戦いたくなんてなかったんや   作:魚介(改)貧弱卿

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家族写真(偽)

「撤退完了、よし」

「出るぞ、証拠の確認はそのあとだ」

 

「ゴトランド、私たちは提督の援護だ」「分かってるわよ」

 

ジャーヴィスが帰還し、作戦終了を確認したと同時に、ゴトランドとガングートを連れた俺はさっさと大本営の扉を抜ける

そして同時に、すれ違う2人

 

「……」

「……」

「……」

 

2人とすれ違った瞬間にその手に握るものを渡した

 

 

「……あとは神頼みだ、よろしくお願いしますよ、加二倉少将殿

ゴトランドは一旦俺んトコに、ジャーヴィスは直帰な」

「分かったわ、あとはウチの提督にお任せね」「了解、先に帰るわね

結果の方、楽しみにしてるわ」

 

アトランタから借りた車にそそくさと乗って、俺がハンドルを取る

ちょっと急がなきゃいけないからな

 

「……行くぞ」

 

気分的には少し急ぎながら車を飛ばす

ちよーっと寄り道する場所もあるが、取り敢えず時間がない

 

俺が今現在は大本営に居ないことを証明できるようにする必要があるから

すぐにどこかの公営の建物に行く必要があるのだ

 

もちろんピックアップは作戦開始前に完了している、狙いは写真館だ

 

「……」

 

場所は大本営から少し遠いが、

14:30少し前に門を出ているため、かなり急げば14:50に間に合う

 

「……よし!秘書妖精!」

(ずっと待ってるの疲れました)

 

帽子の中で炎天下を耐えてくれた秘書妖精に力を借りて、それを起動する

 

妖精門(フェアリィ・ドライブ)!』

 

直後、視界は極彩色に染まり

浮遊とも落下ともつかない気色の悪い感覚に包まれる

 

(出ますよ!3.2.1.今ッ!)

 

パギイインッ!

という炸裂音と共に、車は通常空間に復帰した

 

「うぉぉっ!?」

 

ガタンッ!と音を立てて路面に沈み込むタイヤの感触、どうや復帰位置にズレがあったらしい

 

「大丈夫?!」

「大丈夫よ!」

 

(すみません、単独で妖精門は流石に難しかったみたいです……)

 

ダウンしてしまった秘書妖精は後部座席に寝かせることにして

かなーり急いで車を滑り込ませた先には予定通りの写真館

ゴトランドの着任記念に写真撮影という名目で訪れているのでゴトランドと2人だ

 

「懐かしいわね、小さい頃2人で来たの、覚えてる?」「覚えていないな」

 

もちろんそんな過去は存在しない

だって俺は過去にはこの世界にいないのだから

 

「懐かしいも何も無いな、それより早く行くぞ」

 

ゴトランドの記憶改変を無視して

そのまま館内に入る

 

「失礼します、予約していた神巫です」

「はい、聞き憶えております、カンナギ様ですね、奥方様とどうぞこちらに」

 

「……」「……んふっ……」

 

すすっと腕を取るゴトランド

なにかを間違っているらしい館の主人が向かった先に俺を引っ張ってついていく

 

「さぁ、椅子にお掛けください

写真機の調整をいたします」

 

「ゴトランド、座って」「え?私?」

 

「そうだよ、さぁ」

「ん、分かったわ」

 

すとん、と椅子に腰を下ろすゴトランド

その後ろに立った俺がそれっぽくゴトランドの肩辺りの高さの背凭れに手を置く

 

「はい、ありがとうございます

それでは撮影を行いますので、少しだけ動かずにそのままの姿勢でお願いします」

 

「……」

「……」

 

「はい、ありがとうございます

すぐに現像できますので、今しばらくお待ちください」

 

「はい」

 

俺よりも早くゴトランドが応えて立ち上がる

 

「さぁ、蒼羅さんもどうぞ座って

今度は私が後ろのやつを撮るわよ?」

「え?なんで」

 

「そりゃもちろん、夫婦としてはお互いにお互いを大切にしたいじゃない?」

「……?」

 

またもや記憶改変でも始めたのかと勘ぐり始める俺に、笑顔で答えるゴトランド

そして帰ってきた答えもまた奇妙なものだった

 

「ならどうぞ、もう一枚

なに、こちらはいつだって閑古鳥が鳴いているような古い館、お望みなら何枚でも撮りましょう」

「あら、それはありがたいわね

ご好意に甘えていいかしら?」

 

「……仕方ないか」

 

勝手に話が進んでしまって仕方がないので、お望み通りにゴトランドが後ろに立って、俺が座った形式のものを撮る

 

「これ……格好つかないなぁ……」

 

「いいのよそんなのは、私が撮りたいんだから撮るの、格好つけたいならいくらでもつけていいから、ね?」

「……仕方ないか」

 

「ハハハ、奥方様はずいぶんと元気がよろしいようで」

「そうね、私に比べれば蒼羅さんは大人しすぎる気がするくらいに」

 

「元気がなくて悪かったな」

 

写真を撮り終えても老主人と話し込んでいるゴトランドを引き剥がして(比喩)

写真館を後にする

平成を過ぎた令和の時代で明治式の写真に意味があるわけではないが

この来館は『来館して写真を撮った』ことに意味がある

 

主人が見ていた館の時計は実は一時間分ズレているのだ……これについては

事前に潜入特化型の艦娘を使って加二倉少将がやってくれたことなのだが

つまり、俺たちは14時には帰ったことにできるわけだ

 

「ゴトランド」

「なに?」

 

車の中でゴトランドに話しかける

「送るけど、場所はどうする?甲崎鎮守府まで行くか?」

「まさか、創海鎮守府までで十分よ

そこからは自前の艤装で帰らせてもらうわ」

 

「いや船を使ってもかなりかかるぞ?」

「大丈夫よ、私だって強いんだから

レ級だってエリートクラスじゃなきゃ勝てるわ」

 

いかにも自信満々といった様子のゴトランドに一つため息をくれてやってから

「せいぜい怪我をしないようにな」

 

負け惜しみのような一言を贈った

600話記念番外編は

  • 過去編軍学校
  • 過去編深海勢
  • 裏山とかの話を
  • テンプレ転生者(ヘイト)
  • ストーリーを進めよう
  • 戦争が終わった後の話を!
  • しぐ……しぐ……
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