「とにかく!私を手放すなんてとんでもない!少なくとも救援が来るまでは絶対に手放さないでくださいね!良いですか!」
「ハイ」
「ふぅ……まぁ無事だったなら良いですけれど、今後こんなことがないように努めてくださいね?」
「ワカッテイルヨ」
「深海棲艦の真似はよしてください、本当にそっくりだから提督が本当に提督なのか判断がつけづらいです……あ、ラムネ飲みますか?」
「突然だなオイ……まぁ、いっか
一本もらえるかな?」
突然過ぎる話題転換に一瞬置いて行かれそうになった俺だが、なんとか持ち直して
ひとまずラムネを一本貰うことにした
「大和特製ラムネです、どうぞ」
「ありがとう……そういえば本当にこれ、『大和特製』なんだよなぁ……」
ここは大和の中だし、過程はどうあれ大和が作っていることに違いはないわけだから
間違いなく『大和産のラムネ』だし
「そうですよ〜?私、大和は……というか、大半の軽巡洋艦以上の規模の艦は
圧縮二酸化炭素を炭酸にする機械があったので、それでラムネを作れたんですよ」
大和はそう言ってカラカラと空き瓶を振りながら笑う
昔は瓶どころか
何一つとして作ることもできないくらいに細かい扱いが苦手だったのに
今では自由自在と言えるほどに成長しているな
「もう!そんな子供を見るみたいな目で見ないでくださいよ!私だって練習くらいするんですよ!?」
「分かってる分かってる、大丈夫だからうん、お疲れ様」
「分かってないじゃないですかぁ!」
パタパタと手を振ってやると
やや怒り気味に反論されるので
「昔はラムネ作れなかったじゃん」
俺はつい、事実を言ってしまった
「…………」
「言ってはいけないことを……!」
ゆらり、と気迫を漂わせて視線をぶつけてくる大和、その目は紙を裂きそうなくらいに鋭く、俺はその視線に思わず現実側へ撤退するのだった
「談笑は終わりかしら?」
「逃げてきたんだよ……」
中枢棲姫に目を戻すと、ジト目でこちらを睨み返してくる
「……現在位置は日付変更線を超えたあたりね、このペースで行けば2日後くらいには艦娘の防衛圏内に入るわ……それまで貴方の体が保てばだけれど」
「二日なら十分に保つ、侮るな」
これでも一応それなりに鍛えているんだ
耐久だってそれなりにやった
多少の時間程度なら問題はない
「陸と海の上では話が違うわ、少しでも体力を維持するために眠っていたほうがいいかも」
「残念だが、寝首を掻かれかねない状態で眠れるほど剛毅ではなくてね
座るだけにさせてもらうよ」
内火艇は狭いが、十人規模で入れるようになっているため、スペース自体はある
とはいえだ、いつ襲われるかも分からず、どころか相手の攻撃手段すら掴めない状態で、唯一の防衛手段である刀を手放せるほど俺は性格が緩くない
「……あぁ、スポットあった」
視界に独特な光を放つ海面が映り、反射的にそちらへ艇をつける
「……ん、これは燃料のスポットだな」
これはありがたい、そろそろ燃料の補給が欲しいと思っていたところだ
「燃料と弾薬のスポット?ついでだし、弾薬も補充してしまいましょうか」
「あぁ……」
ひとまず、拳銃弾に資材エネルギーを込めて
燃料は艇の補給口に注ぐ
組成は海水そのものなのだが、なぜかこれでも燃料として機能するので
十分に使う事ができる
「私もちょっともらって行くわね」
艇に横付けしていた艤装を起動した中枢棲姫が艤装を動かして、艤装が海水を思いっきり飲む
「それで良いのか……!?」
「えぇ、これでいいの、生態艤装だからこういうやり方が正しいのよ」
ガバガバと水を飲んでいく艤装は
それが海水だという事実を感じさせないような動きであるが、
「後々喉が渇きそうな飲み方だが……」
「良いのいいの、ね?」
「ググクゥ……」
辛そうなんですがそれは(小並感)
まぁ本人?が大丈夫と言ってるなら
それで良いのだろう
[私は潮風に当てられると痛んでしまいますからね!][お前の手入れもしないとな]
砥石の類はここにはないが、
刀身と鍔と柄に分解して磨くくらいはできるだろう
「よし、いくわよ」
「了解……なぁ」
「なに?」
「そいつ、その艤装ってさ
それで内火艇押せない?そしたらもっと早くなりそうなんだけど」
「この子、移動が苦手なのよ
私が基地型の深海棲艦だからなのかもしれないけれど、なぜか速度はでないの
艇を押すどころか艇に括っておかないと置いていかれてしまうわ」
中枢棲姫の艤装は他の姫級同様の分離型艤装でありながら移動が苦手だという事実が発覚したところで、
「火力はそいつ依存だから切り捨てるわけにはいかないしな……」
俺はその艤装を荷物と判断するか
それとも設備の一つとでも思うことにするかと考え始めた
そもそもそいつの重量のせいでスピードが出ていないんじゃないだろうか?
「仕方ないじゃない!砲撃特化なんだから!」
「固定砲台は良くないぞ、少しはシェイプアップにも目を向けるべきだったな
大和型の高火力高速を目標にして頑張って、どうぞ」
「大和型は高速なの……?」
[分類上は低速なんですけど……]
[実艦で約30ノット出てるから戦艦の中では割と早い方だ
そんなに低速にこだわるなら缶とタービン詰め込んで高速化してやろうか?ん?]
艦これ的には高速統一以外には悪手でしかないとされる構成だが、40ノット超え(護衛の駆逐艦を置き去りにしかねないほどの勢い)の猛機動で敵陣に飛び込んで46センチ三連装砲2個を連射する大和とか、敵からすればもはや悪夢である
[私が大破したら修理が嵩みますよ?]
[…………ヤメテクレ……]
二桁時間ドックを占領され挙句には鋼材が尋常じゃない消え方をする大和型の大破は絶対に避けるべき事態なので、そこで話を打ち切りにする
「はぁ……すまない、体力維持のために一度休む」
「えぇ、どうぞおやすみなさい」
600話記念番外編は
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しぐ……しぐ……