マトリエルを起動して、二人して景気良く弾をばら撒く、装甲に弾かれるもの、肉質に食い込むもの、運良く装甲同士の隙間に入って装甲を剥がすもの、何も出来ずに海に落ちるもの
その様相は種々様々だが、それらが無意味ではないことは徐々に傷ついていく深海怨業鬼の姿から明らかだ
「ヴァァァァッ!」
「黙れカス」
あまりの弾薬消費に悪態の一つも吐きながら、銃身を見遣る
もう戦艦の一出撃を凌ぐレベルで消費が嵩んでいるが、銃身がイカれるような兆候は見受けられない
さすが翔鶴製の自信作だ、『涙の天使』の名を持つだけある、弾薬消費を嘆く提督の涙が名前の由来なのかねぇ
「提督、これ大丈夫なのか!?」
「大丈夫、弾が出てるうちは問題ない、出なくなったらストップが掛かるから良い」
爆音で普通に話しても聞こえないため、至近距離でありながら叫ぶように言葉を交わす
「りょーかいっ!オラオラオラッ!」
「…………」
俺より景気良く撃っている天龍だが
この消費した弾を回収することになるのはお前たち遠征艦隊なんだぞ……?
「おい提督!効いてんのかコレ!全然痛がってねえぞ!」
「効いてるよ、少なくとも多少のダメージにはなってる!」
痛がっているようには見えないが
それでも効果自体はある……はずだ
確実に効果はある
「……グアマァァッ!」
「うぉぉっ!提督っ!大丈夫なのかよぉっ!」
「ビビるな天龍!世界水準ならこんくらい越えてこい!」
咆哮する敵に思わずと言った様相で声を上げる天龍に怒鳴り返す
実際、これは世界に溜まった怨念の総量からすれば欠片でしかない
この程度に怯えていては困るのだ
「まだ弾はあるか!?」
「あぁ!」
「ならまだ戦える!沖津丸は回避能力が高いから操舵さえしっかりしてれば攻撃も避けられる!
火力が足りないのはみんな同じだが
どんなカスダメでも蓄積すれば敵を倒せるのは変わらない!」
焼け石に水かも知れないが
それでも『敵を倒せる理由』を自信ありげに叫ぶ
士気の維持には時に流言飛語じみたものだって必要なのだ
「手数の多い俺たちがメイン火力だ!
どんどんカスダメ貯めてこーぜ!」
「……おう!やってやらぁっ!」
バリバリ砲塔を回しながら叫んで
足止めされている敵に向かって弾をばら撒く
やはり大した火力にはならないが
真綿で首を締めるが如く、少しずつ傷ついている
「やってられないわね……」
反撃で傷つき、中破した艦娘たちは一旦撤退し、翔鶴と明石による修理を受け、補給して再出撃、その間はメンバーを交代しているようで
定期的に部隊が入れ替わっている
理想的な対大物戦の戦法だ
俺がかつて指南した時、そして共に戦った時もこの戦法を取った
「……テートクー!見てますかー!」
[おう、見えてるよ金剛]
トランシーバーから通る声は、あいも変わらずハイテンションだ
「マトリエルの弾は残り1分程度だが、間に合うか…?」
弾がそろそろ保たなくなってきた
……様子はどうだ?
「ヴゥゥゥ…」
全然大丈夫そうだな
少なくとも戦闘に支障なし、と言ったところだろうか?
「火力が足りないが……!」
「提督ッ!」
その瞬間、砲撃をくらってマトリエルが弾け飛ぶ、無残に砲台ごと捻じ切られたような状態、全壊だ
「チッ!」
残念な結果になってしまったマトリエルを放棄して、その核を抜き取った直後に跳躍、顕現させた足場で空中から再度跳躍してレ級の艤装に飛び乗る
「ウォット!……危ないナ、提督」
「すまんな、だが来るぞ!」
「疫病神カヨ!」
再び顎を大きく開いた深海怨業鬼の咆哮と同時に爆発が起き、その口の中は無残に焼き払われる
「舐めるな化け物」
潜伏していた深海鶴棲姫の一撃が
ものの見事に直撃したのだ
「グマァァァァッ!」
その悲鳴は、なんというか曇っていて
「クマァァッ!」
次の瞬間、ブチ切れた球磨が突然魚雷をカマした
「私の口癖取るなクマーーッ!」
恐れなど知らぬと言わんばかりに突撃した球磨はそのまま魚雷を主砲へ持ち変えて連射し
接近し過ぎたと判断するやそれもさらに持ち変えて……強く拳を握りしめる
「グマァァァァッ!!」
「ギィォァァァッ!」
怒れる熊の連続攻撃になす術もなく叩きのめされる深海怨業鬼だが、ただやられるばかりではないようで、砲撃を使うタイミングを見計らっているようだ
「……レ級、主砲を借りるぞ」「ちゃんと返せヨ?」
「分かってるさ」
主砲から弾薬を抜いて、その宿した霊力を物質化する、そして
間に合わせの装甲板を生成し、造形したメリケンサックを投擲する
「球磨!使え!」
「りょーかいくまっ!オラァァっ!」
普段はキュートな球磨とは思えないバイオレンスな攻撃は、見事に砲撃直前の深海怨業鬼の顔面に直撃し
諸々のダメージ蓄積も相まって、ついに爆散せしめたのであった
600話記念番外編は
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