戦いたくなんてなかったんや   作:魚介(改)貧弱卿

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自由に、あたしは

「……おやすみ」

 

[おやすみなさい、提督さん]

 

返事を期待するわけでもなく、ただ呟いただけの一言に、駆逐棲姫が声を返した

 

「おまえもな」

 

これを今日最後の言葉として

俺は目を閉じて、翌朝に備えた

 

最近は敵もあまり活発ではないとはいえ、動き自体はある

姫集団が再び出てきて中枢棲姫を奪還しようとする可能性も否定できないし

青葉達の件もある

 

もうじき鎮守府の一般開放の日だ

広告もすでに打たれているし、今更延期には出来ない

 

「……」

 

目を閉じたまま、未来をイメージする

こうなれば良い

というだけでなく、未来を予測する

 

「……」

 

青葉と深海棲艦の連中が同時に襲撃してきたとしても戦艦数人でタコ殴りにするだけだし、最悪の場合は青葉ごと爆砕すれば被害も最小限に抑えられる

 

……いや青葉ごとはさすがに最終手段だ、普通に艤装を強奪して分解してしまえばいいだけだし

躊躇なく艦娘を沈めるように指示する提督なんぞクソ喰らえだ

演習以外で艦娘同士の撃ち合いなど見たくはない

 

タイミングをずらして

深海棲艦の大艦隊の襲撃に乗じて周囲の民間人を青葉が殺そうとしたら?

 

その前に青葉を拘束する他ない……か

しかし仮にも大本営からの報酬艦である青葉を拘束していてはおそらく大本営から来るであろう視察にバレる、そうなれば大本営からのなんらかのお咎めは避けられないだろう

 

「まいったな……」

 

青葉と言うカードのパワーはともかく

他のカードと組み合わせることで驚異を発揮するとなると、そこにあるだけで危険だ

しかし過剰に警戒を向ければそれはそれで青葉を邪険にしているという批判が来る

 

「……」

 

なにかいい策はないものか……

 

 

「はっ!?朝っ!?」

[ようやく起きましたか寝坊助

早く目を開いてください馬鹿]

 

謎に口の悪い脳内駆逐棲姫に起こされて目を開くとそこには……誰もいなかった

 

[遅刻しますよ?]

[……わかったよ]

 

動くのを拒否する肉体を無理矢理に叩き起こして上体を上げ、そのまま布団を出る

布団からは絶対に離すまいという圧力を感じるがそれでも艦娘達のために敷布団を蹴って

 

「おい」

ごろん、と転がり出てきたのは北上だった

 

「すぴ〜……」

「すぴーじゃない!」

 

「すき〜」

「……おまえ起きてるだろ」

 

「あたしのこと好き〜?」

「おまえ起きてるだろ」

 

「好き〜?」

「起きてるだろっ!」

 

「……もう、ちゃんと答えてよ〜」

「北上、おまえなぁ……」

 

大方、起こしに来た後で俺の布団に入り込んで驚かそうとしてそのまま寝てしまったってところだろうけれどさすがに男の布団に忍び込むのは倫理的によろしくない

 

「説教は大井にやってもらおう」

「ちょっとやめてよ提督、そんな冗談流石に笑えない」

 

「おまえマジで嫌がってんじゃん……マジか」

「え?……もしかして提督、あたしと大井っちマジでデキてると思ってたの?」

 

若干気味の悪いものを見る目を向けてくる北上

 

「いや、さすがにそれはないが、嫌ってるわけじゃないと思ってたんだがな」

「好きでもないけど、別に嫌いでもないよ?

ただ説教は……大井っち、本当に話が長くなるから面倒くさくてさ……しょうがないんだよね、死にたくなる」

 

その直後、北上の目が死んだ

……いや、死んだ魚のような目になった

 

「北上っ!?」

 

「だいじょぶだいじょぶ、ホントに死にゃしないから、でも死にたい……」

 

急激にテンションの落ちていく北上

そんなに大井の説教は嫌なのだろうか

 

「まぁそりゃああまり宜しくはないが、とりあえず出るぞ、いつまでもゴロゴロしてるわけには行かないんだから」

「うぅ〜……」

 

置かれていた枕を奪い取った北上は

そのままうーうーと唸り出した

寝起き悪いのかお前

 

「めんどくさいよ提督ぅ」

「そりゃ仕事だからなっ!」

 

[早くしてください、もう8時ですよ?]

[うぇあマジ!?クッソ!]

 

悪態をつきながら北上を引き摺り出し、そのまま部屋を出る

もちろん上着を片手に掴んで

 

「朝食食わないとパワー出ないぞお前っ!」

「むりむりむりむりねるねるねるね!」

 

「ねるねるねるねじゃねぇっての!

対象年齢3歳だろアレ!お前何歳だオラァッ!」

「……うるさいっ!」

 

俺のキャリーに必死の抵抗を見せる北上を動揺させる作戦はどうやら失敗してしまったらしく、北上の抵抗は強まるばかり

 

「……そうだ」

「北上が部屋を出ないなら、大井を部屋に連れてくれば良い!」

「ヤダ」

 

「お前が起きないから悪い、さぁ行くぞ」

「わかったから待って……待って」

 

その瞬間、北上と俺は完全にシンクロしていた

そして感じていたのはただ一つ

圧倒的なまでの“殺意”

 

「提督?北上さんがいつまでも食堂に来ないから心配してきてみれば一体なにをしているんですか?」

「…………」

「…………」

 

俺は瞬間的に北上と目を合わせてアイコンタクトを取り、無言のままお互いの位置を入れ替えて

 

「36計!」

「逃げるに如かず!」

 

「逃すと思いましたか!?」

 

その直後に二人とも捕まえられた

いや、俺はその気になれば逃げられたのだが、あまり強く振り払うと艦娘側が危ないのだ

 

「……二人ともお説教ですよ、全く……でも、その前に北上さんは今日の秘書艦なんですから、二人で朝ごはん食べてきてください!」

 

「……マジか」

「もちろん、終わったらちゃあーんとお説教をして差し上げます

逃げないでくださいね?」

「仕事があるんだが」

 

「私が誰だがお忘れですか?

最初の秘書艦にして最初期艦、大井ですよ?」

「……忘れてはいないが……まさか」

 

慄きの声を上げた俺に、大井の返答が突き刺さる

 

「私が、仕事を終わるまで付き添って差し上げます」

「そこは代わりにやってくれよ!」

「私が全部やるわけないじゃないですか!やめてくださいよそんなくだらない冗談は!」

 

そんな台詞はさっき北上から聞いたばかりだ

あまり似ていなくてもやはり北上と大井は姉妹なんだな……と感心していると

ふと、手元に風が通り抜ける

 

……

 

「北上は!?」

「いつのまにっ!?」

 

俺が怒鳴られているうちに

北上はまさかの逃走をキメていたのだった

600話記念番外編は

  • 過去編軍学校
  • 過去編深海勢
  • 裏山とかの話を
  • テンプレ転生者(ヘイト)
  • ストーリーを進めよう
  • 戦争が終わった後の話を!
  • しぐ……しぐ……
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