「さて、と……」
鹿島をお米様抱っこして軽巡寮に来たものの、寮監が既に顔を合わせられないというのは、大丈夫なのだろうか?
一応鹿島の部屋は知っているが
無断侵入は問答無用で憲兵さん案件
どうすれば良い……どうすれば
「うぅん……ていとくさん……」
やべ、起きそう
「作戦変更っ!」
頭の中で計画を作り直す
とりあえず目指すべきは執務室
今日の秘書艦は未設定だから、鹿島をそれに指定してしまえば良い
それで鹿島を執務室のソファに寝かせておけば起きた時にうまく状況をごまかせる
「よし!」
俺はなるべく鹿島を揺らさないように急いで走った
幸い、軽巡寮は早期に建設された寮であり、鎮守府の本棟に近い
二階にある執務室へはすぐだったのだが……
「よし」
「ん!?……ていとくさん?」
ソファに下ろした瞬間に、鹿島がそのぱっちりとした目を開けたのである
「おう、提督さんだぞ」
「私になにするつもりだったんですか?」
「何も?」
「……うそつき」
こちらを見つめるのも束の間
半身を中途半端に起こして自身の肩を抱くように腕を回す鹿島
「ほんとに、何もしないんですか?」
「何もしない、なんなら俺の帽子に誓おう」
「なら……信じます、けど」
どこか歯切れの悪い返事に
気味悪い感覚を覚えた俺は
鹿島の方を見て、そして絶句した
「ここまで来て何もしないなんて……ひどいです」
俯きながら、誤魔化すように呟くその姿こそ普段通りであれど
その瞳は明確に爛々と煌き
異様なほどにギラついていた
「お前……っ!だれだ!?」
「?……提督さん?どうしたんですか?」
「お前は俺の知る鹿島じゃない
もっと別の何かだ!そいつから出て行け!」
「?」
鹿島は本当に訳がわからない
と言わんがな表情をするが、やはりその目のギラつきは隠せていない
それを露呈している以上、以前の鹿島との差は明らかだ
「提督さんは私のことが嫌いなんですか?
だからそんなひどいことを言うんですか?」
「んな訳があるか!そんなことはどうでも良い!元の鹿島を返してもらう!」
激昂する俺に、妖しく微笑む鹿島
「なぁんだ、提督さん
それなら、今の私がそうですよ……うふふっ
そう、今までがおかしかっただけ
本来の私は『この私』です」
「……なん……だと……」
その言葉遣いはどこかいつもの鹿島と違い、その瞳は爛々としている
しかし、それは間違いなく鹿島であるという
それなら答えは一つ
『オリジナル鹿島』が『この鹿島』のボディを乗っ取ったということだ
「なぜ今更になって現れた!」
「それは、ねぇ?……提督さんが胸に手を当てて考えてみてください
そうすれば自ずとわかるはずですよ……うふふっ」
微笑みを崩さない鹿島
以前までの鹿島とはわずかに違う表情は、以前とまるで変わらない仕草の中にもどこか違和感を感じさせる
「どういうことだ……」
蒼羅side out
鹿島side in
結局、提督さんの好感度を上げるためにはどうすれば良いんだろう?
この難題に対し、なす術のなかった私と違って、鹿島にはなにか秘策があるようで
「私が体を使います、そうすれば
彼からの好感度を稼ぐ方法を実践できる、練巡として、数値を稼ぐのは得意なの」
「うぅ……お願いします」
こういうことになり、
私たちは普段と逆の役割を担当することになった
のだけれど
「どうするの!?速攻バレたよ!」
「私だって分かりませんよ!
でもバレたならバレたでこのまま押し通すしかありません!」
なぜか一瞬で私じゃないって即バレして
私達は今、ものすごく混乱していた
「でも、良かったじゃないですか
私と貴女の違いを見抜けるくらいに、提督さんは私たちのことをしっかり見ていた
それだけでも私たちは幸せ者ですよ」
鹿島はまた適当なことを言い出し
ティーセットを虚空から作り出して紅茶を飲み始める
「そそそそそれは私だって思うわよ!
じゃなくて!貴女が一発でヤる方法って言って体を持っていったのに失敗してるじゃない!」
「まぁ失敗は失敗ですよ?
でも、これは価値がある失敗です
つまり、このまま作戦に織り込むことができる……」
ちょいちょいとばかりに手招きされた私は
その作戦の内容を聞いて
思いっきり叫ぶ事になった
side out
「……心配だな……」
鹿島の魂の人格がなぜ現れたのかは不明だが
その影響は計り知れない
艤装再適合による記憶の初期化は
転属や提督の''交代''の時に定番となる処置であるし、もしかしたら桑島の人格が消滅してしまっている可能性もある
何があってもおかしくはない
「どうすれば良いのかも見当もつかないし……」
うかつに艤装のコアに干渉するのは躊躇われるし、かと言って直接問いただしても二の舞になるだけだ
「ねぇ、提督……」
「!」
思考に没頭しているうちに、随分と時間が経っていたらしい
執務机の椅子に背を預けて
いた俺のすぐそば、息がかかるほどの距離
そこに、鹿島がいた
「……けて……」
一瞬、その瞳の色が変わる
灰色の、無闇に光る瞳から
かつてと同じ鋼晶色の瞳へと
「うふふっ……提督さん♪」
「!?」
しかしその直後、また瞳は灰色に染められてしまう
この鹿島と、以前の鹿島と
人格が押し合い、せめぎあっているのだ
それを察するのに、時間は要らなかった
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