「本当にリアルサイズの内火艇出せるとは思ってなかったな」
「艦娘サイズのも出せるわよ?
出さないと言うだけで……そもそも、これを出すのにかなり体力を使ったから
しばらくは何も出せないわ」
さっきまで隙あらば俺に向かってウォンウォンと吠えていた艤装の方も
なにやらぐったりとしている
「……んじゃあ行くぞ」
燃料はもちろん現地調達したものを使い、直接資材スポットから補給して行く
効率は悪いが、それでも無補給よりははるかにマシであるので仕方ない
「ねぇ……貴方」
「ん?」
「余裕もあるようだし、することもないから、お話をしましょう」
「……おう」
俺の了承を受けて
中枢棲姫は語り始める
「そもそも、私達深海棲艦は
忘れられた者達の集合体なの」
呟くように、声はか細く
「それが形になって、いろいろなものを取り込んで、最初に私が生まれたわ」
「ほう?」
「私はそれから、いろいろな物に触れて、いろいろな事を知って
その過程で自我を得た」
ゆっくりと、過去を紡いでいく
「私は一人で居ることができなくて
私自身を拡散させたの、そうしてできたのが意識……つまり、霊力の塊である下級の深海棲艦達、正確にはその原型ね
そして、それらが成長し、さらに拡散し、そして海に眠っていたモノ達を亡霊という形で呼び覚ました、それがサイバーゴースト、現在の姫や鬼級の深海棲艦よ」
千々に乱れ、散って行った因果が
収束して行く
「私達は存在としてのとして形を得たあと
人間にコンタクトを取った
そして、一方的に攻撃されたわ」
話は急転する
ただ受け入れて理解するには、それは突然に過ぎる内容で
「そして私達は……反撃することに決めた、だって、脅威として記憶されているのなら、少なくとも忘れられてしまう事はないから」
「……おう……」
ひとまずは確かな成果になるだろうが、どこかが絶対に間違っている結論に達してしまったらしい深海棲艦達は、人類を攻撃した……か
「私達はそうやって、戦って奪って
戦って散って、戦いの中に生きてきた
深海棲艦っていうのはね、戦うことでしか自己を証明できない浮いた存在なのよ」
…………
ふいと横を向いた中枢棲姫は
さらに続ける
「私達は忘れられたくなかった
どんな形であれ、認識の中に存在していたかった、たとえゼロとイチの羅列であっても、それは同じなの……
だから、貴方を呼び出した」
「ん?ちょっと待て、その言い方だと……」
「そう、私が、私たちが
貴方をこの世界に引き込んだのよ
この『艦隊これくしょん』の世界に
貴方が二年前からずっと放置し続けてきた古いアカウントを使ってそれらしい世界をでっち上げて、貴方のために舞台を作って、貴方のためにキャラクターを配置して、貴方のために書き割りを用意した
全ては貴方のために
この世界はそのために作られた私たちの楽園、閉鎖された島のようなモノ
他の勢いのある世界から似たような情報をかき集めて、類似品をでっち上げて、情報の欠片を積み重ねたミルフィーユ
……驚いた?失望した?……貴方には私達を詰る権利があるのよ」
「……たしかにそりゃあ驚いたよ」
「あんまり驚いてないように見えるわ」
「驚きすぎて表情筋が死んだって言えばわかる?……うん、なるほどね」
全てを考えてみれば、符合する事は多い
俺が存在しなくても普通に回っていたとは思えない、人間が歪み、艦娘達は悲鳴を上げ、容赦なく摩耗していく世界
俺の居住地付近である沿岸部の漁業従事者以外の人の少なさは疎開云々というレベルではない
まるで一枚の紙に書かれたようなありきたりな、当然のように進行していく世界の状況
有り体に言って都合よく進む戦況
いくら艦これ経験者だからって、状況までそのままになんてなるはずがない事は知っている
なのに艦娘達は皆、概ねその通りに動いていた
最近になって現れた艦娘道具派の存在は、俺が拡大させてきた戦力のカウンターとなっているとすれば違和感はないだろう
魂にだけしか会っていないはずの雪風が俺のことを知っていた理由も、『俺の雪風』がモデルとなっているのならば知っていて当然ということだろう
「艦娘も深海棲艦も、根元は同じ私
貴方以外のみんなが、皆私から生まれ、作られたモノなのよ……でも、貴方をこの世界に留めおくためにはまだ力が足りなかった
だから貴方は魂の直接融合も耐えられた、いくら艦と人との規模の差があれど、正規品とジャンクの塊では魂の質量が違うから……それでも、比較するには軽すぎるこの世界でも、私達は皆、貴方と共に在るために、こうするしか無かった
魂を接続して重りにして、艦娘達にも貴方と絆を結ばせた、そこまでやってようやく、貴方をこの世界に止めることができた」
「なら……」
「貴方の姉もそう、もう死んでいるから
この世界に魂だけを引き込んで、新しい体を与えたの」
突然の衝撃的な発言だった
「魂だけの期間が長かったからか
それとも、貴方への執着が強かったからか、魂の中に影響する能力なんてものを引っ提げていたけど、それは予想外だったわね
……所詮電気信号の羅列である私には心までは弄れなかったし」
つまりアノ性格は素なのか……
「……整理すると、ね?
まず、私がネットの中で生まれて
貴方のアカウントを使って『艦隊これくしょん』の世界に類似した世界を作った
その中での敵役である『深海棲艦』の形を取った私は、その世界にふさわしいキャラクター達を配置して、そして最後に、本命の貴方を引き込んだの
……私が引き込むときには死にかけていたし、あと一時間放置していたら死んでいるようなところだったから、むしろ助けたとも言えるかもしれないけど?
……話を戻すわね、
今の貴方は艦娘達との縁が切れてしまって、この世界から浮きかけているの
だからこのままこの世界から縁を切れば、貴方は元の世界に戻される
強制的に、ここというあまりにも薄っぺらい世界から弾かれるの」
「…………」
「だから、貴方は選ぶことができる
元の世界に戻るのか、それとも
この不自然なパッチワークの世界に残るのか」
そんなこと、決まっている
つまり作者は深海棲艦だった……?
600話記念番外編は
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戦争が終わった後の話を!
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しぐ……しぐ……