戦いたくなんてなかったんや   作:魚介(改)貧弱卿

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氷淡地獄

薄暗い懲罰房、つまり牢屋に足を踏み入れた俺は、その奥に蹲っている青葉に声を掛ける

 

「起きてる……よな?」

「…………」

 

寝ている……いや

起きてるように見える

この狸め

 

「青葉、起きているんだろう?」

 

「…………」

 

息を潜めている青葉に声をかけてみるがやはり無視、残念だがコミュは不可能と見た方がいいだろう

 

「青葉、わたしから君に言うべきことはない、だが後後のことは知らん

君に如何なる事情があろうとも民間人に多数の死者・被害者を出す可能性のあった強襲の足がかりになっていたことは事実だ、最低でも軍法会議ものだろうな」

 

わざと高圧的な声で語る

本当ならそんなことはしたくないが、それでもやっぱり、まずは反応がなにか必要だ

 

「……」

 

やはり反応はない

残念だ

 

いや、コネクトの副作用ですでに理性を失っているのか?投薬直後はまともに発話できないほどの興奮状態を起こしていたが、それが気絶した後も持続しているのか?

 

「ぅぅ……ぐっ……」

 

そんな思考を巡らせていたら

苦しそうな呻き声が聞こえた

 

「青葉っ!」

 

ひとつ間違えば殺される

彼女は間違いなく艤装適合率が異常に高いオーバードース、その上でコネクトを使った艦娘だ

その力がどれほど残留しているのかはわからないが、天龍たちと同じようにオーバードースというだけで普通の艦娘とは一線を画した戦力なのだ

 

そんなことはどうでもいい

 

「青葉、ゆっくり息を吸って」

 

少し強引だがその体を支えて

流石に嫌なにおいのする吐瀉物から引き離し、片膝を曲げた寝姿勢にする

いわゆる回復体位だ

 

「酸で喉が痛むと思うから

少し我慢してもらうけれど水を持ってくるよ」

 

反応を見ないでそのまま懲罰房を立ち去る

軽巡か重巡の1人くらいは監視兼看護にいるかもしれない

 


 

最悪、吐いてるの見られた

あの人絶対私のことゲロイン扱いする

 

もう死にたい

でも死ねない

あの人はきっと私を生かそうとするし

それに提督も私の死を望まないから

 

提督に死ねと言われるならすぐ死ねるけれど、生憎私が命じられたのは

『生きろ』

エイプリルフールでもないあの日に

私は生きろと言われてしまった

命じられるがままに必死に戦って、立ち向かって、提督が死んでしまって

 

鎮守府も、提督も、戦う理由も無くしてしまったわたしにはもう、その命令しか残っていない

それももう、薬害に汚染された体じゃ長く持たないのは明白だけれど

 

「……精一杯頑張った、これ以上は無理

そうよね」

 

口の中に溢れる鉄と酸の味を吐き出しながら、私はどこへともなく呟いた

 


 

急遽(こういったことを断らない人物として真っ先に頭の中に浮かんだ)古鷹にヘルプを頼んで

代わりに重巡の説明の方に参加している

 

ちなみに服は多少とはいえ汚れてしまっていたので着替えた、耐酸性能も持ち合わせているので水洗いで十分だ

 

「提督、高雄型重巡洋艦2番艦のお名前はわかりますか?」

「愛宕だな」

 

もともと古鷹による解説を前提として観客に聞くスタイルだったらしい

クイズ形式の質問に答えながら

手元のカード(驚くべきことにドライバーで使う艤装カード=艦これの艦娘カードそのものだ)を取り

それを提示する

 

「はい、正解です

では重巡洋艦の最初期型の艦型は!」

「古鷹型、正確には『1番艦衣笠・2番艦古鷹』なので初期設計段階では衣笠型。

後に一番艦の名称が変更されて『加古・古鷹』になっているが、実際のところ建造に遅れがあったので先に竣工した古鷹が優先されて『1番艦古鷹・2番艦加古』となり、最終的には古鷹型と称された」

 

知っている人も多いちょっとした豆知識だが、重巡洋艦は最初から艦種として存在していたわけではない

『巡洋艦』を細分した『軽巡』『重巡』の分類は加古・古鷹から始まったのである

 

「お見事です、では3問目、これが最後の問題です、重巡洋艦の最上型後期2人『鈴谷』『熊野』のステータス特性、および派生改造後の正式名称をお願いします」

 

「最上型重巡洋艦 3番艦 軽空母 鈴谷航改二と最上型重巡洋艦 4番艦 軽空母 熊野航改二

特殊派生改造『航改二』発動に伴って艦種が重巡洋艦から軽空母に変更されるが表記は依然として最上型重巡洋艦として扱われている」

 

ちょっとした専門知識の披露だな

重巡についてというより、艦娘についてだが

 

「はい、正解です!」

 

「最初のは簡単すぎたし、もう一問来てもいいんだぜ?」

 

挑発的な言い方で煽ってみると

それに乗ってきた高雄が腕を組む

 

「では特別問題、私のスリーサイズを当ててください」

「できるかっ!?」

 

周囲は爆笑したが俺は凍りついた

 

600話記念番外編は

  • 過去編軍学校
  • 過去編深海勢
  • 裏山とかの話を
  • テンプレ転生者(ヘイト)
  • ストーリーを進めよう
  • 戦争が終わった後の話を!
  • しぐ……しぐ……
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