「よし、これで未だ鎮守府にいない海防艦以外はだいたい解説役と案内役が決まったな」
「はい」
「んで、だ」
一旦息をついて、現状思い当たる中での最後の問題点を提示する
「日取り、どうする?」
「日取り、ですか?」
「そうねぇ〜?……流石に一、二週間でポンと行けるわけではないし
ここまで大掛かりなイベントとなると役割ごとの説明、予行もしなきゃいけないでしょ〜?」
「そうだな、だいたい計画→実行の間に1ヶ月ほど用意しておくのが通例だが」
「じゃあそれに従いましょうか〜」
「そうね、私たち自身も準備期間をとって、案内中と解説役の人たちには
『役柄に相応しい行い』を身につけてもらわなくてはいけないわ」
愛宕の言葉は尤もだし、通例に従っておくのがいいだろう……ほとんどの企業は何かに取り憑かれたかのように『前例』を崇めているからな
何かそれなりの理由があるのだろうし
「わかりました、それでは
各艦娘たちのスケジュールの確認から、開催時期の日程調整を行いますね
大淀さんに確認します」
「わかった、日程の方は俺と大淀で調整するから艦種・施設の運用説明についてはそっちの……現場の艦娘たちに頼む」
俺が考えても良いものは出ないだろうと思って、ひとまず現場に案を任せてみようとしたら、そこに神通から声が飛ぶ
「説明の文面は私達自身で考える、と言う事ですか?提督が案を出すのではなく?」
「ん?俺が運用のメリット・デメリットの説明をすると現場の艦娘たちが不快感を受けるような説明も出てくると思うぞ?それにかなり長くなるし、やっぱり司令官としての立場からの目線になるから良くないと思うし」
例えば駆逐艦は昼戦攻撃力が足りず
回避に失敗したらワンパンの可能性が高いとか、4n耐久が多いからワンパン大破で夜戦前に撤退せざるを得ないことがあるとか
軽巡は改二にならなきゃみんな50歩100歩のステータスだとか一部は改二になっても改二の平均値みたいな扱いにしかならないだとか
……羅針盤は敵だとか
「……いえ、わかりました
たしかに説明役の艦娘自身の言葉での説明でなければ届かないところも
お仕着せの台詞では具体性にかけるところもあるでしょう」
神通はそれで納得してくれたようで
さっと引き下がる
「分担が決まったところで
各艦娘にその役を伝えるためにある程度の期間は予備として……掲示をしなくては行けませんね」
「そうね〜……各艦娘の適性を見つつ
これをひとまずの仮案として、割り振りも変えていくべきじゃないかしら?」
ホワイトボードを眺めながら
龍田はどこか遠くを見るような目になる
「思えば、遠くまで来たものか
……かつて虐げられていたといっても過言ではない私たちが、いま民間人を受け入れる話の算段を立てている、なんて……数奇なものね」
しみじみとした声で
指先を震わせる龍田が呟く
「そうだな、鎮守府の一般開放
今考えても頭のおかしい所業だが、かつては考えることもできなかっただろう事だ
……昔からいる艦娘たちにとっても、前の時代との決別のきっかけとなるかも知れん
……まぁ、もう振り切った過去の事にしているのかも知れないがな」
かつて、ブラック鎮守府として乱雑に運用されていた頃の龍田達と
今の、至極全うに艦隊として運用され
人権を尊重した上で一定の自由を認められ、己の意思で活動する龍田達
その差は大きいが、対面も組織構造もなにも変わったものはない
当人たちの意識が違う
ただ、それだけのことなのだ
「湿っぽくなるのは良くないわ、提督」
彼方を見つめる龍田の視線に引っ張られたか、柄にもなく感傷に浸っていた俺
その背後から、柔らかな感触が触れる
「愛宕-……!?」
「過去は過去、今は今
その二つは同じだけど一つじゃない
それでいいじゃない、ね?」
ぎゅっ、と決して強くはなくむしろ軽く、しかし確かに抱きしめられる
「愛宕っ、お前っ大丈夫なのか!?」
「ん、大丈夫……それよりあんまり動かないで?そっちの方が痛いわ」
愛宕は皮膚感覚が異常に鋭敏なので
物に自分から触れるのは珍しい事だ
追手術と艤装の改造で戦闘時はそれなりに抑えられるが、日常では制服姿での立ち座りにすら難儀する彼女が、自分から俺をかき抱いているとすれば
それは壮絶なほどの痛みに現在進行形で耐えているという事に他ならない
「ねぇ、提督?」
「…………?」
僅かな首元の動きで、囁きの続きを促す
「今は、未来のことを考えましょう?」
その言葉を最後に、愛宕は俺から離れ
「……おう」
俺も、過去から目を離した
600話記念番外編は
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しぐ……しぐ……