「戦闘終了、総員帰還してくれ
デブリーフィングと補給、艤装の洗浄と掃除、メンテナンスを行う
……みんな、お疲れ様」
「「「お疲れ様ーっ!」」」
「「お疲れ様でした」」
「お疲れクマ」
返事はバラバラになってしまったな……戦闘中はあんなにうまく連携していたのに
なんてな、冗談だ冗談
戦闘中と平時は別に考えて当然だよ
「……甲崎鎮守府の艦娘も、艤装のメンテナンスを行いますか?
現地改修型艤装でもなければ修理もメンテもできますが、どうしますか?」
「いや、流石にそこまでというのは良くない、ウチは各自自己修理で済ませているし
わざわざそちらの手を煩わせはしないよ」
いわゆる、『艤装と向き合う』ためによく使われる手法として、艦娘に自分の艤装を修理させるという方法がある
靴のすり減り方で重心の偏りを知るように、艤装の傷つき方でどこが被弾しやすいかを知る
結果として自分のどこが被弾しやすいか、またいかにして回避すれば良いか、攻撃の軌道はどうか、などなどの細かな情報を知ることができる
……というお題目なのだが、所詮お題目なのだから効果も眉唾物だ
そもそも、艤装のダメージなんてのは一点に収束する事はほとんどない
複数のダメージが蓄積して服が破れる、装甲が割れる事はあっても特定1パーツのみが集中的に破壊されるという事はないのだ
「わかりました、それでは演習結果と詳報を取って参ります」「はははっ、そこまでかしこまる必要はないよ、どれ、君は艤装の修理で忙しいだろう?私が詳報を取ってこよう」
甲崎提督が席を立って
先んじて出て行ってしまった、こうなると後を追うのは立場的に難しい
俺は宣言通りと艤装修理のため、沖津丸に置いてある工具を取りに向かった
「……済まないなぁ」
神風の艤装を撫でる
古い艤装だ、淡々と修理を続けてきた結果、オリジナルのパーツがもはや存在しないほどになった、古い艤装だ
「無理を強いてしまったね」
新しく刻まれたクラックを指でなぞる
装甲に走ったひび割れは、そう深いわけでもないが、明確にそこに刻まれていた
「これは交換、かな」
装甲板を外した内部にまでは歪みもひび割れも到達してはいないことを確認した俺は
そのままゆっくりと装甲板を外して、それを新しい装甲板と交換する
「君が気に入ってくれるといいが」
新しい装甲板は現地改修型の超ジュラルミンとクロモリ鋼を6層に重ねた厚さ20ミリの鉄板である、いつか使おうと思って置いてあったそれを、使うことなどないただの展示品に過ぎないはずのそれを、装着する
「よし、これでいい」
最後に心なしか、内側から光っているように見える艤装を撫でて、次に移る
「よしよし、遅くなったね」
次に手をかけた艤装は千代田のそれ
演習なので実際に破損しているわけではないが、どうしてもついてしまう稼働による擦り傷の跡や着弾によるペイントを丁寧に落として
「……はい、綺麗になったね」
極限の環境においては一気に修理してしまうこともある、だがそれは礼儀もクソもない極限環境においての話だ
艤装は武器であり、盾であり、鎧であり、制服の一部でもある
それを扱うのは女物の服を扱うのと同じだ
丁寧に扱ってやらないとすぐに艤装がヘソを曲げてしまう、いや、別に動かなくなるわけじゃないのだが、若干の不和を起こしてしまう
大きな問題があるわけではないが、少しでも不調があるというのは見逃しがたい
抱き込んだ艤装を下ろして、ポンと撫でる
今回の演習ではあまり活躍に恵まれなかったが、この艤装はまだまだ可能性を秘めている
次がある艤装だ、気にすることはない
「よくがんばった」
次に手を掛けるのは千歳の艤装
千代田と同じタイプの水母艤装だが、わずかに違う構造があり、並べないと見分けが難しいことで有名な艤装だ
「……三級艤装技師の試験に出てきたくらいだからな……」
若干の恨みがある艤装、と言えなくもないがそれはそれ、仕事に私事を持ち込んではいけないからな
絡繰箱の中の糸がほつれていたり、天板がペイントの影響で円滑に動かなくなっていたりと厄介だが、そう言った細かい作業は俺の得意とするところ
練度の犠牲もそう多くはない
「……よし」
天板についていたペイントの跡を擦り取って、塗装をやり直す
そう難しい事ではないが、繊細な作業なので根気が要求される
「お疲れ様」
次は球磨の艤装かな
「司令官?何してくるの?」
「陽炎か、もう反省会は終わったのか?」
「んーん、終わってない、でも司令官がいないと片付かなそうな案件が出てきたから、司令官を探してたのよ」
「俺がいないと?……わかった、すぐに向かうよ」
「ん、一緒にいきましょ」
俺は陽炎と連れ立って、みんなの元へ向かった
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