戦いたくなんてなかったんや   作:魚介(改)貧弱卿

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ジャーヴィス、その働き

「はい、新造艦のジャーヴィスと」

「ゴトランド……と」

「ガングートだ」

 

「というわけで、建造した3人の『護国の乙女』の調整とメンタルチェックを行いたい」

 

「承りました、それでは

新造艦の皆さんの身体検診、メンタルチェック、艤装調整を行いますので、まずはあちらの医務室へどうぞ」

 

「あ、そうそう……これを」

 

二級艤装技師の身分証を出すと

驚いた顔になる受付嬢さん(妙高)

 

「俺自身が艤装技師なので

自分で艤装の調整をやります、なので技師の手配は要りません」

「はい、承りました」

 

「さぁ、3人とも行くぞ」

「「はい」」「あぁ」

 

妙高さんに一応礼を言って

俺たちはその場を後にする

 

向かう先は指示されたばかりの医務室

ではなく

 

「捜索開始、これより隠密行動に入ります」

「では私が検診を引き受ける」

 

ガングートが医務室の方に向かい

残る2人が廊下を駆けていった

 

「頑張ってくれよ」

 

「フッ、甘いな……まぁ良い」

 

ガラガラと扉を開いて

ガングートはその中へと消えていった

 


 

「お?お客さんかな、珍しい」

「ロシアから来た、戦艦のガングートだ」

 

「そう、ボクは大本営の艤装技師さんだよ、よろしく」

「……艤装技師は職業ではないのか?」

 

「そう、ボクの個人名なんて知る必要はないだろう?」

「それもそうではあるが、トレーサビリティの観点から見ると必要だと思うのだが」

 

「なら艤装に署名でも入れようか?

昔の建築士はそうしていたというし」

 

「……まぁそれで良いか」

 

無表情で平坦な様子の青年から目を逸らした私はそのまま適当に置かれていた椅子に座った

「ん、では始めよう」

 

「待て、貴様は艤装技師なのだろう?

なぜ身体検査を貴様が行う、何を理由にしても正規医官が居ないわけがないだろう」

「簡単な事だよ、ボクは艤装技師と医務官を兼任しているというだけの話だ

ほら、身分証を提示する」

 

そこに示されていたのは確かに医師免許と艤装技師の身分証だった

 

「……なるほど」

「分かったかい?ならほら、内科系の検診になるから服を上げてくれ

まず聴診で肺と心音を確認する」

「分かった」

 

なんの疑いもなくパチリ、と上着の留金を外したその時ふと気づいた

「まて、医務官は女ではないのか?

流石に男に肌を見られるのは私としても抵抗感が否めないのだが」

「……クスッ……」

 

私の言葉に帰ってきたのは、なんのことはない笑い声、しかしそれは私の言葉をまるで無視しているということに他ならない

 

「笑うことではない!」

「クスクス……いや、笑うことだよ

君はさっきの免許証を見ていなかったのかい?ボクは女だよ」

 

「なに?!」

「……そんなに驚くことないじゃないか、傷つくなぁ

ほら、ボクは元『時雨』の退役艦娘なんだよ

背は伸びたけど他の姉妹みたいな豊かな体じゃないから分からなかったかい?」

 

ほら、の一声と共に

片手で髪を一房握って持ち上げて見せる

 

その様子は確かに創海鎮守府の時雨によく似ていた

 

「アホ毛もあったんだけどね

邪魔になるし、根本からそこだけ切ったんだ

ここだけちょっと切った跡があるでしょ?」

「……なるほど、確かに『時雨』の髪型に合致する」

 

「アレは改二だけの特徴なんだけどな……そうか、君は創海鎮守府の時雨を知っているのか

彼女は数少ないボクの同期の時雨の1人でね、2人とも口数少ない『時雨』なのに、よくお互い話したものだよ」

 

その青年……いや女は

薄水色の瞳をこちらに向けて

 

「さて、本題に入ろう

ほら聴診するよ」

「あ、あぁ」

 


 

「……………」

 

ジャーヴィスは廊下を迷子の()()で走り

それらしき場所を探す

流石に一般にも開放されている受付近くにはないだろうということで

できるだけ早く奥の方に向かいたい様子だ

 

「…………」

 

とてとて、と緊張感のない足音が鳴る

誰も気にした様子はないが、数人とすれ違っていく

 

「…………」

 

奥へ、奥へと向かったジャーヴィスは

迷わず関係者以外立ち入り禁止の看板を無視して廊下を進む

艦娘なので関係者と言えないわけではないが、大本営関係者かと言われると難しいだろう

しかしあまりにも堂々とした有様からか、誰にも咎められていない

 

「……」

 

誰に道を尋ねることもなく無言で

ズンズン進んでいく

提督なら個人事に顔は違うが、流石にモデルとなる艦の存在する艦娘の顔は同じ

もちろん差自体はあるが、一見どころか並べて見なければ分からないレベルだ

提督達が『他の』と『自分の』艦娘を見分けられるのは霊力パスである『心柱』の縁によるところが大きい

 

いかに珍しい海外艦娘といえど他人がそれを見分けられるわけがないし、そもそも彼女自身の動きからは微塵も怯えや焦りは見えず

それを以て怪しむことはできない

 

「…………」

 

何気なく部屋に入ったり

出てきたりする人の動きを観察して

それらしき施設に当たりをつける

 

「……ここね」

 

単独潜入は順調

600話記念番外編は

  • 過去編軍学校
  • 過去編深海勢
  • 裏山とかの話を
  • テンプレ転生者(ヘイト)
  • ストーリーを進めよう
  • 戦争が終わった後の話を!
  • しぐ……しぐ……
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