戦いたくなんてなかったんや   作:魚介(改)貧弱卿

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瞳の色(はるさめ?)

「……提督、起きてください」

「ん?」

 

出撃の許可書やら燃料弾薬鋼材ボーキサイトの消費に対する決裁やらそろそろ迫っている給料日の気配に反比例して薄くなりゆく財布を心配したりやら

色々とあって疲れていたが、まさか執務室で寝落ちしてしまうとは予想外だった

 

「……あぁ、起こしてくれたのか」

「はい」

 

顔を覗き込んできている春雨に応えて

とりあえず姿勢を正す

 

膝を曲げた姿勢で寝るとエコノミークラス症候群を起こしやすいとも聞くし

そもそも背骨に負荷の強い姿勢を長時間することになるから、背中を傷めてしまうとも聞く

 

「うぐうぉぉ……背筋ぃ……」

 

ゆっくりと背を伸ばすと、やはりゴキゴキという音を派手に立てながら痛みが走る

 

「だ、大丈夫ですか?」

「あ、問題……ない!背骨に負荷がかかっているだけだ」

 

うぐーーっ、と声を上げながら伸びを繰り返し、ようやく感覚が落ち着いてきたところで、春雨に視線を戻す

 

「すまないな、朝から迷惑をかけた」

「いいえ、大丈夫です、はい」

 

「……マルロクマルマルです、はい、朝ごはんを用意しますね」

「ん、ありがとう」

 

たまには執務室で食べるのも良いか

 

……?

そういえば、春雨って秘書の仕事やってたっけ?……「提督、朝ごはんは何がいいですか?」

 

突然振り返った春雨が

そっと目を合わせてくる

春雨の蒼色の瞳に見つめられながら

俺はその『くだらない思考』をやめて、朝食を思い浮かべた

 

「麻婆春雨……いや冗談だ

こんな朝だし、さっぱりした奴がいいな」

「わかりました」

 

笑顔で部屋を出て……戻ってきて

奥にあったキッチンに向かって行く春雨

 

執務室の間取りとか、頻繁に来ていないと把握できないよな

 

「…………」

 

半分くらい寝ているのか、

思考がおぼつかない

 

ぼんやりしていると、すぐに時間が過ぎて行く

 

「マルナナマルマル、朝ごはんは

麻婆はる……嘘です。

和定食にしてみました。どうぞ」

 

白米+麩とネギ、ワカメの味噌汁に

納豆とスティック野菜のサラダ

見事に1汁3菜となっている

 

「ありがとう、いただきます」

 

笑顔の春雨から箸を受け取って……いざ実食

とは言ってもどうせ塩の味くらいしかわからないんだが

 

「ご馳走様でした」

 

やはり塩や出汁の味くらいしかわからないが、とりあえずコメントを一言でも言っておこう

 

「どう、でしたか?」

「うん、美味しかったよ。ありがとう」

 

「!」

 

とても嬉しそう表情になる春雨に、多少の罪悪感を覚えながら、それでも味覚がほとんどなくなってきていると言ってしまう訳にもいかないと思い

この細やかな嘘は出来る限り突き通すことを心に決める

 

そばにメイドの如く控えていた春雨の頭をゆっくりと撫でて笑顔を見せる

 

「て、提督……!」

 

「ん?」

 

「あまり撫でられると恥ずかしい……です。はい」

「はぁ……お前さては可愛い自覚ないな?」

 

縮こまる春雨を良し良しと撫でながら耳元に囁く

 

「お前は可愛いんだからそれ相応の行動を心がけような?控えめなのも結構だが

あまり卑下するのは良くない

まずは自信を持ってみよう」

 

春雨は恥ずかしそうに俯いているが

俺の感覚からすればこれはまだ余裕がある

 

というわけで

 

「よし、飯も済んだし

今日の分の書類を片付けようか……手伝ってくれるか?」

 

俺はひとまず、机の上に積まれた書類を片付けにかかった

 

 

「……すごいです、提督」

「ん?何がだ?」

 

書類から目を離すことなく、春雨の声に応える

 

「私は書類一枚を書き切るのに何回も確認しなきゃいけないのに、提督はすぐに書き終っちゃいます」

「そうだな、慣れもあるし

何をどう書くかってのはもうわかってるからな」

 

書き終えた書類は出撃許可と外出許可の申請、一筆とハンコで済む簡単な書類だし

さして時間がかかるモノではない

 

「それより、そっちの予算案の方を見せてくれるか?」

「はい、どうぞ」

 

春雨から紙を受け取り

それに目を通す

 

内容自体は至って普通の予算申請だな

修繕費から支出する廊下の施設修理……廊下?

 

「床板が傷んでたのか?天井か?」

 

申請者は……飛鷹、ということは空母寮か

 

「とりあえず本人に確認するか」

 

席を立とうとした俺の手に

春雨が手を重ねてくる

「ん?」

「提督、それは後で良いですよね?」

 

「……それもそうか」

 

春雨の蒼い瞳に見つめられながら、俺は『その書類を一旦保留のエリアに置き』

別の紙に手を伸ばす

 

「んで、なんだっけ?」

「提督、お疲れですか?……書類を早く片付けてしまおう、という話をしていました」

 

「あぁ、そうか……よし、ちょっと急いで終わらせようか!」

 

ぱっぱと書類に目を通して

ハンコを押して、サインを入れる

 

大半の書類はそれで処理が終わるため、非常に楽なのだが、一部書類には

重要か否か、予算が適正か否かの審査や判断が必要であったりするので

やはり少し時間が掛かってしまう

 

「ヒトヒトマルマルです。はい

お昼ご飯はどうしますか?提督」

 

「もう昼か……そうだな、野菜多めのヘルシーな感じで頼めるかな?」

「わかりました」

 

このままではしばらく仕事が終わらない

昼飯を食べてから一旦休憩をとって

それからまた働こう

600話記念番外編は

  • 過去編軍学校
  • 過去編深海勢
  • 裏山とかの話を
  • テンプレ転生者(ヘイト)
  • ストーリーを進めよう
  • 戦争が終わった後の話を!
  • しぐ……しぐ……
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