぞ」
大型艦は自制も効くだろうし
効かなかろうと問題ないペイロードがあるが、潜水駆逐軽巡もそうとは限らない
「最後にアイス食べさせて」
「アイス?あぁ、やっぱあんまりアイスは食べられなかったみたいだな
そこそこ残っているぞ」
「違うでしょ?……あーん」
目を閉じて口を開く陽炎
それはつまり、禁忌の行為を求めている……のか?
「あ、ずるい私も!」
「白露……あ、僕も」
「っぽーいっ!」
「夕立。っぽいじゃ通じないわよ?……あ、提督『あーん』して?」
「私も参加します、はい」
「あっ……私もいいですか?」
「お姉達……」
海風を含めて6人もの駆逐艦が横列で待機を始めて、なにやらそれを見ていた駆逐艦や伊19が悪乗りを始めて
……おい伊19、お前は犯罪になりかねないから止せ
「提督っ熊野にもやってあげて!?」
「鈴谷っ!?貴女、自分が恥ずかしいからと私にやらせようとするのは違うのではありませんの〜っ?!」
「三隈、どうする?止める?」
「本人が楽しそうだし、いいのではないかしら?」
どうやら同型艦すらも止めるつもりはないようで、どんどん悪乗りする奴が増えていき
最終的には駆逐艦に限定した上で希望者全員に実施することになり
残っていたアイスは綺麗に全滅した
…………まさか間宮さんは
これを計算して量を作っていたのだろうか?
600話記念番外編は
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しぐ……しぐ……