戦いたくなんてなかったんや   作:魚介(改)貧弱卿

592 / 649
昔話に花の咲く

「はい、それじゃあ挨拶に……」

「ちょっと待て、俺はお前に呼ばれたから来たってだけなんだが」

 

ぐいっと身を寄せて、アトランタに目を合わせる

 

「……慌てちゃいけないよ、ウチの提督がアンタに情報をよこしたんだし、詳しい事は情報漏洩防止の観点からこっちには共有されていないしね」

 

「……なるほど、さっきの青葉についてのレポートはまだ序盤ってことか」

「そそ、最低限知っとくべき情報って感じかな、漏らしても問題ないような」

 

「そうだぞ、ちょっとは落ち着け

まぁまずはアイスティーでも」

「御託は結構だ」

 

突如として別方向からかけられた声に冷徹に返しつつ、その聞き覚えのある声の主に視線を向ける

 

「よっ、久しぶり」

「なっ……」

 

声の発された位置にいたのは

 

「日高……!」

「おう、巫女さん」

 

提督科卒業生の同期、日高 仁(ヒダカ ヒトシ)だった

 

「お前が提督になったって聞いた時は驚いたぜ?」

「お前……いつ鎮守府に着任したんだよ!」

 

「まぁまぁまぁ、落ち着いてください二人とも、まずはお互いに挨拶でしょう?」

 

瞬間でヒートアップした二人の間に

フレッチャーが割り込んでくる

 

「……仕方ないか

創海鎮守府の提督、神巫蒼羅、階級は大佐だ」

「裏山鎮守府の提督、日高仁、階級大佐」

 

奇しくもお互いに同階級か

 

「フレッチャーお前ワイン持ってこい、安いのが2本くらい俺の部屋の棚にあったはずだ」

「え?提督!まだ勤務時間中ですよ!」

「フレッチャー、諦めな

こうなった提督はいう事を聞かないでしょ?」

 

唐突に始まったコントに、どうして良いかと対応を考えていると

仁が急に肩をつかんでくる

 

「お前との再会を祝して、一杯やろうぜ!」

「……俺は飲まないと言ったはずだ」

 

「代用品だから厳密にゃ酒じゃねえ!

気分なんだから飲めよな!」

「……おいアトランタ、このアルハラ野郎は本当にお前の上官でここの提督で俺の同期なのか?」

「……認めたくないけど、結構いつもの提督だよ」

 

ガタガタと頭を揺らされながらアトランタに問いかけると、呆れ声のアトランタから返事が来た

のだが、どうやらこれがいつものように行われている様子で

 

「お前、顔面75点だから許される行為だと思えよ……!」

「人の顔に点数つける奴に言われたくねぇよ」

 

俺の警告に至極真っ当な返事をぶつけてきて、お互いにバシバシと叩き合いながら笑い合う

 

「……お前、まだ持ってんのか?」

「?なんだよ」

 

「アレだよ」

 

アトランタが取り出したクロスネックレスを指で示すと、仁は『あぁ!』とでも言わん気な表情になる

 

「悪い!無くしたわ!」

「……無くしたって……まぁいっか、そもそもまだ持ってると思ってなかったし」

 

「なんか軽いんじゃない?提督にとってあのネックレスってそんなに適当な物なの?」

「適当に作った代物だからな、あんまり動向を気にしていなかった」

 

「ふーん……」

「話を戻そう、アトランタの言うことには…ウチに異動してきた青葉にはなにやら複雑な事情やら思惑やらが背負わされているそうじゃないか」

 

「そうだな、それについては会議室で

こっちに来てくれ」「わかった」

 

手招きに従って、会議室へと移動する

 

「……早速だが、アトランタに渡した資料は見てくれたか?」

「あぁ、青葉の出自についてだったな

アレも過剰適合の青葉で、そのうえブラック鎮守府出身だ、とあったが」

「その通りだ、だが……」

 

