戦いたくなんてなかったんや   作:魚介(改)貧弱卿

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温故知新

俺の元に、かねてより懸念していた一報が届いたことで、俺は椅子から立ち上がり

軽巡寮へ向かって走り出した

 

「……北上、ついにやったか……」

 

雷巡の艦種説明を演じていた北上の持つスマホから急遽報告を受けてから

軽巡寮へ到着するまでわずか1分間

ショートカットを含んだ全力疾走でたどり着いた俺は、その輩の手を素早く掴む

 

「残念だが、あんたはここで退場だ」

「なっ!?なんだよアンタ!」

 

「私はこの鎮守府の統括官だ!

大井!証拠!」「はい!」

 

憲兵隊による所轄の警察への通報が入り……(そもそも鎮守府の中での日本国憲法がどこまで有効かは議論の余地があるが)被害者北上の見た目がうら若き女性であると言うこともあって、痴漢は速やかに連行されていった

 

「……はぁ……」

 

俺はこんなことをするために待機していたわけではないのだが、まぁハラスメントだし

仕方ないか

 

「ていとくー、もちょっと早くきてよ〜」

「いやいやいや!これで全力だから!

めちゃくちゃ全力で走ってきたから!」

 

北上に弁解しながら

警察の方に同行している大井がその場にいないことを感謝していると

彼方から強烈な気配を感じた

 

「始まったか……!」

 

水平線の向こうで深海棲艦同士の戦いが幕を開けたことを、その気配が伝えてくる

中枢棲姫と空母棲鬼が勝手に出撃してしまったらしいことを案じながらも

敵の実力を探っていく

 

まだ昼前の時間ゆえに、時間は十分にある

判断の猶予はある

 

「頼んだぞ……2人とも」

俺は軽巡寮を離れて、再び執務室に戻った

 

 

 

 

 

 

 

「アァアアアァァアアッ!」

 

言葉にならない叫びと共に放たれた砲撃が直撃した私は、なんと装甲どころか肉体ごと吹き飛ばされ、そのまま数メートルの後退を余儀なくされた

 

「いけない!装甲が!」

 

そう、今まで受けていたものとは段違いの攻撃力で、私の装甲は破砕されていた

艤装状態は中破、装甲による防御はもはや当てにできない

 

「スペックを超えた……!?」

「違ウ!コレガ!私ノスペックダ!」

 

敵が攻撃力を異様に上昇させてきた以上、空母棲鬼の装甲ではガードしきれない

空母棲鬼は回避に徹して、しかし空戦を再開

本来根っからの空母である彼女は格闘戦よりも遠距離からの戦闘を好んでいる

敵が砲戦を得意としていようとも関係なく、それらを一方的に叩き潰すことも可能なはず

 

「よし!これで!」

「アマインダヨ!」

 

凶悪な目と歯をむき出しにした北方棲姫が叫びを上げて、同時に攻撃を放ってくる

放たれたのは三式弾同様の対空散弾

 

「まずっ!」

「落チロ落チロ!」

 

単発や数発であればよかっただろう

だが撃ってきたのは数百発

下から凄まじいまでの弾が放たれた直後、すでに高高度へ退避していた一部機体を除いて、ほとんど全てが撃ち落とされてしまう

 

「やられたっ!……でも!」

「相変ワラズノ特攻カ?無駄ナンダヨカスガ!」

 

「無駄ですって……?

死に臨んでなお!敵を殺すために最後の一撃を捧げた者たちの最後の輝きを!無駄と言ったのか!」

 

叫びを上げた空母棲鬼は

その全力を以って艦載機達を操作して

撃ち落とされた機体多数が、再び牙を剥く

 

その軽い身体に、紅蓮の炎を纏って

 

「elite化ダト?!」

「残念、ただのエリートじゃないわ」

 

その炎はただのエリート個体への深化ではない

それは空母棲鬼という既存のステージを捨てて、さらに一歩踏み出した証

 

進化(Evolve)深海空母鬼

とでもいえばいいかしら?」

 

「……ステージヲ超越シタト言ウノカ!」

「その通り……貴女はここで死んで行け!」

 

空母棲鬼……いえ、深海空母鬼の燃え盛る炎を宿し、赤く輝く左の瞳が北方棲姫を射抜いた

 

「コンナトコロデ!朽チルモノカ!

コノ身!砕ケテナルモノカァァッ!」

「いいえ」

 

「お前はここで終わりよ」

 

音と共に、遥か上空から爆撃が降り注ぐ

 

「何!?」

「ダレ!!」

 

「誰だかって?アンタ、人の顔も覚えられないの?そんなんで何が深海ナントカ鬼だっての

……仕方ないから教えてあげるわ」

 

白い髪を逆立たせ

和の風の強い衣装を身につけた若い深海棲艦

 

それは

私たちと一緒にΛ-ランバスに避難していた

 

「深海鶴棲姫!」

「中枢、私のセリフ取んないでよ!

……おほん!私は深海鶴棲姫!

世界を終わらせる最強の姫!」

 

古き姫たちの戦いに颯爽と割り込んできた

新参者の姫

時代を塗り替えたと言っても過言ではない

深海の呪詛を振り切った姫

 

「なんかこそこそしてるなって思ったら

勝手に出撃なんかしちゃって!

アンタたち、後で覚悟しなさいよね!」

 

微妙に締まらないセリフを叫び切った深海鶴棲姫は、そのまま空母としての性能を発揮し

既に発艦していた爆撃機らに再度指示

そのまま再攻撃を行わせる

 

「いっけえぇぇえっ!」

「……!行きなさい!」

 

一拍後に、深海空母鬼が叫ぶ

 

二体の最新の化け物たちを前に、古き姫は成す術を持たなかった

600話記念番外編は

  • 過去編軍学校
  • 過去編深海勢
  • 裏山とかの話を
  • テンプレ転生者(ヘイト)
  • ストーリーを進めよう
  • 戦争が終わった後の話を!
  • しぐ……しぐ……
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