腕や背中に打撲、弾は通っていなくても機銃の十数発の衝撃、骨折していてもおかしくない
こりゃよくて精密検査からの入院か最悪ダメージの蓄積で死亡なんて可能性もあるな
……だが、ここで死ぬわけにはいかない
深海で人が死ねばどうなるかは知らないが、艦娘と同じ道を辿るならば深海棲艦行き
立場上は提督の俺はおそらく『深海棲提督』とでもいうべき役職になるのだろうが、深海棲艦の提督になどなるくらいなら拷問の方がよっぽどマシだし、陸で死んだ方がいい
「よぉし……!」
ダメージを負った状態で走ったからか
視界が暗く、全身の痛みのせいで感覚が鈍いが、それでも動くには問題ない
(提督!次左です、その扉に入ってくださいっ!)
「おうっ!」
扉を蹴破らんばかりに勢いよく開けて、その中へと入り込む
深海棲艦は人の存在を本能的に感知する能力があるらしいから、おそらく隠れても無意味だが、それでも時間を稼ぐトラップには意味はある
「ここは……」
(深海棲艦の、武器庫……ですかね?
私は羅針盤の妖精なので、細かいことはあんまりわかんないですけど)
深海故か、もともと気温が低いなかで、より一段とひんやりとした部屋に、所狭しと砲やその弾、さらに魚雷や電探、艦載機、どころかおよそ使われることはないであろう人間用の銃や軍刀まで置いてある
「これは、そんな単純に片付けるものか……?」
強く残された意志を感じる武器や小物、それを単純に置いてあるだけと見るには
俺は深海に近づきすぎた
「これは、墓場だ」
失われた仲間達の、そして取り残された者達のための墓場、深海の艦たちに仲間意識などないと言われてはいても、それは所詮、下級の深海棲艦を対象とした時の話であって、鬼姫や上位個体はそうではないことは分かっている
深海棲艦達が、仲間の死を悼んで置いて行った遺品の山、その前に今俺は立っているのだ
「ソウヨ、コレハネ
私達深海棲艦ノ、沈ンデイッタ者達の墓」
その声が聞こえた瞬間
俺は敵の初弾を回避するべく、なりふり構わず飛び退いていた
「別ニ今更襲ッタリハシナイワ」
そう言って宙に手を翳すのは
深海棲艦、姫級
中枢棲姫
「深海棲艦の言葉を信じられるほど現状は明るくなくてな」
「……ハァ……仕方ないわね」
エコーが消えていく
怖気の振るう感覚が薄れて
普通の艦娘の気配に酷似したそれへと変わっていく
「これで良いかしら?
私は中枢棲姫、まだ一度も観測されていないから、人間達には知られていないでしょうけれど、姫級の深海棲艦よ」
「そうかい、俺は神巫蒼羅、日本海軍属の階級は大佐、創海鎮守府の提督だ」
「知っているわ、貴方は深海でも、それ以外でも有名だから」
薄く微笑む中枢棲姫は、次第にその姿をヒトに似たそれへと変えていく
「ここは始まりと終わりが集う場所
深海拠点、
「……知らん、駆逐棲姫に睡眠薬を盛られた後はわかっていない、最低でも一日以上眠っていたと思うが……ってそうじゃない!逃げなくてはっ!」
「どこへ?」
扉へ向かって走り出す俺の横に、追走してくる中枢棲姫
「知らん!せめて海上に出られれば場所はわかると思うが!」
「なら、私が案内してあげる」
ぐっと手を掴まれて、そのまま引っ張られる
「こっちよ、闇雲に走っても外に出られるとは限らないし、姫しか知らない秘密の通路を使うわ」
姫級の豪腕によってやや強引に引っ張られ、そのまま壁の一部へと押しつけられる
「ここ、回転扉なのよ、ここからそれぞれの部屋に繋がっている隠し通路に入れるわ」
そう言って中枢棲姫もまた、その壁を押し込み
重々しい音を立てて、壁の一部が動く
柱を中心に、ワッシャーや軸受けなどの仕組みは一切見受けられない原始的な構造の回転扉が回った
「姫や鬼しか開けられないくらいに重い扉、ということか」
「そうね、壁が爆砕とかしなければわからないと思うわ」
素っ気なく答えた中枢棲姫の横顔はどこか暗い
「壁の中ならそうそう見つからないわ、ここからは外に繋がる道に繋がるまで一本道よ
……行くなら早く行きなさい」
俺へ向けて微笑んだその姿は
どこか無理をしているように見えて
放っておくことが出来なかった
「お前も来い」
「……えっ?」
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