「最上」
「なに?」
「あの子のことで話があるんだ」
最上に青葉の鎮守府案内を任せて、そのあたりの仕事を終えた上で
今は青葉を最上型の部屋に招いて『勉強会』をやっている
というタイミングだ
最上はさりげなく退室して執務室に来ていた
「あの子?青葉だよね」
「あぁ、あの子を見ていて、なにか思ったことはあるか?」
「ん、普通に考えてこのタイミングでくるのはおかしい、仕事が終わった後での報酬ならともかく、『前報酬に青葉・完了報酬に衣笠』なんて前代未聞すぎるよ」
「その通りだな」
「あと」
俺の相槌に続いて、最上が言葉を紡ぐ
「なにか別の機関で教育を受けているみたいだね、素人を装っていたけれど
本当に素人なら砲雷撃戦と航空戦のテスト成績が+-5点で綺麗に同じなんてありえないし、初めて適合してから3回目の航行にしてはあの航跡は綺麗すぎるよ
あと歩幅も綺麗に75センチだし、さりげなく銃器の組み立てとかの指示も出して見たけど、完全分解状態から図面もなしに組み立てるなんて普通に現状の海軍では習わない、大本営にいたなら尚更だよ」
うわ、そんな事までやったのか
「ボクの見た限りでは陸軍兵士か、艤装を使わない対陸戦用特殊部隊相応の教育を受けているね、艦娘の中では相当マニアックじゃなきゃ一般的な銃器なんて触らないし
……あ、そうそう」
「ん?」
「提督と早く『そういった仲』になりたいってさ」
「は??」
一瞬宇宙猫を晒して
そこから思考を立て直す
「提督に惚れたって言ってたよ
……まぁ、普通に考えてハニートラップ狙いだよね
まさか真に受けてないよね?」
「……いや、そこまで直接的に言ってくると思っていなかっただけだ
真に受けてやるほど俺は若くないし愚かでもない……ただ、そこまでバカな物言いをするとはね、初期の榛名みたいだ」
まぁ初期の榛名はもっと直接的に
……性的な意味での接触を仕掛けて来たが
あの子はまぁ、素直すぎて直情径行しかできなかったので仕方がないだろう
鹿島や鈴谷や陸奥のような振る舞いを覚えていたら逆に困り物だ
「榛名さんってそんなこと言ってたんだ
……ねぇ、ボクもそういうこと、思ってるって言ったら、どう思う?
……なんてね、ボクはどうせ女の子っぽくないし、あんなに短いスカート履いたり布切り詰めたりできる気がしないよ」
「逆にそれをアプローチの一環として考えられるお前がすごいよ、あとスカート丈はお前も短いだろ」
「ボクはまだ健全な丈だと思うよ?
吹雪やサラトガさんみたいに伸ばしてなお立ってるだけでパンチラする人とは違うから」
言いがかりもいいところなのだが
これ以上の話は話に出た二人の沽券にも関わることになると判断した俺は
話を強引に逸らした
「まぁいいや、本当にその
俺に対して好意的であるのなら、それは別の人に負ける感情であるべきだから、できるだけ取っておけ
どうせ俺は……鎮守府の8割以上の艦娘と重婚してるどうしようもないほどに擁護不可能なクソ提督様だからな」
挙句に味覚・嗅覚の喪失もほとんど治っていないし、間宮さんと鳳翔さん以外の料理ではほぼ味を感じられないというのは致命的だろう
なぜそうなのかはわからないが、あの二人の料理だけは(体調にもよるが)多少は味がわかるのだが、それはさておいて
嫁の手料理でさえ『味は砂利と変わらない』のだ、どんな美酒を飲んでも
どんなに丹精込めて拵えたものでもセブンで300円くらいで売っているアルコール合成液や保存料アンド人工調味料弁当と変わらないという評価しかできない夫など、どこに甲斐性があろうか
「『いくら飲んでも酔わない。食い物は舌の上で灰となる。どれだけ美しい女を抱いても心は癒やされない。我々は呪われたのだ。欲望が満たされることがなくなった。欲に駆られた末の報いだ』とでも言えばいいのか」
たしかにこんな世界に来てまで艦娘という存在を求め、その存在の上にあぐらを掻いて
魂を擦り砕いて費やし、挙げ句の果てに
「……提督」
自嘲気味に笑った俺の肩に、片手が乗せられる
「提督にカリブの海賊は似合わない
今は西暦2000年代で、ここは日本だよ
それに提督は海軍の称号だ、どっちかというと敵同士」
「そりゃあそうだな」
「だからほら、呪われているだなんて悲しいこと言わないでよ。
辛いのならボク達がいるから、自分で立てなくてもいい、ボク達が支えてあげるよ」
そっと、最上が俺の首に腕を回して
身を寄せてくる
「みんなで支えればどんな重荷だって平気だよ……落ち着いて、話を戻そう」
「そうだな、有耶無耶にはしたくない」
青葉の態度、行動に焦点を戻して
再び二人で話し始める
600話記念番外編は
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テンプレ転生者(ヘイト)
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ストーリーを進めよう
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戦争が終わった後の話を!
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しぐ……しぐ……