「グァァァアッ!!!?」
大きな叫びと共に爆発し、装甲の破片を撒き散らしながら四散していく深海怨業鬼
やはり中身はない
ただの怨念の塊に核などないのだ
依代など必要ないほどに強大で、そして純粋な怨念は、しかしそれゆえに形を保てなくなればたちどころに分解して消滅する
「脆いクマ、死ねばいいクマ」
「おまえ…………」
稀によくある『別にイベ特攻とか対策装備とかしてないキャラが謎の旗艦スナイプでMVPを攫っていく奴』が発生したということなのだろうが
またなんというか、性能の突出して高い艦ではなくそこそこ高水準な球磨型が持っていくというのがリアリティを感じさせる
欠片一つさえもが結構な負の念を宿した、いわば『深海の呪詛』の物質化した結晶なのだが、それらは海に散らばって消えていく
どこかでまた艦娘の亡骸にとりついて深海棲艦となるかも知れない、鋼片にでもとりついて下級を無数に量産するのかもしれない、もしかすると鬼や姫に拾われて新たな二つ名級個体の発生を招くかもしれない
だがそれらは確定できない未来の可能性の一つに過ぎない、海の自浄作用で溶けて消える事もある筈だ、どうやってか深海棲艦として再び結実しても、破片の寄せ集めにかならないそれが深海怨業鬼より勝る個体にはなるはずがない
それに……
「提督、大漁よ!」
「私がいっちばーん!」
「キヒヒヒッ!集め甲斐があるゼ!」
現在進行形でクッソ拾われてる
「おまえらなぁ……」
「マァ……いいんじゃないかしら?」
呆れたような中枢棲姫の言葉と共に
海域が解放され、血のように染まった赤い海から、通常の青い海へと帰還する
もともと俺たちが展開した領域だが、旗艦撃破で解放という条件が達成されたのだ
それと同時に残っていた『怨念結晶』も連鎖消滅するが、既に拾われていた分の結晶は所持者が死んでいない為か残ったようだ
『怨念結晶』の件は後で考えるとして、ひとまずは
「球磨」
「クマー?」
「後で説教だからな、覚えてろよ?」
「クマーァッ!?」
なぜ逃れられると思ったのか
隊列を乱して一人突撃するなど大問題である、乱戦の最中であればそれはそれ
指揮系統の覚束ないなかで単艦として取りうる作戦の中では一つの『策』として有用なのだろうが、この戦いのようにきっちりと作戦を守り、陣形を組んで戦闘しているなかでは非常に危険な行為である
なので球磨にはきっちりとそれをわかってもらうために神通の特訓(鬼コース)と大淀からの陣形の意義についての講義を受けてもらおう
「鬼!悪魔!姫!」
「そりゃ姉さんに言ってやれ」
あの人現在進行形で鬼だし、元姫だし、それ以前に霊体だけで独立して存在できるとかいうそれこそ悪霊とか悪魔じみたモノだし
「クゥゥ……」
「ついにマすら言えなくなったか……」
なんというかしおれている球磨のアホ毛をそっと撫でつけて、それからゆっくり接近して、抱き上げる
「だが誇れよ、おまえがナンバーワンだ」
お姫様抱っこした球磨をさらに少し持ち上げて、顔を仰向かせ、その唇を奪う
「くまぁ……?くま、くまぁ!」
ついに言語能力を喪失したらしい球磨がジタバタと暴れ始め
「あーーっ!提督がチューしたわ!」
目敏い
その瞬間、空気がかわる
「ほぅ……?詳しく聞かせてもらえますか、提督」
「艦娘と提督はあくまで業務上の関係であって上司と部下でしかないというお話はどこに行ったのですか提督、場合によっては……」
「ブツブツブツブツブツ……」
「熊の挽肉……」
「ウェッ!?」
思わずケンジャキのような声を出して
俺はちらっと味方艦隊の方を見遣ると
そこには殺気立った鬼が屯していた
「ねぇ、提督、とても言いにくいのだけれど……一緒に逃げない?」
「俺もそれ思ってた所だ」
すぐそばにいたせいでその殺気をモロに食らったのだろう中枢棲姫が震える声で呟いて
俺もそれに同じような声で反応する
そして
「「「「確保おおぉっ!」」」」
「うぉぇぁぁぁぁっ!?」
凄まじい勢いでみんなに掴み掛かられた
このあとめちゃくちゃ連行された
「で、帰ってきたのは良いんだが」
「約3日間にわたって鎮守府を開けていたし、駆逐棲姫による拉致って絶対信じてもらえない理由だからな……」
[今でもここにいるのは正直信じられませんし、私だっていない方がいいはずなんですけどね?]
か細い声が脳裏に響く
俺が取り込んだ魂の欠片
その中の一つ、『駆逐棲姫の魂』だ
他にも種々様々な魂を取り込んでいるが、これらは雑多にまとめられ
強引に統制されていた期間が長かったためか、名称や性格的特徴が摩耗して個体の認識すらままならない
おそらく『軽巡洋艦の誰か?』『潜水艦の誰か?』『駆逐艦の誰か?』そして『戦艦 日向?』と思しき魂達だ
「この子達の魂も、いずれは形を取り戻してあげたい所だが……」
[おそらく不可能ですね
できるとしたら……近代化改修の素材か、それとも本体と再同期するか、と言った所です]
[どちらにしても、この子達の名前が分からなきゃ仕方がない、闇雲に建造して良いわけでもないしな]
建造した艦娘本体に反応する可能性もなくはないし、なんなら俺を介して艤装コアに直接シンクロさせる方法も取れるのだが、別の艦にシンクロしてしまえば人格の薄れた魂一つ如き、軽々と塗り潰されてしまうだろう
それは危険が過ぎる
「……まぁ、仕方ない
話を最初に戻そう」
まず、突然鎮守府から消えて
海で深海棲艦と一緒にいるところが見つかった
この時点で反逆者認定されてもおかしくはない
大和が俺と通信していた事
そもそも中枢棲姫が隠海棲艦であること
艦隊戦で共闘していたこと
複数の要因が重なってうやむやにはなっているが、精査されればまずいことには違いない
「そうだな……」
まずは、扶桑さんを呼ぼう
戦艦の中でも比較的思考を柔軟に行うタイプの扶桑さんなら、俺を適当に敵と認識する事も、今までの固定観念に囚われて盲目的に信じようとする事も無いだろう
「となると、中枢棲姫が問題か」
しばらく、秘書艦を扶桑さんに勤めてもらい
その間の実務は全て長門達に丸投げして、俺は一切ノータッチ、鎮守府の運営には関わらない状態にする
その上で営倉なりどこなりに引きこもってしばらく過ごしつつ扶桑さんの情報を元に審議して
その上でどこまでを公表するかを考えて貰えば良いだろう
だが中枢棲姫はうかつに処分することもできない上に戦力としては最早期待できない
どう扱うかといえば、『俺を殺そうとしていた姿』が先端を開いた原因でもあるので、敵対的に見る者も多いだろう
戦力として有力な火力と装甲を持つ大和に中枢棲姫の監視に当たってもらう他にないか
「よし、鎮守府内へ連絡
戦艦 扶桑及び大和、即時招集
急ぎ、執務室まで来られたし」
600話記念番外編は
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裏山とかの話を
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テンプレ転生者(ヘイト)
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ストーリーを進めよう
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戦争が終わった後の話を!
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しぐ……しぐ……