戦いたくなんてなかったんや   作:魚介(改)貧弱卿

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後藤田 蘭

「んで、紹介して欲しいんだけど、この人だれ?」

 

「川内……まぁいいか、コイツは俺の同期の『卒業生』で、後藤田 蘭(ゴトウダ ラン)

適性は軽巡洋艦……であってるよな?」

 

「うんそうだよー、ごめんね川内ちゃん

アンタの提督とっちゃってさ

……ご紹介に預かりました、防……いえ、後藤田と申します、以後お見知り置きを」

 

「突然かしこまられてももう遅いよ

で、提督とはどんな関係なの?」

「蒼羅くんとは?……んーと、愛人?」「待て」

 

指を空に指してとてつもないことを言い出したバカにツッコミを入れて

その言動を制止する

 

しかし、時すでに遅しと言うべきか

俺が言葉を遮ったときには川内は炯々と瞳を光らせてこちらに人殺しかなにかのような視線を向けてきていた

 

「後藤田とは昔、同じ班に長く居てな

必然的にペア行動もあったし、技師科に流れた後も艦娘科のコイツと接触する機会があったんだ、まぁ……(かげろう)とか明奈(あきつ丸)達の同僚だよ」

「へぇ……それで?」

 

俺が正確な情報を伝えてあげると

なにやら納得していなさそうな声で返事をする川内、どうしてこうなったのか

 

「いいじゃーん、進級するときにもらったアレ、まだ持ってるんだからね?」

「うわ……あんなのまだ持ってたのかお前」

 

「アレって?」

 

わざとらしくウインクする後藤田に一歩引く演技をしつつ、川内の問いに答える

 

「アレってのはな」

「アレってのはね」

 

「昔材料が余って暇なときに許可とって作った、俺お手製の小物の事」

「昔同じ班のみんなが貰った鉄のロザリオと銃弾のペンダントだよ」

 

女子には十字架の首飾り(クロスネックレス)

野郎には真鍮製の銃弾ペンダントである

それぞれ鋼材と弾薬の素材を使って作ったもので、同じものはそれぞれ二つずつしかない

クラス全員とかは流石に作れる余地がなかったし、そこまでしてやるような義理もなかったからな

 

「ロザリオを人から貰うって、婚約の意味があるんだけどなぁ〜?」

「いやおかしい、そんなのは聞いたことがない、そもそも別の形でもいいと言ったはずだ」

 

「そりゃあ、ねぇ?」

 

ニヤニヤと笑う後藤田を敵意のこもった目で見つめる川内

 

流石にヒューマンスレイヤー=サンになることはないと思うのだが、大丈夫だろうか?

 

「その話はもう終わりにして

本題に入りましょう」

 

川内が話を強引に切って、続きを促した

 

「あぁ、そうだね

えっとぉ……纏めたから」

 

渡されたのは二つ折りにされたレポート用紙が数枚、そこに書かれていたのは

 

「こりゃあ」

「口に出すなよ」

 

そっと、聞こえるギリギリの小声で囁かれる

 

「どこで聞かれているかもわからないんだから、いくら流してても危ないものは危ないし」

 

「おう」

 

しばらくそのまま車を走らせながら

二つ折りのレポート用紙を読む

 

そのまま川内と俺との以心伝心で適当に世間話をしているように見せかけながら

内容のない話で音を誤魔化し

 

そのレポートの中身を読んで驚愕……というか、当然の事実を認識する

 

[青葉さんは記憶の消されていないブラック鎮守府出身の転属艦娘、それも過剰適合(オーバードーズ)ですか]

[青葉本体の人格ってことはつまり、常時バックアップが取られていると言う事だからな、記憶を消したくても消せなかったんだろうよ]

 

[それで提督を『見定める』つもりなのか、それとも『殺す』つもりなのか

問題はそこだけですね、やっぱり]

[だな、今のところ敵対的なアクションはないが、イベントに合わせてなにかの行動を起こすだろう

予測できるところでは暗殺か]

 

頭の中の駆逐棲姫と会話して、思考を整理する

 

「ありがとう」「ん、次の交差点左ね」

 

「マジ?もうちょい早く言ってくれ!」

 

走りながら並行作業で読み終わって

その直後にすぐ前の交差点で曲がれと言われ、慌ててウインカーをつけて車を寄せる

 

「あっぶな……」

「ごめんごめん、ちょっとぼーっとしてた

あ、そこの駐車場入って」

「了解」

 

今度はまだ余裕のある指示が出たので、落ち着いて従う

 

「急ぐぞ川内」

「ん」「あたしは?」

「お前もだ」

 

駐車場に車を止めて、そのあと即座に降りる

 

後藤田と川内は迷わずに複雑なルートを進み、俺はその後ろをついていく

 

「こっから先はあたしの車でいくよ」

 

後藤田の赤いカローラの前に着く

「あたし運転するから、川内と提督は後ろね」

「わかった」「うん」

 

助手席のドアの向こうには

 

「お待たせ」「待っていましたよー」

 

フレッチャーが座っていた

 

「フレッチャー、この二人があたしの同期とその御付きの子だよ」

「はい、はじめまして

フレッチャー級ネームシップ、フレッチャーと申します」

「はじめまして、日本海軍所属の第1407鎮守府統括官、神巫蒼羅大佐だ」

「創海鎮守府所属、軽巡洋艦川内だよ」

 

「挨拶もそこそこにね」

 

アトランタに急かされて、俺達はさっさと後部座席に乗り込んだ

「それじゃあ出発進行」

 

車を乗り換えて、運転手も変わって

別の出口から出ていけば、車を見張っていても無意味だ

 

電子的な監視システムを用いていればその限りではないが、人は無意識に対象を色や形のパターンで覚える、車を変えて運転手も変われば追跡を撒くには十分だろう

 

その一時間後、俺達を乗せた車は第087鎮守府、通称を裏山鎮守府へと到着していた

 

「はーい、ここが私の鎮守府

ついでにここでは私のことはアトランタって呼んでね」

「は?」

 

川内が驚愕の声を溢し

 

ゼロ適合(ノンフォート)、艤装に一切適合せず、しかし艤装の起動だけは成功した例だよ

過剰適合よりよほど珍しい、あたしはその一人なんだ」

 

それに答えるように、後藤田蘭=アトランタは自嘲じみた笑顔を浮かべた

 

「……適性はしっかりあったはずなんだがな」

「日本のはね、珍しい米国の艤装だからちょっと規格が違ったんじゃない?」

 

黒い髪を『アトランタ』同様の髪型に揃えて見せる後藤田

 

「どう?似合う?」

「……わりと似合ってる」

 

苦々しい声で答えると、川内は俺の背中を突いてくる

 

「そんな声で言う事じゃないでしょ、バカ」

「仕方ないだろこいつ、テンション上げてまで言うような空気じゃないんだし」

 

小声で言い返していると

突如始まったコントに微妙な表情になりながらも車を降りるアトランタ

 

「それじゃあ、提督に挨拶しにいくよ

二人ともついてきて」




後藤=アト(ウ)
蘭=ラン
田=タ

600話記念番外編は

  • 過去編軍学校
  • 過去編深海勢
  • 裏山とかの話を
  • テンプレ転生者(ヘイト)
  • ストーリーを進めよう
  • 戦争が終わった後の話を!
  • しぐ……しぐ……
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