戦いたくなんてなかったんや   作:魚介(改)貧弱卿

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最後の一言

「てーとく〜」

 

「おぉ、帰ってきたか!」

 

俺は役目を終えたビームライフル(正確にはレーザー)を片付けて

再び護岸コンクリ壁に戻ってきて

遠征艦隊と第三艦隊の2人からの挨拶を受ける

 

「てーとく……私、穢されちゃった…

あっついのがいっぱいかかって

こんなにベッタベタになっちゃったの

髪とかも真っ白にされて……」

 

涙目でこちらを見てくる村雨(改二)

 

「……それ海水だろ?…………

…………海水だよな?」

「………………」

 

「そんな深刻そうな表情するなよ!

本当にそんな風なこと考えちゃうだろ!」

 

村雨の言葉の内容はたしかに事実でしかないが、その内実は全く異なる

ただでさえ鎮守府に民間人がいる上に

聞こえよがしにそんなことを言われたらどう思われるか

 

「せきにん、とってよね?」

「とりますとります……待って」

 

「言質取ったっ!」

「まて村雨っ!」

 

この後しばらく口論した

 


 

「えー、お集まりの皆様にご連絡いたします、当鎮守府警戒区域内に侵入した敵艦隊は

我が艦隊によって撃滅されました

よって、安全確認を完了次第

鎮守府一般開放、および訓練見学を再開いたします」

 

俺のアナウンスによって正面の運動場に集まっていた民間の皆さんが散り始める

それと同時に艦娘達が片付けたものを再び広げ始めたので、にわかに賑やかさが戻ってくる

 

「はーいらっしゃい、空母の飛龍でーす!

みんなは空母って聞いて、どんなフネを思い浮かべるかな?」

 

身一つで飛び出していった飛龍が

朝の教育番組の司会のようなことを言い始める

 

「正規空母、加賀です

本日はよろしくお願いいたします

それでは射場の説明を行わせていただきますが、まず最初にこちらで行っているのは、空母および弓を使う者の射撃訓練、正式な意味での弓道とは異なるものであることをご了承下さい」

 

射場に来た人を加賀姉さんが引き受け

 

「戦艦寮の比叡です!

金剛型戦艦の魅力、いっぱい説明しますよ?」

 

比叡は榛名と金剛がまだ帰ってきていないタイミングなので、気合入れて説明している

 

「あっ、そうだ!さっき出撃してった五十鈴って私のお姉さんなの!」

 

「軽巡寮のタマにゃ、猫じゃないにゃ

これはキャラ付けじゃないにゃ」

 

「私は高雄、高雄型重巡洋艦一番艦の高雄と申します、これより艦種:重巡洋艦の運用説明を再開させていただきます、都合あって最初からになってしまいますが、何卒お付き合いいただけると幸いです」

「古鷹と言います。重巡洋艦のいいところ、たくさん知ってもらえると嬉しいです、重巡洋艦をよろしくお願いします」

 

「暁よ!こう見えても一人前のレディなんだからね

今回は私が駆逐艦の艦種説明を担当するわね!」

 

さまざまな艦娘達がお客さんとの積極的なコミュニケーションを図って

自ら活気を作り出していく

 

「……遅くなりましたが、創海鎮守府の提督として、これより『提督業』の実演説明を始めさせていただきます

まずは演習任務と出撃、艦隊編成から」

 

俺も執務室に来た人を()()()()つつ

軽くジョークを交えた説明をはじめる

 

「艦娘とは、一般兵器とは違って独立した存在です、なんなら指揮を受けずとも単独で戦える

遠洋にいて嵐にあった時、深海棲艦の軍勢に出会して味方と逸れたとき

そんな時には基本的に通信はできません

なぜなら、嵐に逢えば海が荒れ、方角は分からなくなって、どの方向に電波を飛ばせば通じるか分からないからです、後者も同じく闇雲に通信を試みれば

あっという間に敵に傍受され、襲撃を受けることになるでしょう

そこで必要なのは自立した判断力です

一旦救助をまって身を隠すもよし、

敵を突破して強引に帰還するもよし

周囲で航行中の他艦隊に臨時合流するもよし、

海で戦うと一口に言ってもやり方は千差万別、個々人にもその時々にも違いがあります」

 

「なので私たち『提督』は

戦闘においては最低限の指揮を取るのみ、後は艦娘自身の判断に任せます

ですから、『提督』と聞いて想像するようなお堅い命令役ではなく

どちらかというと鎮守府という場所を円滑に回すためのベアリング、と言った役回りになります」

 

執務室に来た人物は成人か、それより若いといったくらいの歳の男性がほとんど

10代前半や女性はほとんどいない

 

「鎮守府統括を行う提督として

重要なのは『艦娘との十分なコミュニケーション』そして『事務処理』です

戦闘指揮については……ぶっちゃけた話、素人でも問題ありません

そこについては歴戦の艦娘達の自己判断の方が並の軍人よりよっぽど正確なので」

 

あれ?笑いをとってみたつもりなのに

全然受けない……まずいな滑り気味だ 

「それで、事務処理はというと……これです」

 

艦隊編成の変更や艦隊名称の変更

あとは多少の予算申請の紙を取り出す

 

「まぁどこにでも先立つものはあるということで、予算の申請ですね

認められるもの、妥当性の分かるものについては……こう」

 

バン、と大判のハンコを押し

受理のカゴに入れる

間宮さんからの来月分の食材の予算申請は承認され

 

「反対に記述の不十分なものや明らかに妥当性のないもの、必要な手順を抜かしているものは……こう」

 

再提出・却下のカゴに投げ込まれる

明石のネジ予算追加申請は却下された

 

「報告書の類は目を通すだけで十分なので必要なハンコはありませんが

確認したもの、対応したものと未対応・未確認のものを分けるために

ウチではこうしています」

 

パチンと音を立てながら

切符切りの如くパンチを押して、報告書のフチに穴を開ける

 

「これをファイルに保存するわけです

……ね、合理的でしょ?」

 

また滑ったなこれ

600話記念番外編は

  • 過去編軍学校
  • 過去編深海勢
  • 裏山とかの話を
  • テンプレ転生者(ヘイト)
  • ストーリーを進めよう
  • 戦争が終わった後の話を!
  • しぐ……しぐ……

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