戦いたくなんてなかったんや   作:魚介(改)貧弱卿

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久々の本業(2)

「俺がいなきゃ解決できない事、ねぇ……?」

「ほらほら、早く!」

 

陽炎に急かされて進むと、

会議室の方が何やら騒がしい

 

「……は?」

 

部屋にたどり着いた俺は、その瞬間に固まった、何故なら……

 

「おいおい、どういう事だ?

なぜゴトランドが沖津丸に?」

 

「それは……」

「神巫提督!貴方に私の艤装の整備、お願いしたいの」

「だからウチの艦娘の艤装の整備中で……提督!?」

 

神風がこっちに気付いて素っ頓狂な声を上げる中、俺はゴトランドに声をかけた

 

「ゴトランドの艤装は日本では珍しいスウェーデン製、あまり上等にできるとは思えないが、それでもいいかい?」

「ええ!もちろんよ

いえ、その……整備環境が悪いわけではないのよ?甲崎提督はとてもよくしてくださっているわ、でも日本の整備妖精はどうも型式が違う私の艤装が苦手なのよね」

 

焦っているような台詞をまくし立てるゴトランドを片手で制して

「もちろんわかっている、引き受けるよ……その艤装はどこだい?」

 

「持ってきているわ、こっちにおいてあるのだけれど……」「ちょっと待ちなさいよ!」

 

俺の手を引くゴトランドに陽炎が突っ掛かった

 

「あんたさっきから聞いてればなにを勝手なことを言っているの!自分の艤装なんだから自分で修理くらいしなさいよ!いくら規格が違うからって人任せはおかしいんじゃないの!?」

 

「よせ陽炎、大人気ないぞ、それに艤装の一つや二つ、増えたところで大して変わらない

構うことでもないんだし、別にいいだろう」

 

整備するのは俺だし、本格的な修理でもないのだから別に時間が取られるわけはない

多少の清掃や装備の交換なら、対して費用が掛かるようなこともないし

万が一そこまでの費用がかかるなら、それは容赦なく甲崎鎮守府に請求させてもらうというだけだ、別段構うようなことではない

 

「司令官!器の大きいのはいいけれど、断るのも必要よ!」

「現状断る必要がないからな、それならゴトランドもお困りの様子だし

困っている子がいるなら手を差し伸べようとするのは、間違っているのかい?」

「……っ!」

 

ぐぬぬ、とでも言いそうな表情で後ずさる陽炎を尻目に、ゴトランドの方へ向かう

 

「さて、その艤装を見せておくれ

というか運んでおくれ」

「わかりました」

 

重い音を立てて持ち上がる艤装を眺めて、その状態を観察する

ゴトランドは比較的新しい『外国産』の括りに入る艦娘、日本での建造例はほとんどないはずだ

 

「はい、神巫提督!」

 

ゴトランドが装備した艤装を見る

稼働状態の様子は特段日本の艦娘と変わりはないようだ

 

「おーけー、状態はわかりました

修理を行うからそのまま持ってきてくれ」

「了解」

 

そのままゴトランドを案内して、修理設備の方に艤装を置いてもらう

「よし、それじゃあ始めるよ」

 

どこの誰の艤装だって根本は同じ

ネジや溶接やの固定方法の違いはあれど、鉄板を表層に、空洞と緩衝材を入れて、内側に電子装備や配線、最後にコア

 

基本となる骨子は変わらない

 

となれば……答えは一つぅ……

「はい、終了です」

 

表面を磨き上げて、ウッドデッキを掃除して、配線の引っ掛かりを外して、煤やらなにやらで汚れてしまっていた基板を掃除して

あとはまぁ動作確認とかも含めた試運転等だ

 

「随分と手際がいいわね、本当に慣れていないの?」「あぁ、ユニットメイク見ながらがやっとだよ、すまないね」

 

最後に表面をそっと拭って

それに手を乗せる

 

「お疲れ様、ゴトランド」

「えぇ……あ、艤装に?」

 

反射的に返事をしてから、やや間を開けて問い返すゴトランド

 

「その通りだ、画像も随分酷使されているようだし、ねぎらいの言葉くらいは掛けるさ

……お疲れ様、ゴトランド」

「ありがとう、神巫提督」

 

ピカピカになった艤装を抱えて

こちらに頭を下げるゴトランド

 

「よしてくれ、別にそう畏るようなことはしていないはずだ、

ただ、後で費用は請求するから覚えておいておくれ?」「わかったわ」

 

こうしてゴトランドは甲崎鎮守府に戻り、俺たちも帰還する運びとなった

 

 

「彼に言わなくてよかったのかな?」

「言ってどうにかなる話じゃないわよ、朴念仁……まぁいいわ、どうせ私のことなんて覚えてないものね」

 

ゴトランドは思い出す

共に桜を眺め、同じ釜の飯を食い

そして共に勉学に取り組んだ彼のことを

 

そしてその上で、自らの名を明かすことを拒んだのだ、アポもなしに最初から沖津丸に突入してきたのは蒼羅と話すためのカモフラージュ

敵にとっても強力なプロテクトと感じるであろう電子防壁を実装しているゴトランドなら、誰何のための無線も識別信号もつぶすことが可能だった

 

全ては彼と過ごす時間のためだ

だがダメだった

自分では話すことなどできなかったと

自嘲するように笑う

 

「所詮私は最後の一歩を踏み出せないサブヒロイン……配属も違う場所になってしまったし、演習相手の幼馴染役がせいぜいね」

 

心の中に蓋をして

自分の想いを閉じ込める

 

そうしなければ、今にでも飛び出してしまいそうだから

 

「手間をかけさせてしまったわね?」

「そうでもないさ、ゴトランド君の彼のためだし、私としても彼には恩がある

異動申請の一枚や二枚くらいなら書いてやるのも吝かではないな」

 

「……意地悪」

 

ヒロインレースにはだいぶ遅れてしまった、多分もう彼の周りにはたくさん女の子が付いている、でも

 

「最後の一瞬で、掠め取るか」

 

それくらいは、出来るはず

待っててね、神巫君

600話記念番外編は

  • 過去編軍学校
  • 過去編深海勢
  • 裏山とかの話を
  • テンプレ転生者(ヘイト)
  • ストーリーを進めよう
  • 戦争が終わった後の話を!
  • しぐ……しぐ……
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