撃ち落とされ、破壊された羅針盤は
しかし、そのカケラを振りまき
実体化した羅針盤妖精が飛び込む余地を残した
「普通の装備とは違って……!」
羅針盤妖精が、戦艦水鬼の艤装に飛びつき
その中へと侵入する
そして
「何ヲスル!ハナセェェッ!」
艤装がもがく様に蠢き
戦艦水鬼をつかみ上げ、そして水面に叩きつけた
「提督っ!今のうちに撤退してください!」
その声は、戦艦水鬼の艤装から放たれて
それが届くよりも前に、俺は全力で中枢棲姫の方に突進してそれを拾い上げ
鎮守府の方へと向かう
妖精達全員を犠牲にしてしまったが
それでも中枢棲姫の存在は必須だ
「逃げるぞ!」
俺は主機を全速力にして
遮二無二その場を離脱した
ぱしゃり、と足元の海水を蹴散らして
無駄な足掻きをようやく終える
ここで私は終わりでも
私たちの守った日本は、海軍はまだ続く、それなら本望、悔いはない
「ふぅ……なんとかなりましたね
…………あとは、ご無事で」
一瞬のみ、その条件ならば
艤装妖精のいない空洞の艤装……いや、ハリボテの艤装を乗っ取ることは可能だった
でも、もうそれも終わり
この艤装が、私を取り込もうとしている
もう脱出することはできないでしょう
あとは任せました、提督
…………あぁ、寒い
「抜けたか!?」
「深海棲艦は……出てこないわね」
海域を超えて、別の海域へ向かい
本土を一直線に目指す……ことはできないため、資材スポットを経由しているのだけれども
どうにも深海棲艦を見ない
「明らかにおかしいよな」
「さっきみたいに襲われたら今度は出せるものも無いし……」
「おい、黄泉平坂みたいに言うな」
黄泉平坂の逸話ではたしか
死別した伊弉冉尊に会うために伊奘諾尊が黄泉に向かってから逃げ帰る際、追われるたびに物を投げては注意を引き、その間に駆け抜けて最後には道を塞ぎ、伊奘冉尊と絶縁する
という話なのだが……たしかに
状況に準えるのならばよく似ている
俺は自分で神を気取れるほど愚かでは無いが
「内火艇では速度が出ない、太平洋横断できるほどの航続距離もない……が、
距離については未採取のスポットから資材を直接補給し続けて持たせている
……正直に言えばどう帰るかじゃなく、どう逃げるかの問題だな」
「速度不足は致し方ないわね」
呟くような声で、中枢棲姫が言う
その最中で
「…………」
「なにしてるの?」
「銃の整備だ、この艇にあった小銃を使わせてもらう」
いざと言う時に使える携行火力は存在としての規模が大きい、あるとないとでは選択肢も大きく変わってくるだろう
深海棲艦である中枢棲姫が生成した内火艇の備品、多少なりとも霊的エネルギーはあるはずだし、最低でも駆逐艦一隻の牽制くらいになら役に立つはずだ
「……面白くない」
「そりゃあそうだろう、こんな油臭い作業は見てて面白いと言う方がおかしい」
各種ネジやロックを外して銃を分解し、それらのゴミを取って油を塗って、組み直す
銃の扱いの中でも初歩として習う分解整備だ
非常に綺麗な黒い銃はメンテナンスのし甲斐がないくらいに綺麗だが、どれだけ綺麗にしても悪いわけではない
徹底的に細かく整備していく
「……中枢棲姫、お前銃弾は出せるか?」
「出せるわよ?……あぁ」
「ただの銃弾では効果は薄いからな
一応の対策、と言う程度が関の山だが」
「いい加減くどいわ、出してあげるからその目をやめなさい」
許せサスケのポーズで微笑む中枢棲姫の握られていた左手を開くと
そこには銃弾が7発
「九パラの企画通りにはいかないけれど、この世界である限り
私なら案外融通が効くのよ
……それなら、使えるんじゃないかしら?」
「明らかに口径より大きいんだが……うん、使えるな」
入るはずのない銃弾が平然と弾倉に入る姿を目で追って、中枢棲姫に視線を戻す
反則じみた能力を披露する中枢棲姫は
俺から離れて海の方へと視線を戻す
「……」
「…………」
「おかしいだろ」
「この世界では私がルールなの」
身も蓋もない回答だった
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