戦いたくなんてなかったんや   作:魚介(改)貧弱卿

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番外話 金剛といつかの約束

「てーいーとーくっ!」

 

「んぁ?!」

 

急に大鯨のリズムで話しかけられた俺は跳ねるようにソファから飛び起きて

 

「おいなんだ大鯨かっ!?」

「……」

 

こっちを見ていた球磨に気づいた

 

「……なんだ球磨か」

「なんだとはなんだクマ!意外と優秀なクマちゃんなのにひどいクマ!」

 

「いや、なんというか……な

残念ながら球磨型はよく出てくる艦でもあるし」

「レアリティが全てな人はただのコレクターだクマ、提督には向いてないクマ」

「いや提督ってのはある意味コレクターであって、艦隊指揮を本業としてるわけじゃないんだが……」

 

「クマァ?」

「いやアァ?じゃなくて」

 

斜め下からの睨み上げを喰らいながら

俺は球磨の頭をポンポンと軽く叩く

ボールペンのバネのようにミョンミョンと反発力を伝えてくる『乃』の字型のアホ毛の感触を楽しみながら目を細めていると

「あんまり触んなクマー!」

 

とのお言葉を賜ることになった

 

「で、提督、もう7:30だクマ、我が艦隊の出撃時刻はとっくにすぎてるクマ

提督がいつになっても起きてこないから間宮さんも気にしていたクマ

見送りにもこないし食堂にもいないなら自室かと思ってわざわざ旗艦が探しに来てるクマ、なんか言うことがあるんじゃないクマ?」

「球磨ってやっぱりかわいいな」

「クマァッ!?」

 

びくっ!としたアホ毛を最後にもう一度だけハネさせると、抗議のつもりなのか

ぴょんぴょん跳ねながら怒る球磨に

一言、起きてこなかった理由を告げる

 

「俺、今日一日は丸ごと休暇なんだよ、指揮は大淀と長門がサポートで、ビスマルクが提督代理役をやってるんだ

もしかして説明なかった?」

「初耳だクマ……ビスマルクさんは何処クマ?」

 

「執務室じゃないかな?流石に遅刻はしないだろうし」

「執務室は見てなかったクマー

分かったクマ、提督のお見送りは無しって伝えてくるクマ」

 

踵を返した球磨の背中に

言葉をかける

 

「悪かったな、実は最初から織り込み済みのことなんだよ」

 

ビスマルクだって仕事が完璧ってわけではないと言うことの証明のために、大淀と長門にわざとそう指示して提督()の休日については伏せさせた

 

『提督がいない』と言う事実に気づいた小型艦や他の経験の浅い艦娘達が戸惑う様を見せて、『おまえの連絡不足が招いた混乱だ』と一言いうために

もともとビスマルクは仕事ができるタイプではあるが、それが故に慢心したり手を抜いたりして失敗するケースは多い

だからこそ最初に失敗させておいて

仕事に気を遣わせる

 

俺がいなくなった後もしっかり働ける提督としての能力を養うために必要なことだ

 

「その話、後で詳しく聞くクマ

覚えとけクマーッ!」

 

出撃にはすでに遅れている現状

そもそも提督が休暇であるというのならもはや出撃を待つ理由はない

球磨は出撃ドックのほうへ駆けていった

 

「慌てん坊の球磨は転ばないといいけどな……」

 

足元の確認など基本中の基本

疎かにするような輩をベテランとは言えない

しかし球磨は練度100オーバーの熟練艦娘、そんな基礎的なことを失敗するわけがない

 

「クマーッ!?」

 

ドンガラガッシャーンなんてする訳がないのだ

 

「さて、金剛っと……」

 

今日は金剛とのデートの日

当初の約束の日から半年以上遅れてしまったが、『今度デート一回デース』なんて言われたあとからすごく忙しくなってしまって、お互いにそれどころではなかったので仕方ないだろう

 

「待ち合わせ場所が……どこだったっけな……」

 

