「ひと段落ついたし……」
講義も終わり、時刻はそろそろ訓練終了の16時半ごろ
「……さぁて」
そろそろ全艦娘出撃からの整列、カーテンコールが始まる、高雄も最後までお客さんの相手をしているわけにはいかないので
手早く片付けを終わらせて
工廠とドックのある方に向かった
「俺はどうすっかな」
出撃演出の振り付けは艦種、艦型ごとで空砲であったり、武装持ちは各々の手持ち武装を使ったパフォーマンスがあったりして少々派手だ
目を引くにはちょうどいい
俺はさっと姿を消すとしよう
「……」
ちょっと寄り道をしてから
青葉の様子を見たくれていた古鷹と交代して、俺が青葉のそばに着く
「青葉、話せるか?」
「……のどガラガラですよ……」
たしかにひどくかすれた声だ
だけど、ある程度は回復しているようだな、これなら艤装をつければ航行には問題ないか
「今から出撃、できるか?
ちょっと重巡のみんなに混じって派手に目立ってくれ」
「なんで私がッ!」
今にも噛み付いてきそうな目で吼える青葉を押さえ込んで
「お前もウチの子だからな、知ってる?次のプログラム上のイベント名は『全艦娘出撃・カーテンコール』なんだぜ?だからお前も出るんだよ」
「そんなの!できるわけないですよ!
練習もしてないし!吐き散らかした直後の女に人前に出ろとかなんて拷問ですか!」
ひどく濁った目で睨みつけてくる青葉
「順番は駆逐艦からだし、重巡の後半に割り込みになるから多少急げばシャワー浴びて着替えるくらいの時間はある
ここでぐだぐだしてる時間はないがな」
「なら行かなければいいじゃないですか!私はいきませんよそんなの!」
「そうか?……全員参加なんだが」
「それでもですっ!」
「残念だ」
ショボくれながら背中を向けて
そのまま出て行くポーズを取る
「着替えは衣笠のやつがある、一棟のシャワー室に置いてある、多少サイズが合わんかもしれないがそこは我慢してくれ」
「なんで私が行く前提なんですか着ませんよ妹の制服なんて!」
相変わらずガラガラな声で叫ぶ青葉に水筒を指して
「まずは水飲んで落ち着きな、んじゃ」
俺は懲罰房を出た
「……ほんっとなんなんですかあの人は!」
我ながら女らしくないガラガラ声で悪態をつきながら水筒をひっつかむ
「んっ…んっ……んっあ」
酸で荒れた喉が水によって流され
残っていた胃酸が多少の痛みとともにあるべき場所へと還る
それによって多少マシになった喉の調子と声色に安堵しながら
思考を巡らせる
「あんなの、行くしかないじゃないですか」
私は重巡にしては小柄で、一般的な人間の体格でいうと中学生と大差ない
反対に衣笠は高校生相当の身長と私より大きい胸がある
お尻では負ける気はしないけれど、少なくとも胸では負けを認めざるを得ない
身長の差と胸の差、二つが揃ってしまったブカブカな制服なんて着たらさぞ惨めな姿を晒すことになってしまう
「絶対嫌ですよそんなの!
……でも」
吐瀉物と過ごした時間のせいで気分が悪いこの制服、少しでも早く脱ぎたいというのは仕方ない
それにあの人の指示でもあるし
シャワーの方は否定する必要はないはず
そう、最悪出撃の方はしなくてもシャワーは浴びてもいいんじゃない?
「……よし」
私は鍵を開けっぱなしにされていた懲罰房の扉を開けた
「……バカですね、あの人は」
私がもしもう一個誘導装置やコネクトを隠し持っていたとしたら
そのまま鎮守府への敵侵攻を許してしまうというのに、タダでさえ前艦娘出撃なんていうプログラム名を明かしてしまった以上、陸上で戦える戦力はいなくなることを敵に伝えられてしまうリスクもあるのに
それでもなお私があの人に従うとだけ考えているんでしょうね
「やっぱり、バカすぎます」
あの人について行けば
私たちも、大本営に置き去りになってしまっている子たちも、みんな助かるかもしれない
「はぁ……私もバカなのか」
そんな都合の良い事を考えてしまっている時点で私も同類と言ったところか
バカな提督にはバカな艦娘がお似合いね
「急がなきゃ」
遅れてしまう
あの人は配慮してくれるかもしれないけれど
他の艦娘やお客さんはそうもいかない
『創海鎮守府の青葉』として
私はカーテンコールに参加するんだから
「お、来たか」
「……提督も人が悪いね」
後ろから首に腕を回された俺はその腕をタップしながら後ろに視線を向ける
「川内、お前もう出撃なんじゃないの?」
「軽巡は結構多いし、川内型は派手だから後の方なんだよ……ほら、『
「理解した、確かに目立つなそれは」
俺から離れた川内は正面に回って笑う
「でしょでしょ?だから、せいぜい時間稼ぎするよ、新しい家族のために」
「頼んだ、頑張ってくれよ川内=サン」
「任せてよね!みんな釘付けにしちゃうんだから!」
魚雷クナイと片手の印でニンジャアピールしながらウインクしてくる川内(カワイイヤッター)
「……それはアイドルの仕事では?
ボブは訝しんだ」
「黙れボブ、じゃっ、行ってくるね〜!」
川内はその声だけを残して姿を消した
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