戦いたくなんてなかったんや   作:魚介(改)貧弱卿

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海上の楼閣

鉄の壁が機銃の弾を弾く

それはたとえ機銃であっても圧倒的な火力を誇るはずの中枢棲姫の力に、まるで堪えていないかのように悠然と聳え立ち、俺の目の前に佇んでいる

 

「……提督、大丈夫ですか?」

 

それは、史上最強の戦艦、

大和型一番艦大和の装甲だった

 

「お迎えももうじきです、もう少し耐えれば……!」

 

ガンガンと鳴り響く炸裂音は、どこまでも強く、その衝撃を誇示する

たとえ大和型といえどもそう長くは保たないだろうと思うほどに、異常な火力を発揮している中枢棲姫の艤装

 

それを

 

殴り付けるように爆発

 

耳を(つんざ)く轟音に怯んだか艤装が傾ぐ

 

「!今のは!」

〈提督さん、聞こえる!?〉

[提督さん、後でわかってるわよね?]

 

彼方からの通信に、瑞鶴の声

そう、今のは遠方から放たれたアウトレンジ爆撃、そして

 

[この私がスポッターなんてやってあげたんだから、感謝しなさいよね]

 

深海鶴棲姫

 

「お前……!」

[なによ、心配させたくせに、第一声がそれ?」

 

ばしゃあ、と水音を立てて

海面から浮上してくる深海鶴棲姫

 

「提督さんの血の音、私が見つけてあげたんだからね!」「先に見つけたのは私です!」

 

深海鶴棲姫と大和が言い争いの小競り合いを始めるなか、瑞鶴はこちらに島風並の凄まじい機動で接近しながら攻撃を続ける

 

〈二人とも!巻き込むわよ!〉

 

いつのまにこんな技術を身につけたのか、と思うほどに精密な爆撃は、見事に艇を傷つけないまま中枢棲姫の艤装のみを打ち据えていく

 

〈これで、ジ・エンドってね!〉

「ア……ァァァァッ!!」

 

中枢棲姫が叫ぶ、その瞬間、艤装の抉れていた傷痕は完全に修復され

一瞬で砲が再装填される

 

「まず」「提と」「ヤバ」

三者三様の反応は、しかしみな一斉に中断される

 

凄まじい振動と共に放たれた主砲が、相殺されたのだ

 

「ドーモ、深海棲艦=サン、川内改二です」

 

どこからともなく、いや

間違いなくすぐそばから、その名乗りが告げられる

 

「貴様、アイサツを返さぬとはなんたるシツレイ!とか言っている場合じゃなさそうだけどさ……死んでいいよ」

 

瞬間移動じみた速度で中枢棲姫の本体の後ろに回り、いつものふざけた魚雷クナイではなく、本物の短刀で首を切り裂こうとする川内

 

「姫級相手でも!人型本体なら通じるんだよねぇっ!?硬いっ!」

 

ガンッ!と言わんばかりの高質な音とともに刃が弾かれ、もはや使い物にならなくなったダガーを放り捨てる川内

 

「川内!下がって!」

主砲の直撃を川内の身代わりに受けた瑞鶴が、その砲弾を受け止めて笑う

 

「瑞鶴改二、甲……今の私は装甲空母」

 

強引に装甲で受けたためか吹き飛ばされ、水面に叩きつけられて一撃で中破しながらも、正規空母の体力で大破だけは回避して弓を再び構える

 

「提督が力を失っても、提督のためだけに想いを重ね続けて、積もりに積もった感情の山が、私に力を与えてくれる」

 

頼りない新人だったはずの瑞鶴が

瞳を赤く輝かせ

その焼けた甲板を再び展開して

一射、二射、三射、矢継ぎ早に射る

 

鋼鉄の鳥は翼を広げて空へと昇り

反転、急降下爆撃

 

「主砲、一斉射用意!」

「なんの……魚雷再装填完了、行くよ!」

 

大和と川内と瑞鶴が、各々の装備を軋らせる

 

そこへ

 

「敵艦隊、捉えたぞ。艦隊、砲戦用意!」

「はい!榛名は大丈夫です!」

 

「山城。遅れないで。主砲、副砲、撃てえっ!」

「一斉射、撃てえっ!」

 

「私たちも行くわよ、レ級……主砲構え、仰角合わせ、諸元入力よし」

「アヒャヒャヒャヒャ!細かくやる必要はねー、遠慮なく撃っちまいな!」

 

空母棲鬼とレ級まで加えた複数の艦娘達の声、それが放たれたのは

無茶苦茶に光りまくる巨大な帆船の船上からだった

 

「ソロルの深海棲艦用回収船です

臨時で連絡して、力を貸していただきましたが、うまく行きましたね」

 

大和が艤装を下ろし

俺はその艤装の天板に飛び乗る

 

ようやく不安定な内火艇を離れ、3万トンの重量とそれに比する安定感を示す鉄板に乗れた事で安堵しつつ、大和撫子を鞘に戻す

 

出力の出先が二つあっても力が分散してしまうだけだ、俺が力を供給できるならそれでも良いが、現在の俺には不可能

 

「みんな、心して聞いてくれ」

 

右手に握った大和撫子を大和の艤装の上に残して、川内が放った短刀を拾っていたレ級から借り受ける

 

「アレは世界の核、破壊したら世界が滅ぶ

だから戦闘不能だけを狙ってくれ

殺したらなにが起こるかもわからない

スペック

メインは砲撃、特記事項は重装甲、艦載機一切無し、雷装80、砲雷撃戦特化の基地型深海棲艦!」

 

「了解ネ!」

「先鋒、この赤城が務めさせていただきます」

 

俺の声が終わると同時に、矢が射られる

それは紫電へと変化して、展開された機銃の対空射撃へと突っ込んでいく

 

「艤装を破壊するデース!Fire!」

 

自前の足で駆けつけた金剛の主砲が爆ぜ

機銃の数基は使用不能に陥った

 

「No!直撃だった筈ネ!被害はたったこれだけ!?」

「金剛お姉様、諦めずに集中攻撃です」「霧島、合わせて」「行くわよ!」

 

比叡も駆けつけて、四人揃った金剛型姉妹による一斉射撃が繰り出され

 

「バイタルパートは抜けないものと考えて、山城!」「はい!」

「力を貸すぞ、山城」

「利根姉さん、一緒に」

 

高高度からの偵察機が観測の構えに入り、それに応じた戦艦二人の弾着観測射撃が放たれた

 

「よし、私たちも行くぞ!」

「ここは譲れません」

「例え戦力にはならなくても、できることはある筈でありますから」

「酸素魚雷って素敵よね〜」

 

内火艇(ミニサイズ)や航空機があらんかぎりの力をぶつけて、走行を突破した綻びに砲や魚雷が殺到する

 

機銃一つで致命傷になり得るダメージを誇るだろう力に溢れた艤装は

しかしいま、無数のシロアリに食い荒らされる建造物の如く、脆くも崩れ落ちようとしている

600話記念番外編は

  • 過去編軍学校
  • 過去編深海勢
  • 裏山とかの話を
  • テンプレ転生者(ヘイト)
  • ストーリーを進めよう
  • 戦争が終わった後の話を!
  • しぐ……しぐ……
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