寝起きの頭を強引に回して

どこだったかを思い出そうとして

メモを見返す

格好はそれなりに整えているが(村雨監修)それで遅刻などバカのすること

待ち合わせ場所を忘れるなんて論外である

 

「……よし」

 

今日は出掛け先がかなり遠いことも相待って、朝早くから出ることになる

金剛が全部のプランを立てているので、細かい時間の予定や移動などは彼女任せになるが、髪も整えて一応の確認も済ませた

財布の資金も20枚ほど諭吉を突っ込み、これを消費し尽くす事はないという自信を得ている

 

「神巫蒼羅 出撃するっ!」

 


 

それと同じ頃、金剛は部屋で姉妹全員の前に立っていた

 

「テートクとのデート、楽しみデスッ!」

「いってらっしゃいませ、お姉さま!」

 

「何言ってるネ、比叡

あなたも行くのヨー?」

「え?」

 

「金剛型4姉妹全員で、テートクとチームデート

これが私の立てたdate planネ!」

 

金剛は初手から思いっきりヘビーな一撃をブチかまして、比叡は見事にノックアウトされた

 

「金剛型全員で、ですか!?」

「あの、金剛お姉様

そのお話は提督には……?」

 

「言ってないヨ?私からのsurpriseデース!」

「サプライズは確かに楽しみにはなりますが、それが度を越せばただ相手を傷つけるだけになってしまうのでは無いでしょうか……」

 

比叡・霧島・榛名

3人全員から苦言を呈されても金剛は止まらない

「さぁみんな、制服でも私服でも自信のある服で出撃デース!」

 

「ちょっ!そんなの無理ですよぉぉっ!」「榛名は大丈夫です」「霧島は大丈夫じゃありませーんっ!」

 

ドタバタドタバタと戦艦らしからぬ物音を立てながらも必死になってそれなりに納得のいく組み合わせを探そうとする霧島

出掛けると急に言われても大丈夫な榛名

そして出かける予定自体に異を唱えようとする比叡

 

三者三様の対応であるが、みな金剛に対して静止を試みる

 

「お姉様は服を事前に決めていても!私服あんまり持ってない私はそんなことできないですっ!それにあんなダンスもロクに出来ないような人とデートなんて!」

「あぁん?」

 

しかし、どうやらやり方が悪かったようだ

 

「次にテートクを愚弄するような台詞を吐きやがったらその汚ねえ口はトイレブラシでピッカピカに磨いてからテートクの便器にしてやるネー」

「ひえぇっ!?」

 

一瞬で凍結した空気と比叡

そして

 

「……私はあまり提督とは仲が良くありません、このデートを()()()()しまう可能性が高いかと」

「大丈夫デース!そもそもワタシとテートクのfirst contactが最悪ネー

どんなに仲悪くてもあの人なら霧島は大丈夫デース!」

 

「榛名はせっかくだから一対一がいいと思うのですけれど……」

「甘い!昨日のティータイムのシフォンケーキくらい甘いネ!グループデートだろうとハーレムデートだろうとワタシは1位を取ってみせる!それくらい言わなくて何が結婚相手デスカ!

さぁ榛名!早く格好を整えるヨー!」

「は、はい!榛名は(三越さんからもらった服と提督からもらった錨のペンダントで行くので)大丈夫です!」

 

「あわわわわっ!?

本当にどうしましょう霧島っ!」

「落ち着いてください比叡姉様

(買っていないだけでお金はあるけれど)

私たちは私服は持っていないのですから

胸を張って制服で出ればいいだけです

そもそも艦娘の制服は『その艦の在り方』を服飾としたもの、私たちにとって一番自然な格好ですから」

 

こうして、提督が先に着いた待ち合わせ地点で待っていると、

奇数番号私服、偶数番号制服の4人組が出そろうことになるのだった

600話記念番外編は

  • 過去編軍学校
  • 過去編深海勢
  • 裏山とかの話を
  • テンプレ転生者(ヘイト)
  • ストーリーを進めよう
  • 戦争が終わった後の話を!
  • しぐ……しぐ……
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