「…………」
明滅する視界に、派手な色彩のコントラストが迸る
俺は起きたことを悟られないように
ひとまずは息を殺して目を閉じ、さっきまでと同じように気絶しているフリを続けておく
「………………」
「コレガ、提督?」
「はい、私たちの提督です」
「提督ッテナンダー?美味イノカー?」
「おいしくは……ないと思いますけど、レ級ちゃんにはちょっと難しいかな?」
なにか遠い場所から、声が聞こえる
ここまで遠くから聞こえる声となると、だだっ広い格納庫のような場所に投げ出されているのだろうか?
思索する俺の元へ、近づいてくる足音
「ニンゲンハ、テキ、コロス!」
「ダメですよ!その人は敵じゃありません!私たちの提督なんです!」
春雨に似た声、おそらく駆逐棲姫
エコーがかかって聞き取りづらいが、おそらく軽巡か駆逐のイロハ級が最低一体、レ級が最低一体、上位個体か鬼・姫級が最低一体
儀装装備状態ならともかく
今の俺にはどうしようもない相手
艦娘達とも接続が切れてしまっている俺ではおそらく助けを呼ぶことも叶わない
深海の力が使える時だったらまだ肉体再生に任せてイロハ級の一体くらいなら相手取っても逃げるくらいはできたが、この戦力差では無意味
圧倒的に不利、もはや詰みだ
いや、相手の意思統制はうまく行っていないように思える、本能任せの下級個体を押さえ込む駆逐棲姫、という構図がある以上
駆逐棲姫の戦力は現状無視できる
……戦力計算としては無意味だな
「テイトク?……テイトクハテキ!
テイトクハ、イ級ノゴハン!」
おいおいシャレにならないぞガ○ートじゃないんだからそんな話が通じないのは近づけるなよ!
「だからダメって言ってるでしょう!
せっかく本当の提督を捕まえたのに、またそこらの人間みたいに使い捨てちゃダメですよ!」
駆逐棲姫が慌てたように叫ぶ声をバックに、俺は脳内の情報を整理する
ひとまずは駆逐棲姫以外
全員危険であること、イ級(自称)が特に抑えが効かない的な意味で危険であること
レ級+イ級二体ともう一体の敵がいることetc
だめだ、詰んだわこれ
……いや、やけを起こしてはいけない、ここは冷静に時間を稼いで少しでも艦娘達に異常を気づかれやすくするんだ……どれほど時間が経ったのか
そもそも今どこにいるのか全くわからないが、それでも鎮守府にはいないことは事実だ、夕立や時雨が俺がいない事に気づくくらい簡単だ
そうなれば俺を捜索するだろう
その過程で深海棲艦にたどり着くかはわからないが、それでも都合のいい未来を信じるほかにない
今はひとまず気絶中の振りを続けなくてはならない
「ンデ、ソノ提督様ガナンデ雑巾ミタイニ放リダサレテルノ?
駆逐棲姫チャンハ扱イガ雑ヨ
人間ハ脆インダカラサ、取リアエズ起キタラ拷問シテ、首輪付ケテ提督ヤラセルワヨ」
なんとも恐ろしい内容だなおい
目を閉じている都合上、周囲を観察することもできないので、本当に逃げ道も見えない
光が見出せない現状に悲観的になりながらも、最大限の努力をする
即ちエコーロケーティングだ
まぁ実際にできるわけでもないのだが、耳を澄まして少しでも情報を増やそうというわけだ
エコーの微妙な変化で、一応壁の様子を聞き取ったり、彼我の距離を推測したりするというわけだ
「……」
全力でこそこそと情報を集めると
判明したのは
「……ネェ、駆逐棲姫チャン?
随分コイツヲ庇ウケド……モシカシテ、コイツニ惚レタ?」
「ソンナコトアルワケナイジャナイデスカ!?何言ッテルンデスカ軽巡棲鬼サン!」
どうやら、上位個体どころか
鬼級の深海那珂ちゃんだったようだ
どうしようもない絶望感が増した
いや、それだけではない
鬼級の中でも対潜に於いてはそこそこの性能を持つ(圧倒的とは言ってない)軽巡棲鬼
深海という場所柄、潜水艦による探索が行われるであろう環境でその能力は危険にすぎる
最悪の場合は戦艦や空母が大軍で押し寄せて押し潰す、という物量作戦に頼る事が出来るはずが、軽巡棲鬼はいるだけで圧力を放つ存在として、大きな障害になるのだ
なにせ戦闘に特化した鬼級である
いくら初期型ゆえに弱いとは言っても、その圧力はやはり健在、
配下の深海棲艦の数も1匹や5匹というような可愛いものではあるまい
もはやこれまで、と言ったところであろう
今俺に出来ることは
ただ息を潜めるだけだった
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しぐ……しぐ……