戦いたくなんてなかったんや   作:魚介(改)貧弱卿

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後片付けと夜明け

「……こっちのすることは終わったけど、これどうする?」

「掃除ですよ、まずはそれです

あとは殺菌を徹底的に、機材もだいぶ壊れてしまったので買い直しですね」

 

20時頃、今日分の仕事も終わらせて暇になったのでこちらから出向いてみると、里見君はまだ掃除を進めていた

 

「手術室はいつでも開けられる状態でなくてはいけないのだから、速やかに業務を再開するために掃除しているだけです……まぁ、少し駆逐とか、小型の子には手伝ってもらいましたがね」

 

「夕雲や速吸と一緒にか?」

「よく分かりますね」

「速吸はこの頃君のそばによくいるからな、夕雲は……うん、もうそのままくっついてしまえと何度思ったか」

「ちょっと!やめて下さいよそんな無茶な話!」

 

勢いよく否定する里見君

だが、その瞬間

扉の裏から何かが動くような物音が聞こえた

 

「……もしかして……いわゆる」

「乙女ゲーの鉄則…?」

 

壁裏で『無し』的なセリフを(都合の悪い部分だけ)聞いてしまったやつではないだろうか

などとかなりあり得ない思考をしていると、里見君は走り出した

 

「……行かせよう」

 

もしこのまま寿退職してもそれはそれだし、深海棲艦との戦いも収束に向かう頃合い

医務官が必要になるケースは少ないだろう

 

「……教えてくれ川内、俺はどうしたらいいんだ……」

「私はゼロシステムか!?

とりあえず掃除やってあげたら〜?」

 

「川内ゼロカスタムエンドレスワルツバージョン最終決戦仕様……」

「もう絶対一行で収まってないじゃんそれ」

「むしろ二行目も埋める勢いだな」

 

二人して置いてあったモップとホウキを取り、そのまま床や壁際にわずかに残るガラス編やプラスチック片を片付けて、アルコールを付けたクロスで天井近くから拭き取りを行なっていると、ようやく里見くんが帰ってきた

 

「23時、ずいぶん遅くなったな」

「あの子がどこに行ったのかと探し回っていたもので」

 

「それで、結局誰だったんだ?」

「夕雲です、ちゃんと誤解は解きました」

 

「それで!指輪は渡したの?!」

「バカやめなさい川内!」

 

横から飛び出してきた川内を押さえようとすると、里見くんは笑った

 

「自分にはそんなことはできませんからねぇ

諦めてもらいましたよ」

「……そっか」

 

「……」

 

川内のポカのせいですっかり重い空気になってしまったが、医務室の掃除はこれで完了しているので、ひとまず休むように言う

 

「ほら、こう言うときは夕雲と一緒にいてあげないといけないからね」

「僕を殺す気ですか!?」

 

「絞り殺されるほど絞られるのか……」

「うわぁ……頑張れさとみん……」

 

「ちょっ!!」

 

コミカルなやりとりをしながらもひとまずの作業進捗を伝えて

 

「お疲れ様です、それじゃあ俺たちは引き上げるから」

「あとよろしくねー」

 

「はい、お疲れ様です

僕も今日のところはここまでとします、お疲れ様でした」

 

とても、とても長い一日が終わった

 

「おつかれーー」

「お疲れ様」

 

提督室のベッドに横たわって

当然のように入ってくる川内と目を合わせる

 

「……お前風呂入った?」

「ちょっと!流石にそれはひどいと思うよ!デリカシーが足りない!」

「いや俺は昼に寝たあとシャワー浴びたし、お前はどうなんだって」

 

暴れる川内を放り出してベッドを占領した俺は冷静に川内に視線を向けた

 

「女の子の匂いとか言い出しちゃダメなんだからね!」

「……ギャルゲーじゃないんだし」

 

ため息をついてゴロリと体の向きを変える

部屋の内側を向く姿勢から壁の方へと向いて、そのまま目を閉じた

 

「ちょっと勝手に言っといて寝るとか何考えてんのこのおバカ提督ーっ!」

 

あー、あー、聞こえなーい

とバカみたいな応酬を繰り広げながら

結局そのまま二人して眠ってしまったのだった

 

「おはようございまーす」

 

朝っぱらから起こしに来てくれた夕張をビビらせてしまったが、それだけなら別に問題はない

 

「ねーていとくー、はやくごはんつくってよー」

「幼稚園児かてめぇ……」

 

子供のような駄々をこねる川内にわざわざ朝食を振る舞い(結局朝食を用意する間でシャワーを浴びた)

 

食後にコーヒーを与えて

猫のように恐る恐る飲んでいる川内に視線を注ぐ

 

「トーストはうまかったか」

「うん、でもさ……提督、味覚ないのによく料理できるよね」

「ついでに視覚も無くなってきてるしな、でもほら、焼き色とか温度とかで大体わかるし、以前調味料の味の強さは把握してるからどのくらい入れれば良いかはわかる

まぁだからって試食抜きでぶっつけって訳にもいかないし、今のところ出すとしたらお前にだけだよ」

 

川内から向けられた視線は

うわマジかコイツ、という呆れと同時に

独占欲のような意思を感じるそれ

 

「目玉焼き上手に出来てるのなんか腹立つ」

「悪かったな手先が器用で」

 

インスタントの粉を熱湯に溶かして氷をぶち込んだヌルいコーヒーを一気飲みして、プレーントーストをかじる

やはり食感はわかるが味は不明

紙とさして変わらない

 

「はぁ……ご馳走様」

「ご馳走様でした、提督は先に行ってて

私は食器片付けちゃうから」

「頼んだ」

 

俺は川内の申し出に従って

軍服の上着を羽織って執務室へと向かった

600話記念番外編は

  • 過去編軍学校
  • 過去編深海勢
  • 裏山とかの話を
  • テンプレ転生者(ヘイト)
  • ストーリーを進めよう
  • 戦争が終わった後の話を!
  • しぐ……しぐ……
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