戦いたくなんてなかったんや   作:魚介(改)貧弱卿

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プリンセスデストロイヤー

「中枢棲姫、今度こそ

君を助けに来た」

 

マクロの世界は濁り切って

いまや見透すこともできないほどに暗い

 

この世界は中枢棲姫の魂の中

故になによりも真っ直ぐに『この世界』を反映する

 

魂の中の領域がこんなにも濁り切っているということは……なんらかの悪意を受けたのだろう、それも人知の及ばない程のそれを

 

「中枢棲姫!」

「…-…」

 

魂の中に突入した俺の前に

中枢棲姫は姿を現した

 

しかしその表情は、虚

なにがあったかもわからない、色の抜けたなにも写していない瞳に泥のような黒のドレス姿で

ただ無表情で佇んでいる

 

「中枢棲姫……?」

「…………」

 

返事はない、ただの屍のようだが

流石に魂の持ち主が死体と言うことはない、なのでコレが本当に死体であるなら……

 

「ダミー……か?」

 

本物そっくりな形をしただけの偽物

人形を置いている、と解釈できなくもない

その中枢棲姫に接触するために近づこうとした瞬間、足元が突然爆発する

 

「ぬうぉっ!?」

 

爆発に巻き込まれて吹き飛ばされかけ、慌てて足を回復して踏ん張り

なんとか体もろとも吹き飛ばされる展開は回避するが、やはり損傷の影響は大きい

もとより他者の世界に入り込んでいる身としては肩身が狭く、支配力の強い中枢棲姫の影響によって常に圧力がかかっている状態だ

 

「いててててて……」

 

足の傷は治ったものの

やはりダメージは完全には回復できず、痛みは残っている

 

「……よし」

 

再度接触を試みるために突撃するが

今度は障壁に阻まれ、弾き飛ばされる

 

「ってことは!」

 

こんな厳重に守っておいて、まだ『人形でした』『偽物でした』とは考えづらい

この世界においては基本的に意志の強さが影響力を決定しているため

本人が『偽物』や『掴ませるためのダミー』と認識している場合、無意識レベルでそれを軽んじてしまうので防御が弱まるのだ

つまり、ここまで厳重なガードが施されているのならば、まず間違いなく

この中枢棲姫は本物であり、そこには自我が存在している

 

それを悟った瞬間、周囲の暗い空間から煮凝りのように半固体状の流体が流れ出て

それが形を取っていく

 

中枢棲姫を中心として積み重なり

鳴動するその流体は次第に硬化し、金属光沢を発して

戦艦の如き偽装を成していく

 

戦艦棲姫、集積地棲姫

南方棲姫、戦艦水姫

重巡棲姫、空母水姫

 

さまざまな生態艤装が顕現し、それらが蠢き始める

 

牙を剥き、拳を握り

水面に爪を立てて叫ぶ者

 

ただ主砲を向ける者

水面に伏せて甲板を開く者

機体をばら撒き、水面に噛り付いて向かってくる者

 

リアクションはさまざまだ

だが一様に、明確な殺意がある

 

「……こりゃあ……」

 

手の中には巨大な大鎌、nw(ニューウエポン):204-SRM(ショートレンジ マテリアル)

名を『パーシックル』

 

深海由来の魂の中故か、最も負荷無く扱える儀装は輝那よりこれだ

響く轟音に柄を握り締め

巨大な鎌を振り翳す

 

「まずは……!」

 

開幕航空戦-開始-

 

《x big》「zygaaaaaa!」《/x big》

 

「クッソ!?」

 

大量の水上爆撃機が飛び立ち

俺に向かって飛んでくる

まさか俺の方にも空戦能力があるわけがない、とばかりに直営もロクにつけず

恐るべき数を全て攻撃に回してきたのだ

 

しかし、俺とてただやられるだけではない

手元から札の零戦52型を出現させ

投擲と同時に顕現させる

動かし方は瑞鶴と加賀にしごかれて十分に身につけた、そもそも弓と違って陰陽術によって遠隔から機体を操るタイプの札型は操作性に秀でる

俺の制御能力の低さを方法論で補うというやりかたなのだが……やはりか

 

「装甲が厚すぎて戦闘機じゃどうにもならないな」

 

空戦能力があるとは思っていなかった水母棲姫のほとんど全ての容量は爆撃機に充てられており、鈍重な爆撃機を空戦を本番としている戦闘機で叩くなら簡単だ、機体の性能差は大きく開けられているが

それでも十分に叩くことができる

だが、敵艦の攻撃となればそれは艦攻・艦爆の出番、やはり戦闘機一択の俺ではどうにもならない

 

砲撃戦 開始

 

ある程度距離が近づいて来たからか

砲戦型の敵艦たちが主砲副砲を鳴らし始める

 

だが、そんな事は無意味だ

 

「パーシックル 銃形態」

 

狙撃銃型の銃パーツを展開して、素早く狙いをつけて、同時に発砲、再度狙って発砲

敵のパーツの接続部分だけを根こそぎに破壊していく

 

艤装の一部を吹き飛ばされて

ようやく本気になったような叫び声を上げ始める連中の心臓部分を射抜き

爆散させていく

 

しかし、戦艦のバイタルパートは硬すぎる

 

「接近戦しかないか……!」

 

因果をねじ曲げるほどの力は無いが、自分の体に干渉する程度なら出来る

急加速して、飛んできた連装砲を振り切って、大鎌の変形攻撃を喰らわせる

 

「死ねえぇっ!」

「gnooooo!」

 

戦艦水姫の艤装へと刃を振り下ろしたが

その途中に集積地の艤装が割り込み、一撃を受け止めてきた

そしてその直後、南方棲姫の艤装が強烈なタックルを仕掛けてきて、ものの見事に吹き飛ばされる

 

黒い水面に叩きつけられるはずだった俺は、しかし空中で何かに受け止められ

ふわりとその場に下ろされる

 

「提督、大丈夫でしたか?」

 

青い瞳、細い手、膝までしか存在しない足

その姿はまさに

600話記念番外編は

  • 過去編軍学校
  • 過去編深海勢
  • 裏山とかの話を
  • テンプレ転生者(ヘイト)
  • ストーリーを進めよう
  • 戦争が終わった後の話を!
  • しぐ……しぐ……
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