「あぁ、大本営で行われた青葉のメンタルテストの結果は『問題なし』

流石にこれはありえないね」

「そうだ」

 

そう、レポートに書かれていたメンタルテストの結果は、白

何回も確認したとも注釈されていたそれを見た時、俺も目を疑った

なぜ正常と判定されるのか、と

 

所属していた鎮守府は大湊警備府附属第四鎮守府で、ブラック鎮守府としての形態は典型的なものだ、過剰な出撃と損害を無視した大破進撃を繰り返すパワー信者の、よく言えば熱血、悪く言えば現実を見ない輩だ

 

『やればできる』『諦めるな』『絶対なんとかなる』『俺たちなら出来る』と繰り返しては大破出撃を繰り返す提督だったという

……大本営からきた監査の目の前でもその『愛のある指導』を徹底していたらしいから筋金入りだ

 

結局、ついていけなくなった駆逐艦や体が追いつかないほどのダメージを負ったまま出撃を繰り返した大型艦が出先で力尽きたり遠征中に沈んだり艤装だけを残して陸で逝ったりという事件があって、そこから告発につながったらしいのだが

 

そんな状況で高性能なマルチロールファイター艦種の重巡である青葉がどう正気を保てるというのか

当該鎮守府の大淀による記録では出撃回数もそこそこに上がっていたはずだ

 

「本当にそうであれば他艦娘の轟沈や無茶な出撃に対して、まるで疑問や反感を持つ事もなかった、ということになって、それはつまり人格が破綻しているとしか言いようがないんだが……」

「『元が兵器である故に酷使・破壊されることに頓着しない』だっけ?大本営の見解は

兵器派は大喜びだろうけどな」

 

「なにせ艦娘に感情を認めない連中だ、自分達に賛同する『正しい』艦娘が出来た、と喜ぶんだろうな」

「全く胸糞悪い話だ……」

 

吐き捨てるように言葉を切って

窓の外へと視線を移す日高

 

しかし

「綺麗事だけの世の中でもなし、そう言った無茶な出撃も時に必要になることもあるだろうさ、だがあまりにも常軌を逸しているからには、それなりの理由が必要になる

青葉自身に、な」

 

「……」

「……」

 

結局のところは、手詰まりだ

現状をどうこうする事もできないし、なにか別の手を探るべきか

 

しかし、青葉が来た本来の理由は鎮守府の一般開放任務の前報酬

いつまでもその任務を無視して青葉に拘っているわけにはいかない

青葉を受け取った以上は鎮守府一般開放自体はやらねばならないのだから

 

「……そうだ、他の青葉に心理テストを行うのはどうだ?」

「無理だね、そもそも自分じゃなくて送られてきた青葉の精神構造を見定めるための心理テストとバレればその時点で魂の方の『青葉』にも伝わるし、それはつまり送られてきた青葉に伝わるってこと、それに例外こそあれど」

 

「はい、魂側の人格『青葉』は一般艦娘の青葉に対して絶対的な優先権を持ちます

その気になれば行動を操るくらいわけはないかと」

 

日高の提案に

アトランタと帰ってきたフレッチャーが待ったをかける

 

「簡単には行かないか……」

 

かつて将棋の勝負で魂人格である脳内の『瑞鶴』(現・深海鶴棲姫)が横須賀第三鎮守府で一ノ瀬提督のところの瑞鶴の思考を読みとって将棋を指していた時のように、魂人格は艦娘の思考をピーピングできる

青葉もそれは同じなはずだ

 

うかつに青葉のメンタルテストを行なって『青葉』の人格を測るというわけにはいかない

まぁなんにせよ、とにかく一度本音を引き出す他にないだろう

600話記念番外編は

  • 過去編軍学校
  • 過去編深海勢
  • 裏山とかの話を
  • テンプレ転生者(ヘイト)
  • ストーリーを進めよう
  • 戦争が終わった後の話を!
  • しぐ……しぐ……
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。