「さて、青葉についての話はこれで終わり、続きは明日にしよう?」
「わかった……あ、もう11:00か
ごめんよ、こんな遅くまで」
最上に頭を下げて謝ると、最上自身に止められる
「別に謝らなくていいよ、そんなに辛いことしてるわけでもないしね
それより、提督もちゃんと寝なよ?」
「わかっているさ、大丈夫だ」
軽く片手を振って返事をして
俺も執務室の電灯を消した
「……」
昼から始まった青葉着任騒動もこれでひと段落
あとは彼女を鎮守府になじませつつ懐柔するなり飼い殺すなり、といったところだろう
「さて」
ちょうど、仕事を終わらせてなにをするかと考えを巡らせていたその時、自分の携帯電話から呼び出し音が鳴る
「……ん」
画面を起動してみてみれば
そこにあったのは
だいぶ前から連絡が途絶していた元同期の一人、艦娘科の卒業生、後藤田藍の名前
同期グループから個人のチャット枠にわざわざ呼んでまでの通話に驚いたが、慌てずに通話に応じる
「はい、こちら創海鎮守府
提督のプライベート回線となっております」
あえて茶化したような物言いをして
相手の反応を量る
〈そういうのはいらない、私、後藤田だよ、覚えてる?〉
「もちろんだよ、フロイライン」
〈……そういうの、いらないっての
そうそう、最近こっちに美味しいスイーツ屋が出来たんだ、よければ二人であんみつでも食べに行かない?〉
「おや、レディからお茶のお誘いとはありがたい事だ」
〈だからその気持ち悪い浪速節やめなっての〉
唐突に本題に入った相手は
そのまま具体的な話や時間に注文をつける事なく電話を切った
これはつまり、
「川内」
「あい」
「盗聴」
「り」
最小限の音量で行われたたった二往復の会話
ここまでたったの12文字であるが、それだけあれば十二分、
つまりは盗聴や監視が仕掛けられていないかを探せ、という事である
姿を消した川内やその2分後に再び現れ
盗聴や監視の類は見つけられなかったことを教えてくれた
もし、これで見られていたら敵は相当な手練れだ
「……よし」
一瞬思い出すのに手間取ったが
スイーツ屋に数年あっていない男を誘うようなことがあるわけがない
あの連絡は馬鹿正直に捉えるようなものではない、暗号だ
『あんみつでも食べに行こう』
つまり和菓子でも何でもなく、『内密に話すことがある』というわけだ
「一応電波盗聴の可能性も考えて固定電話から掛けるか」
携帯電話はまだ周波数帯の変調や暗号化やと対策を立ててもそれを上回る輩が少なくない
安全を考えるのなら特別な改修を施した対策済みの固定電話からの方が安全だろう
〈はいはい、やっと掛けてきたか〉
ワンコールで応じたのは、先ほどと同じ声
そして
〈行くのは1945年創業の歴史あるスイーツ屋でね、大本営のそばだからそこで集合でいい?〉
19:45、大本営正門?
「大本営にわざわざ?」
〈大丈夫だって、そんくらいじゃ怒られないよ〉
「本当に
〈それじゃーねー〉
電話はプチッという音と共に回線が切れて終了
「さて、川内」
「ん?」
椅子を立った俺は、そのまま川内を連れて部屋を出る
「一緒に来い、外で一仕事ありそうだ」
「わかった、なにするの?」
ぴょこぴょこと後ろをついてくる川内に振り返って
「話を聞く、内密なものだ
中身がないってわけじゃなかろうし
どっかのセーフティハウスで話すことになる」
「わかった」
そのまま川内を連れて歩き出した
3時間後
大本営の正門……から少し離れた駐車場の中の車で待機していると、
コンコンと窓が叩かれた
「やっほ、ひさす」
かるく声をかけられて、反射的に目をやった先には随分と珍しい姿があった
「あれ〜?わかんない?
私だよ、後藤田」
「いやわかるさ、わかるけど……」
その声は間違いなく電話で聞いた声そのもの
「とりあえず乗せてってよ、道は教えるからさ」
「わかった、じゃあ川内は助手席交代、一個後ろ行ってくれ」
「えぇ〜?」
「えーじゃない」
嫌そうな声を上げる瑞鶴をなだめて後ろに回して
「ん、じゃー行こっか」
「どっち方向?」
気の抜けた指示と返事を重ねて
俺達は三人で車を走らせた
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