戦いたくなんてなかったんや   作:魚介(改)貧弱卿

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スタートアップ

時刻は昼過ぎ、扉に視線を留めながら待っている俺に、コンコン、というノックオンが届く

 

「入っていいよ」

「はい、失礼します」

 

その言葉とともに執務室に入ってきたのは

藤色の髪が目に鮮やかな陽炎型、萩風

 

「創海提督、午後の訓練始まりますよ

ご覧にならないんですか?」

 

「あぁ、萩風(裏山)か、お疲れ様

俺はここから見てるし、良いよ気にしなくて

色々とやるべき事もあるし、残念ながら忙しいんでな……萩風こそ

たしかお客さんの方に行ってたよな?」

「はい、私の担当していたお客様は先程おかえりになりましたので、割り当てがまた来る前に一度寄って見た次第です」

 

「……なるほど、そりゃ本当にお疲れ様だ

わざわざこっちにね」

「せっかくみんな気合いを入れて訓練に臨んでいるのですから、一番見てもらいたい人の方を尋ねる、というのは変ですか?」

 

妙に含みを持たせたような言い方をする萩風に疑問を覚えて、訊ねる

 

「その見てもらいたい人、というのは?」

「もちろん、司令官さんですよ

陽炎をはじめとした陽炎型はだいたいみんな司令官さんのことが大好きですから、ね?」

 

こくん、と小首を傾げた『ね?』の威力は普段なら提督を動かすに十分だったが

今の俺は動じるわけにはいかない

 

「青葉の方から少々困った気配がするんでな、すまないが民間人の安全と深海連中の動向にも気を配る関係上、現場管理のことについてはあまり見ることができない

悪いが勘弁してくれ」

「それでしたら、また今度

次はこう言った行事ではなく普通の日に、訓練の視察をお願いしますね

それでは、萩風、鎮守府内警備任務に戻ります!」

 

敬礼して出て行った萩風

大丈夫だろうか?

 

「……まぁ、大丈夫だろう」

 

事前に聞いたところによると、萩風は秘書艦代行もやるほどにしっかりした人物であるというし、私的なミスとかは考えなくていいだろう

 

「……まずいな」

 

深海連中の気配が近づいてきている

このままのペースだったら夜襲だ、

島陰や水平線に隠れるギリギリの場所に陣取って、夜に乗じて急襲してくるつもりか?

 

なるほど奴らも十分に鍛え

資材を蓄えてきているのだろう

……だが、負けてやるというわけにはいかない

 

「一応用意はしなきゃな」

 

連絡を回して、数人の艦娘に手を回しておく

 

『神風』『神通』『千代田』『ビスマルク』

この4人だ

 

もと姫級深海棲艦にして化け物じみた火力、能力の持ち主である4人に先制で極大の攻撃を叩き込んでもらい、全体を牽制した上で

陣形を食い破って突き進む

 

火力のある長門型2人と狙撃能力の高い山城を動員すれば敵首魁を沿岸から打ちのめす事とて可能だろう

 

〈提督!青葉さんが動きまシタ!〉

〈なに!?〉

 

4人に連絡を回した直後

最悪のタイミングで通信が入った

 


 

「……!」

 

悲壮な表情で、青葉は自らの左手につけた指輪を外す、今回の行事では自らにはなんの仕事も振られなかった

それはつまり、信用されていないということ

 

自分は結局、疎まれる外野でしかなかったということ

 

話題にも上る創海提督がどんな人かと思えばこの程度か、期待したほどでもなかった

と、いつのまにか期待していた自分を嗤いながら、指輪を外す

 

それは誘導装置

過去数回にわたって猛威を振るった

転送装置のゲートを固定するための装置

 

指輪という小さなものであることから

非常に携帯性、隠匿性が高く利用しやすいそれを、あろうことか堂々と指につけていた青葉は

自らの左手を憎々しげに睨みつけて

 

指輪を地面に叩きつけた

同時に起動する装置、光と共にゲートが展開され

水平線の彼方から、次々に深海棲艦達がワープアウトしてくる

 

観客達のいる鎮守府の只中に

 


 

まっずい!やられた!青葉の奴、指輪を隠し持ってやがったのか

「間に合えぇぇっ!」

 

一、二体ならば、騒ぎになるよりも早く処理できる、3体までなら民間人に被害なく処理できる

だが、それ以上はダメだ

そうなるより前にゲートを破壊しなくてはならない

 

「うおぉぉっ!」

 

鎮守府の二階の窓から飛び降りて

一階の外、中庭へと駆け出す

そして

 

「輝那!」

 

自損覚悟で4連射

陸奥による照準補正もなしに全弾命中を成功させるが、大した影響は見られない

 

「……防弾ってわけじゃなさそうだな」

 

そう、それはすでに向こう側の空間に繋がってしまった、ワープゲートとして成立してしまったのだ

その状態で発砲してもゲートそのものではなく、向こうの空間に届くだけ

向こうで出待ちしていたであろう数体の深海棲艦はまさかの出待ち弾に当たっているかもしれないが、それだけだ

 

ゲートを固定しているアンカーが指輪なのなら、それを破壊すればいい

座標固定の関係上、指輪自体はゲートから露出しているはずだ

 

「壊れろっ!」

 

精密射撃を試みた弾は見事に指輪に向かって

「させませんよ」

 

青葉自身の肉体を抉った

 

「青葉!お前!」

「残念でしたね、提督

青葉はこれで世界を終わらせる……!」

 

「させまセーン!」

 

金剛の拳が、空を切る

 

「なに!?」

「ッ!?」

 

金剛は鎮守府の中でも速い

それ故に近接攻撃に於いては絶対的な制圧能力を有していたはずなのだが

こうも見事に躱されては

その甲板を怪しくなるというものだ

 

「なるほど……タダの道具頼りじゃナイ、と言ったところデスカ」

600話記念番外編は

  • 過去編軍学校
  • 過去編深海勢
  • 裏山とかの話を
  • テンプレ転生者(ヘイト)
  • ストーリーを進めよう
  • 戦争が終わった後の話を!
  • しぐ……しぐ……
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