「大本営に乗り込んで裏切り者を検挙……面白い」
続いて俺が話をかけた2人は
甲崎大佐と加二倉少将
「……ゴトランドから話は聞いた」
ひどく低い声で、甲崎大佐は俺に尋ねる
「その上で、お前はなにをしたい?」
「単に、青葉と、青葉の同僚達を助けたいです」
深刻な表情にこちらも同じ表情で応じると、さらにシワを深くした甲崎大佐が再び言葉を返してくる
「それで大本営に弓引く裏切り者になってもか」
「大本営にではない、大本営に巣食う裏切り者の蛆虫共を踏み潰すだけです
……ご協力頂けないのなら、致し方ない
我々だけで実行するだけだ」
膝を突き合わせての加二倉提督が統べる佐世保鎮守府での話である
「憲兵隊として、これを大本営に対する反逆と捉えるのなら俺は貴様を検挙せざるを得ない
だが、これは同時に大本営の腐敗を除ける機会でもある……難しいところだな」
複雑な言い方だが、示す内容は2つ
建前上の立場と、本音
親艦娘派である加二倉少将は大本営の監査という腐敗撲滅行動に出たい
しかし立場上は一提督ということで、大本営には強く出ることができない
だがこの速攻作戦にのれば電撃的に侵攻して正しく腐敗の象徴たる監禁行為の現場を突き止め、あわよくばその犯人をを現行犯でとっ捕まえることができる
つまり俺の言葉を大本営に対する叛意と捉えた上で『協力してやる代わりに美味いところをよこせ』と言いたいわけだ
そしてそれと同時に
大本営に対する調査の詳細な情報を要求している、とみるべきだろう
腐敗の温床にして既得権益層の跋扈する伏魔殿である大本営、そんなことでは多少改革されても同じようなことが繰り返されるだけだ
「これを機に、大本営に鼎派を多数送り込む……と、いうことかな?」
「いや、流石に大本営とてそう甘くはない
むしろ道具派や兵器派で固まっている場所に貴重な人員を送っても洗脳されて利用されるなり、すぐに何かのスケープゴートにされてクビなりがオチになる」
「憲兵隊の精鋭部隊ならともかく、十分な教育のないものが乗り込んでも丸め込まれて無駄になるだけでしょう」
「……ならばどうする?」
「大本営には、俺がガングートとゴトランドを建造したという名目で正面から行きます
ガングートを伴って、ゴトランドを連れて行く形です
その検診と『護国の乙女』の適用のための艤装調整の時間は1人約120分
4時間あれば大半の場所を探れる筈です
……ゴトランド自身の潜入スキルも活かして、建物内全体を捜索
同時に俺の秘書妖精に手伝ってもらって壁の裏とか地下室とかからも探します
場所さえ掴めれば……」
「そこに俺が踏み込んで強制捜査、という事か」
「はい」
「しかし、そこが見つからなかったら?」
「その時は迷子になったゴトランドを保護する名目で周囲を漁って時間を稼いで
それでも見つからなければ一旦撤退します、そのあとは霞と愛宕の強化感覚に頼ってでも探し出します」
「強化感覚……?それは?」
怪訝な表情になる甲崎大佐に説明するために、俺は2人の現状を語り出す
「摩耶、愛宕、霞と時津風はそれぞれ感覚器と艤装、そして肉体を改造されているんです
もちろん、正規の意味の『改』ではなく、非正規のそれで……今回の子達同様
881研究室の被害者なんですよ、あの子達は」
「なんと……!」
「感覚器が強化されて、視覚と触覚と味覚と……感覚全部が強引に統合されている霞と
皮膚感覚が尋常じゃなく鋭敏な愛宕
それに『どんな艤装でも装備して操作できる』摩耶、脚を一部機械化して超高速を実現した時津風、ウチでは引き取れませんでしたが腕をもっとハイパワーにした長門…関節を丸ごと人形みたいな物に交換されていたヲ級も居た」
「人としてそれはどうなのか!!
やはり研究室というのは便利な技術屋というだけではなかったということか……」
「はい、犠牲者を容認した非道な研究を繰り返すマッドサイエンティストの集団
倫理観がブチ壊れた狂人連中、と呼ばざるをえません
我々の軍服も元は881の成果物らしいですが、そこに至るまでになにをどうしてきたのやら……」
「……何をどう隠蔽されていてもおかしくはない、と考えた方がいい、
やはりこちらから1人付けた方が良いだろう……外国艦となると……ジャーヴィスか」
「ジャーヴィス……?J級の」
金髪ワンピに帽子を付けた幼女が頭の中で飛び跳ねるが、加二倉提督の鎮守府においては睦月が戦艦をタコ殴りにするような現象もまかり通ってしまう
流石にこのかわいいジャーヴィスもそのままの外見ではないだろう
「そうだ、とりあえず極秘任務として呼ぶことになるから、現地または移動中に説明を行え
本作戦の都合上、時間は限られている」
「青葉が“役割を果たせなかった”または“秘密をさとられた”と認識されたら終わりだから、それ以前に作戦を遂行する必要があるということか
良かろう、ゴトランドを連れて行け」
「はい、愛宕に連絡します」
「こちらもジャーヴィスを呼び出す
送迎は装甲車としたいところだが、どうする」
「流石にそれはいけません
うちの乗用……いやどうするか……」
「それについてはアタシのを提供するよ」
創海鎮守府は僻地にあり、
車を取りに戻るには遠すぎる
そう悩みかけた時、部屋に入ってきたアトランタが鍵を投げつけてきた
「うぉ……いいのか?場合によって投棄したり爆破したりの可能性もあるんだぞ?
高価いんだろうアレ」
「人の命は地球の未来、それより高価なものってある?」
「……すまない」
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