「ふぅ……」
ひとまず茶を飲んで一息ついたあと
「で、なんで提督がいるんですか?」
大井がそう切り出してきた
「……北上に誘われたからだ」
「てーとくー、あたしとイイコトしなーい?」
「「…………」」
「酸素魚雷ブチ込まれたいんですか?」
「いやそんな誘われかたではない」
明らかに顔に青筋を立てている大井に即座に断る
「そだよー?大井っちさー
あたしがそんな鈴谷さんみたいなことすると思ってんのー?」
「鈴谷がかわいそうだろ……」
「……」
「……?」
「鈴谷がかわいそうだろ!」
なぜかわいそうなのか理解できないという顔をした二人に再び同じことを言って
その後考える
鈴谷が『あそばなーい?』なんて言ってくる可能性は、本当にあるものなのだろうか?と
提督に隠れて裏で風俗店でバイトしてる鈴谷は居る(もちろん提督も知っているしあえて放っている)、提督のことを『パパ』と呼ぶ鈴谷は居る、提督から毎年高額の『お年玉』をもらう鈴谷は居る、だが提督を相手に円光を仕掛けるような鈴谷が……居るのだろうか?
いや、居ない(反語)
『すぐにヘタれるせいで実行まで至っていない状況』は頻繁に見るが、その先に至っているような情報はほぼ来ないのだ
「でもさー?鈴谷さん、あんなにエロい体してるのに男漁ってないとかあり得なくない?」
「だからアイツは自称処女だから、事実だとしたら漁ってないだろ!」
「なんでその自称を知っているのか気になりますね」
大井さんのとてつもなく冷たい視線!?
「あの、それはー」
「提督も迫られた事、あるんじゃないの?
ムカつくよねそういうの、ホントにヤる気もないのにイキってさ……
まぁ今更だけど」
なにか北上が怖くなっている
大井も怖いし北上も怖い
この短い時間のうちにハイパーズの二人に一体なにが起こったんだ
「……とにかく、ひと段落したから俺は帰るぞ、もう夜中だし」
ふと時計を見ると、
示されていた時間は午後11時
軽巡寮の門限が午後7時であるから大分ブッチぎっているが、いまさらだろう
靴だけ回収して窓から外に飛び降りればいいだけの話だ
俺のことをずっと視界に収めている川内と……物音で神通あたりは気付くだろうが、
特に追及されて痛いようなことはしていないし、玄関が閉まっているから窓から出るだけの話である
「……言い訳完了」
「適当に頭の中で理論武装されても仕方ないんだけどね……まぁいっか
見つからないように頑張ってねー」
「お前なぁ……まぁ仕方ないか」
安全に撤退するため
俺は可能な限り静かに、かつ素早く走った
「……」
軽巡寮を抜け、整備されたアスファルトの道を走り、密かに鎮守府の裏手に回る
そこには煌々と電燈を灯した工廠と
ひっそりとたたずむいくつかの建造物が存在する
「よし」
建物の影を抜けて
営倉にダイブし、スタイリッシュロールと共に床にダイレクトアタック
「おやすみぃっ!」
もちろん毛布の一枚もない(持ち込んでいない)ニワカ営倉スタイルではなく
本物の営倉謹慎をやっているので当然である
[謹慎中の人間はフラフラ出歩いたりしないと思います]「それは良いんだよそれは」
適当に返しつつ、俺は壁に背中を預けて目を閉じる
明日は……いや、明日こそは
丸一日眠り続けてみせる
「……」
ふわふわとした感触
柔らかく、暖かく
それでいて張りがあって滑らか
この感触は一体……
「……起きなさい、蒼羅」
「!?!」
目を開いた時、視界に飛び込んできたのは青と白絹の衣、俺が目覚めたのは
姉さんの太腿の上だった
「ね、姉さん?」
「そう、貴方の姉よ、妻でもあるけれど」
そっと左手を見せてくる姉さん
「そっか、……違法では?」
脳死で受け入れそうになって
慌てて聞き返す
しかし、姉さんは表情を変えず
「大丈夫よ、艦娘には人権がなく、同時に日本国憲法・刑法・民法全てが適用されないわ
故に婚姻に於ける近親婚防止のための三親等以下の親族に対する結婚禁止の規制にはかからない」
「…………」
「そんな事、私だって調べました」
突如現れた長々しい文章を寝惚けた頭で必死に解釈した結果、『姉さんが艦娘だから特例的に問題ない』という理解に落ち着いた俺は
ひとまず法に懸かる可能性がなくなった事を喜んだ
「そら、わかっているかしら?
今の私たちは夫婦であり、同時に姉弟
本来両立できない二つの関係を同時に持っているの、他の艦娘たちとは違うのよ」
膝枕している俺の頭を撫でながら
姉さんが囁いてくる
「そら、愛しているわ
これまでも、これからも
生まれた時から死ぬ時まで、ずっと愛し続けているわ」
それは妄執にすら近いほどに濃度を増した毒性の告白、未だに覚醒していない脳には劇物に近いほどの威力を発揮する
「他の艦娘がいる所では言えなくても
私は貴方の事をずっと、ずっと愛している、貴方が仮に別の女を選んだとしても」
膝に乗った俺の頭に伸し掛かるように前に上体を傾ける姉さん
情熱的なのは良いが当たってる
(なにがとは言わない)
「私は他の子のように寛容ではないの」
「それはどういう意味で……?」
「妾や愛人を許せるほど器量がないと言っているの、側室は3人までにしなさい」
「ちょっと!姉さん!?」
600話記念番外編は
-
過去編軍学校
-
過去編深海勢
-
裏山とかの話を
-
テンプレ転生者(ヘイト)
-
ストーリーを進めよう
-
戦争が終わった後の話を!
-
しぐ……しぐ……