戦いたくなんてなかったんや   作:魚介(改)貧弱卿

552 / 649
再誕

「……駆逐棲姫」

[はい]

 

「力を貸せ」

[……はい]

 

駆逐棲姫の手を借りて、俺の魂は修復された

 

万全には未だ至らないが

それでも自己修復でそこに至れる程度には回復できた

なにせ失った欠片を取り戻し、その欠片を再び組み込むための添木だって手に入ったのだ

あとは時間さえあれば大丈夫

 

駆逐棲姫の命を取り込むことで

俺は再び死を得て、魂は生に向かっている

 

人間として、生物として

ここまで自然な状態になったのは本当に久しぶりだ

 

「……よし」

 

肉体と精神の同期を完了

今まで放置してきた傷だらけの霊体に喝を入れて、無理やりな動かす

魂との同期完了

欠片の寄せ集めを再び本来の形に戻す

 

再誕、成立

 

暴れ回る艤装達の撃ち続ける砲火を浴びて

その煙と炎の中から姿を現す

 

やはり造物主の分身のようにはいかないが、それでもかまいはしない

再誕が成立した以上、

今ここでは俺がメシアだ

 

「離れろ、俺の邪魔をするな」

 

バキン、とひび割れる音がする

暴走する艤装達が弾き飛ばされ、道が開ける、透明な壁は幾重にも連なっていたが

即座にひび割れ、砕けて破片すら残さずに消えていく

 

やはりそうだ

覚醒した俺の能力ならば

中枢棲姫の拒絶にも対抗できる

 

「中枢棲姫!」

 

「…………!」

 

うずくまる白い女に声をかける

「起きろ、中枢棲姫」

「……!」

 

反射的な動作なのか、爪を振るわれるが、それは俺の体をすり抜けて消え

傷一つすら残さない

 

「起きろ、中枢棲姫」

 

そっとその肩に手を添えて、

閉じられたままの目を開かせる

 

「…………」

「気分はどうかな?」

「……最悪よ」

 

呟くような一言、色良いとは言えない返事、しかしそれは間違いなく俺が望んだ言葉でもあった

 

「おかえり、中枢棲姫」

「ただいま、あなた」

 

深海棲艦や艦娘達、無念の想いに囚われたまま死んでしまったそれらが残した最後の遺志

そのあまりにも高く積み上げられた山は、中枢棲姫の意識を乗っ取るまでに至っていた

 

意識を失った中枢棲姫を乗っ取って

その力と体を利用していた遺志を追い出した今、その本体は……

 

そう、物理側に顕現する

 

「行くよ、外に」

「えぇ、今のあなたなら十分よ、手を貸して」

「分かっている、行くぞ」

 

明転

 

「っしゃあ!」

 

物理体の側に意識を引き戻した俺は

中枢棲姫から溢れた霊体の方に目線を送る

 

「目標再設定!攻撃対象は敵艦 仮称『深海怨業鬼』!」

 

《了解っ!》

 

中枢棲姫の体を引き寄せて、その背後へとはじき出されていた霊体に砲を向ける

そう、今までの拳銃とは訳が違う砲

 

15.2センチ連装砲だ

艦娘と同じ装備を単純に顕現させて

飽和して溢れる霊力に任せて撃ち放つ

 

敵は完全に霊体である以上、物理攻撃は無効、だが単純な物理攻撃に収まらない霊力を持った攻撃なら話は違う

 

腐っても連装主砲の直撃だ

響かないはずがないだろう

 

「…………?」

 

「マジかよ」

「ダメみたいね」

 

と思っていた時期がわたしにもありました

 

「どうする?」

「火力が足りないならそれ以上の火力をぶつける、それだけでしょう?

単純明快だわ」

「なるほど、非常に簡単だ」

 

中枢棲姫の出した案はこうだ

 

まず、彼女が最大規模の主砲である51センチ連装砲を召喚し、それにありったけの霊力を俺が注いで、ブッ放す……つまるところ、二人の最大火力を一撃に集約して、敵を纏めて吹き飛ばそう、という訳だ

 

「Y/N?」

「Y、行くぞ中枢棲姫!」

「ええ、分かったわ!」

 

エネルギー装填は十分、魂のヒビも修復されつつあるこの状態なら

大和級ですら持て余しかねない莫大な火力を担うことも可能となっている

 

「……みんな!10秒稼いでくれ!」

 

《了解!》

 

中枢棲姫が艤装の中から顕現させた巨大な主砲を俺の肩に乗せて

俺はエネルギーを集約して、その主砲を稼働状態に持ち込もうとする

 

「こいつ……!なかなかの大食らいだな!」

 

与えれば与えるだけ

貪るように喰らい、飲み込んでいくその様は、乾き切った砂漠の砂のよう

 

戦艦の中でも最大級の艦である大和型の、実質専用と化している46センチ三連装砲をさらに超える大口径、夢とも幻とも言われた51センチ

並大抵では扱えないということか

 

「わたしからも入力しましょうか?」

「いや、ダメだ……撃つのは俺である以上、この砲には俺のいうことを聞いてもらわなきゃいけない」

 

しっかりと握られた銃把を赤く濡らして

それでもなお力を注ぎ込み続け

 

「よし!」

 

ようやく、重々しい音を立てながら

主砲が零点位置に帰順する

 

「主砲、構え……!」

「諸元情報入力完了、弾道補正演算完了、弾着観測修正完了、撃てます!」

 

「撃てぇぇっ!」

 

艦娘達が稼いでくれた時間を使って

俺達は巨大な主砲を召喚し/起動し/使用して砲撃ができた

 

俺一人の力じゃない、

みんなの力での砲撃だ

 

大和達が改二を発動してようやく装備可能になる巨大砲のお味はどうだい?

600話記念番外編は

  • 過去編軍学校
  • 過去編深海勢
  • 裏山とかの話を
  • テンプレ転生者(ヘイト)
  • ストーリーを進めよう
  • 戦争が終わった後の話を!
  • しぐ……しぐ……
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。