「ぁ……ぁ……」
掠れた、あからさまに病んだ声が
僅かに聞こえた、そう確信した瞬間
ジャーヴィスは方針を変更した
正面からの潜入はこれ以上は不可能と判断し、ここからは
「……」
この声がどこから聞こえているかはわからない
大本営の建物構造は機密として扱われているから当然図面などはない
けれどジャーヴィスは確信していた
この壁の向こうに、狙っていたものがあると
「よし、あとは……」
部屋に入るための、そして中に囚われている者を救い出すためのルートが必要
その思いは瞬時に結実し
彼女は天井裏に続く換気ダクトに目をつける
「うん」
小柄の彼女だからこそ、入れる場所と言えるだろう換気ダクト
そこから天井裏や壁裏に入り込むルートを使って侵入する
囚われている者に大型艦がいた場合は
最悪置いて行っても構わないのだから
自分が通れるならそれだけで十分
しかし、換気ダクトなど天井に配置されて然るべきもの、
背の低い彼女に届くものではないし、万一届くとしてもそれは絶対に怪しまれてしまうだろう
往来の絶える瞬間を選んで
素早くダクトに潜り込まねばならない
「……」
奥まった廊下で立ち止まるのはそれだけで怪しい、ただ待ち続けるだけではいけない
「…………」
左手の壁からか細い声が聞こえるなか、ジャーヴィスは怪しまれない程度の目線を飛ばして周囲を観察する
「ジャーヴィスが証拠を掴むまで俺たちに出来ることはない、ゴトランド落ち着いてくれ」
「大丈夫よ、私は落ち着いてるわ」
と言いながらも左足は忙しなく地面を掻いている
馬かなにかのようだ
「大丈夫じゃねえな……仕方ない
俺たちもジャーヴィスを探しに行くか?」
「ダメよ、作戦規定ではこのままジャーヴィスが単独潜入するんだから
そのためのカメラとマイクなのに
私たちが邪魔をするわけにはいかないわよ」
「……そうだな……」
思考をいくら巡らせても
特に有用な策は思い浮かばない
妖精達も流石に施設に潜入できるようなスキル持ちはいないし
俺の魂を見ても潤沢だった霊力はいまや見る影もない、霊力ゴリ押しが通じた過去とは違うのだ
持ち込んだ武装もスタン系ばかりだし
警備の方のケルベロスを借りたりすればともかく、今現在同行ということはない
「……できることは無いし、俺は門で待ってよう」
「私はガングートと一緒に待機するわ
……ジャーヴィス、頑張って」
こうして、俺とガングートとゴトランドは門へと向かった
「……んっ!」
壁の方に伸びていたパイプをよじ登って、ダクトに入り込んだジャーヴィス
下から見れば盛大にパンモロしているだろうが、今更構いはしない
するりとダクトに身を収めて
そのまま天井を伝って進み始める
閉じ込められた艦娘達の場所はわかれど、このダクトがそこまで到達しているかは定かでは無い
しかしジャーヴィスは迷わない
自身のそうと定めた事は決して曲げないのが己の美学、そう考え、そう生きてきたが故に
「………」
ひたすらに無言、そして静粛
ダクトの内の埃すら味方として突き進むジャーヴィス
壁の裏に到達し、天井からそっと目を出して様子を伺い始めるが
その部屋の中にいるのは
やさぐれた様子の秋津洲や座り込んだ状態の神州丸、見るからに目がイッている択捉という面々
それを連れ出して帰るのは流石に不可能と言えるだろうと判断したジャーヴィスは
部屋への突入を諦める
「さて、この状況を司令官に伝えなきゃね」
撤退完了まで、あと70分
「彼女たちの今の状況は予測できますか、加二倉少将殿」
「いや、それはわからん
現時点での状況など、それこそ当人しか知らんはずだ、ジャーヴィスが連絡を密に取るような事はないし、潜入作戦中に電波を発する携帯電話を持つなど馬鹿のする事、神巫の奴も知っているか怪しいものだな」
「……やはり、我々には手が出せないか」
「第一世代の提督は皆平和主義がすぎる、自衛隊が専守防衛故か
……行くぞ、仕掛け時だ」
機を察した加二倉少将が立ち上がる
「……13:20、このタイミングで大本営に入る、ここからが勝負だ
成否にかかわらず神巫とジャーヴィス達が撤退するのが14:30
俺達はこのタイミングで現場にいる必要がある
そこで強制捜査に踏み切るためだ」
「……なるほど、大本営のすぐ近く、車で20分程度の場所に居たのは
最初から踏み込む気だったから」
「その通りだ、そして作戦終了時に大本営で、合流ポイント近くにいるのはおかしくは無い
西門は鼎大将派と大隅大将派が昔から屯している所、俺が居ても不自然とは言えまい」
そうして、加二倉少将と甲崎大佐は大本営の門を抜けた
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