俺は獣肉断ちとなったパーシックルを片手に、最も手近な艤装へと突撃して、
それを両断する
ブツンと音を立てて、
肉を断つ刃は鋼をも切断した
「さすがです提督さま」
「お兄様と呼んでくれなくても良いんだぞ」
駆逐棲姫の方に振り返ってから、俺は柄を拗り、一枚の連続した刃をワイヤーで持って接続される分割蛇腹剣へと変形させた
「ここからは遠慮抜きでいく
なにか策があるなら今のうちに言ってくれ」
「はい!提督!」
駆逐棲姫は俺の前に出ると
水母棲姫の艤装を破壊するべく、巨大な砲を放ち、その砲身から火花をあげて
24センチ砲を連射する
「まず一つ」
俺は目の前の艤装の外骨格たる装甲を切り砕き、抉るように振り抜いた刃を引き戻し、そのまま叩きつけ、即座に半回転する横薙へ移行してステップを入れ、副砲を砕いて後顧の憂いをなくしつつ再度コンボを開始する
「お兄様、単独ではこの世界には影響力が足りません、今の状態ではお兄様の魂は弱い
普通の艦娘や深海棲艦ならまだしも、世界そのものである中枢棲姫を相手には影響が及びません」
そう、破壊した艤装も内臓らしきモノや甲板の破片などを撒き散らしながらもすぐに立ち上がり
再び攻撃を仕掛けてくる
その有り様からすれば確かに『攻撃行為の影響が十分に与えられていない』のは明らかだ
「ですから、私と融合してください!」
「は?」
「ですから!私と融合してください!」
再びの叫びは、かき消されることもなく、波間に消えることもなく
確かに届いている
しかしその内容はどうにも理解しがたいものだった
だが、それを理解しようと努力する間にも攻撃は止まず、また止められない
敵は攻撃を止めるほど優しくはなく
こちらとて手を止めれば死あるのみ
互いに手を止めることなく撃ち合い、切り合いながら、駆逐棲姫の叫びの内容をリフレインさせる
融合しろだと?どういうことだ?
深海棲艦と人間が融合などできるのか?そもそも物理的な肉体を伴わないこの魂の世界で肉体に意味があるわけはないがだとすると融合とは?
混乱している俺に、戦艦水鬼の主砲が放たれ、そこに駆逐棲姫が助けを出してきた
「提督っ!」
「!」
手を非物理的な光がひっぱり
そのまま空中に放り出された俺が見たのは、半秒前まで俺がいたあたりを巨大な砲弾が通り過ぎていく姿だった
「提督、もう時間がありません」
「いやいや、まずは融合について詳しく教えてくれない?」
「……そんなこと、言わずとも分かりますよね?……私は
駆逐棲姫は一瞬だけ嫌そうな顔をしながらも大人しく教えてくれた
「私の内包する世界はつい最近生まれたモノです、そして、そのなかには
提督の『砕かれてしまった本来の魂の欠片』が存在する
だから、私の魂を吸収して完全体に戻れば提督の魂はより強くなる」
重巡棲姫の艤装からの砲撃を掌から出した光の槍で防ぎ、そのまま槍で重巡棲姫を串刺しにした駆逐棲姫が、俺と目を合わせる
「本来の状態にまで回復すれば、提督の魂は戦艦を遥かに超える、決して中枢棲姫にも劣らないでしょう……破れ鍋に綴じ蓋、と言うやつですよ
さぁ、早く」
手を差し出してきた駆逐棲姫に応え、その手を取ると
「……ん!」
強引に手を引かれて
唇が重なる
「……案外ガサついてますね、リップクリームをオススメしますよ提督」
「お前な!……って、それ以前になんだよそれっ!」
叫んだ瞬間、駆逐棲姫の全身がさまざまな色の粒子になって解けて俺の方へと流れ込んでくる
体に触れると弾くのではなく、そもそも当たっていないかのようにすり抜けて
俺に吸収されていく
多量の粒子が一気に流れ込んで来て視界が完全に無くなるが、炸裂音がするばかりで砲撃や雷撃は届いてこない
おそらく駆逐棲姫の粒子が装甲代わりになって受け止めているのだろう
[……はい、融合完了です]
「まるで意味がわからんぞ!」
俺の中から響く声は、やはり駆逐棲姫
「魂レベルで融合しているので、もう分離とかはできません、というか私の自我が何故保っているのかが不明です、はい
ですが……]
言い淀むように言葉を止める駆逐棲姫
「これで、あいつを救えるんだな?」
[……はい!]
俺の右手には、獣肉断ち
左手には、小型拳銃
あの日欠けてしまった欠片が
思わぬ場所で帰ってきた
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