「というわけで、和服のみんなに新年の挨拶は終えたわけだが……」
「夕立が魚雷持ってたのは驚いたわ」
「姉さんと赤城さんが両方破魔矢抱えてたのにも、な……そもそも艦娘の弓は艦載機を発艦させるためのカタパルトなのに、普通の矢も撃てるんだな」
「比叡さんとか大和さん、普段とはまた違った綺麗なたたずまいが目立ってたわね」
「そうだな……あと鳳翔さんはなにを思って酒を勧めてきたのかわからん」
「お屠蘇ね、元は『屠蘇延命散』と称されていたらしいけれど、詳細はよく知らないわ
私が知っているのは作法と作り方くらいよ」
「逆に作法とか知ってるのか」
「もちろん、私自身は飲んだことないけど、縁起物としておせちや年越し蕎麦と同じように知識はあるわ」
神風と一緒に自室で
「祝いの酒、という訳でもあり
新年の初詣や書き初めといった行事の中に必須とされる道具でもある
そういう物でね、『一人これ飲めば一家苦しみなく、一家これ飲めば一里病なし』と称されるの
一家みんなで日の出の方角である東を向いて
これを唱えた後に、3段重ねの盃で3回に分けて年少者から順に飲むのよ
これは毒味の名残とも、『年少者』つまり子供の元気を親に分けるという意味とも言われるわ
逆に年長者から飲むという場合もあって、これは年長者、お爺さまの知恵を子供に授ける、という意味らしいわね」
「なるほど……」
神風先生の昔の日本講座は為になります
「ちょっと!そんな昔の日本をよく知ってるなぁみたいな顔しないでよ!」
「えっ?…………???」
宇宙猫を頭に浮かべていると
神風はなにやら怒ったような様子になる
「年の話は禁句なんだから!いいわね!?」
「わかった、わかりました神風先生」
「やめなさいよそれ!」
「わかったわかった」
ぽこぽこと叩いてくる神風を笑いながら受け止めた俺は、そのまま神風とくっついている所を……鹿島に目撃された
「提督さん?……どうしたんですか提督さん?」
「鹿島!?神風離れて!なんだ鹿島……お前のエサはここにはないぞ」
「餌ならあるじゃないですか
提督さんという極上の餌が」
見ちゃいました!とでも言うつもりなのか、既に退散する姿勢を見せている鹿島を引き止める為に頭を巡らせた俺は、0.1秒で最高に冴えた方法を考えついた
「鹿島、お前も来い
俺を食えるつもりならやってみな
お前を食っちまうかもしれないがな」
「!?!」
その瞬間、鹿島の表情が変わる
なにか特別なものを見つけたかのような『絶対に手に入れる』と言わんばかりの表情
普段は取り繕った笑顔の仮面を崩すことのない鹿島が自分の感情をこうも表情に出すとは
よほど良く挑発が効いたらしい
「へぇ……提督さんは私に勝てるつもりなんですか?この有明の女王に!」
それは別の次元での話じゃないのか
と一瞬考えたが、瞬時にその思考をを放棄して、代わりに遁走のために全力を注ぐ
このままでは結局同じことだ
手早く始末しなくてはならない
「オラァ!」「なっ!」
危険すぎるので首筋チョップで一発!というわけにもいかず、普通に締め落とす
目覚めたら適当に状況を誤魔化しながら説明してやれば良いだろう
そもそも駆逐艦寮なのに
練習巡洋艦として軽巡艦に類別されるお前が入っているのはどう言うことなんだ
「そういえば鹿島さんは
この前の大掃除で駆逐艦のみんなの指揮をやってたから、もしかしたら入寮許可証を持っているのかもしれないわね」
「提督と違って、鹿島は艦娘だからセキュリティが緩いのか……」
呆れたような神風の言葉の、その意味を理解して息を吐く
「司令官はホラ、鹿島さんを軽巡寮まで運んであげて……私は後の『処理』に回るわ」
「おう、頼んだ」
side change
蒼羅side out
鹿島side in
「あーぁ、勿体ないですね
桑島さんはいつも甘い、男を堕としたいのであれば、他の女と一緒にいるときには手を出していけませんよ?」
「うっ……善処してみるわ」
「甘い、それだから甘いと言うんです
殿方の心理については後々、と置いていたのが間違いでした、
良いですか?他の女と抱き合っているというのは、見られて困るシーンの一つです
良い女なら見て見ぬ振りを仕切るべき」
「抱き合ってはいないじゃない!?」
「同じことですよ、まず貴女は提督さんに嫌われている、その点を覆して『彼の女』というポストに収まるためには、他の女を凌駕する魅力が必要です、それもわずかにでも、一段でもなく、圧倒的な魅力が」
私は現在……締め落とされる直前に退避した鹿島の魂の中ですごく説教されています
「容姿についての魅力であるなら
他と拮抗以上に有利、知識的な意味では大きく不利、戦力としての魅力も大きく不利
これでどう勝つつもりなんですか?」
「しょ……しょうがないじゃない!
蒼羅くんがそんなに早く提督に着任するなんて思っていなかったし!
そもそも彼は技師科だったのよ?
親身に接するだけなら他の鎮守府で箔をつけてから何とか理由を付けて彼のいる鎮守府に転属する方が良い、それは鹿島だって認めたじゃない!」
「確かに、しかしそれはもはや過去の話、現在の時点で提督であり、歴戦の大佐である彼に対して大きく遅れを取った現状では
私達の立てた計画はもはや無力です
ならば作戦を変更する、そこまでは合理的でした」
足を組んだ鹿島は、
ピンと指を立てる
「しかし、ここで一つ誤算が生まれました
初期の接触において、私達『鹿島』が実質貴女の人格であることを見抜かれてしまった事です
なので私達は桑嶋さんとしての行動を取らざるを得ず、過去の所業が暴かれてしまった
なにも覚えていないムーブができなくなってしまいました」
「この上で、どうするかを問われたわけよね」
「そう、このヒロインレースにおいて、過去のつながりは重要ですが
マイナスの強い私達のつながりは例外的に損になります、それをいかに回避するかという課題が出てきたのです」
足を組み直した事で鹿島のスカートは若干捲れ上がって、今にも見えそうになっているのに、鹿島が気にした様子はない
「貴女が幸せになるために
ひいては私達『鹿島』の汚名と淫魔などという風評被害を払拭するために
貴女と提督さんはイチャイチャラブラブして結婚からのベッドインしなくてはならない
なのにこんなマイナスを抱えたままではまず最初の問題すらも突破できない
分かりますか?この罪の重さ」
自分と同じ顔の女に嫌な顔されながらおパンツ見せられて泣きそうなのだけれど
この先私はどうやって行けばいいのかしら
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