「ただいま、帰ったよ」
「おかえりなさい、司令官」
扉を潜った俺を迎えてくれたのはなんと陽炎、出迎え担当だった吹雪はついにリストラされてしまったのだろうか
「里見さんの手術は30分ほど前に終わったわ……」
そっと言葉を添える陽炎だが
その表情はどことなく暗い
「まさか」
「えぇ、成功よ、自爆機能付きの盗聴器は発見できたわ……ただ、摘出作業の完了直後に爆発したせいで無菌室が悲惨なことになってしまったけれど」
「うわ……」
暗い表情だった理由が犠牲者でなくて良かったが、そうなると当分の間は大規模な手術は行えないものと見た方がいいだろう
部屋の修復はどこに依頼するのが良いだろうか
「青葉さんも里見医務官も無事よ?」
「それはよかった……不幸中の幸い、と呼ぶべきかな?」
幸いなのかどうかは少しわからないが
とりあえず命に別状がなければそれで良いとするか
「青葉さんは入渠に行ってて、里見医務官は自分の腕に刺さった破片の摘出作業やってるわ
それ以外なら特に問題なしよ」
「それは問題以外の何者でもないのでは……?」
「私も忘れてたけど、あの人元戦闘部隊よ?艦娘の代わりに深海棲艦と戦ってた事もあるんだから、これくらい平気平気って言ってたわ」
「……そーだったな」
そういえば彼は新人類ナントカの強化兵士で体を強化されているんだった
そりゃ腕に鉄片が刺さったくらいでどうこうという事もないだろうな
「サイボーグとか機械化兵士とか異世界人とかうちの鎮守府は特殊な人材が多いなぁ……」
「そうね、私もそう思うわ
取り敢えず私は……夜哨戒だからもう寝るけど、せんぱいはどうするの?」
「俺?俺はちょっとする事あるから執務室にいるよ、出撃の時は出迎えやるから
そこまではお別れだな」
「……そうね、おやすみなさい」
陽炎と分かれた俺は、そのまま執務室へと向かう
「……ガングート、お前はついてこなくていいぞ」
「任務はまだ終わっていないのだろう?任務が完了するまでさ決して油断しない
これは常識だ」
「それはそうだが、俺たちのできることはもうない、俺たちに取っての作戦はここで終了だ」
「……了解した」
すっと反転して戦艦寮へ向かうガングート
その背中を見送ってから、大きくため息を吐く
「はぁ……」
「お疲れ様ね」
「姉さんか、驚いたよ」
「驚かせたのだもの、当然よ
……ほら、おいで」
「ん」
すっと姉さんに抱き寄せられ、その腕に収まる
「集中力を使いすぎたのね、お疲れ様」
「ん〜……」
腕から抜け出そうとすると締め上げてくるので、一旦抵抗を諦めたところ
そのままどこぞへと輸送するつもりのようで
「はい、着いたわ」
ようやく離されたところで目を開けると
そこは布団が敷かれた自室
「今は疲れすぎているから、いったん眠りなさい、話はその後からよ」
「わかった」
思考が散漫なのは自覚していたため、軍服の上を脱いでハンガーに引っ掛けて
そのまま布団に寝転がる
「こら、ちゃんと下の方も脱ぎなさい
せっかく寝巻きも用意したんだから」
「だったら部屋から出てくれ、いくら姉さんでも流石にそれはキツい」
「姉でも妻よ、気にしないで良いわ」
「俺は気にするんだよなぁ……」
そもそも姉兼妻というクソ気色悪いパワーワードが飛んでくる時点で事案だ
「……そう、なら仕方ないわね」
後ろで足音が鳴る
扉が閉まった音が聞こえた
「……」
出て行ったのか、そう判断した俺がうつ伏せから仰向けの姿勢に反転すると
そこには、上着を脱いでサラシ姿の姉さん
「……は?」
「ほら、これで良いでしょう?
私は脱いだから、貴方も脱ぎなさい」
「……そういうゲームとかじゃないんだけど」
「早く、早くしなさい蒼羅」
「……わかった仕方ない、でも後ろ向いててくれ、絶対にこれは譲れない」
「わかりました」
背中合わせであってもなかなかの緊張を強いる空気に耐えながらさっと寝巻きに着替える
「……逃げたわね」
「明らかにソレは今日じゃないしな」
「そうね、仕方ないわ
それじゃあ私はもう行くから、しっかり寝なさい」
上着を着直してこちらに向き直った姉さんと目を合わせる
さっきまでの怪しげな目つきではなく、普段の透き通る瞳がそこにあった
「はいはい、おやすみ」
「……おやすみなさい、そら」
姉さんはさらっと俺の脱いだ軍服のズボンの方もハンガーに掛けてから部屋を出て行った
「……破壊力高すぎない?」
いくら現在形では血縁のない人物とは言え、認識上の関係性は実の姉
その身体にどうこうということは無い……と思いたいが、どうあがいても魅力的に見えることは事実
理性が衝動を抑えこめているうちに対策を考えなくてはならないだろう
600話記念番外編は
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テンプレ転生者(ヘイト)
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ストーリーを進めよう
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戦争が終わった後の話を!
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しぐ……しぐ……