戦いたくなんてなかったんや   作:魚介(改)貧弱卿

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番外話、雨上がりの空

「っぽいっ!」

 

白露型の朝は早い

毎日のように犬の鳴き声で起こされ、散歩に付き合わされてはクタクタの身体を休める時間もない

 

「ふぁ、、あ、ふ」

 

「ほら時雨!早く早く!」

ぴょんぴょん飛び跳ねながら

夕立がなにか言っている

「それは卯月と時津風に任せたらどうだい?

君の役はぽいぬだろ?」

 

僕の静かな抗議は騒がしい夕立には聞こえなかったようだ

「鎮守府内に侵入者がいないか巡回してるだけっぽい!」

 

いつも君は元気だねぇ

「はぁ、、医務官さんは戻ってきてくれた、鎮守府も活気を取り戻している、医務官さんに庶務は出来ないから

限定的に一番執務の上手い秘書艦の大淀さんと金剛さんが提督の代わりに執務をやっている」

 

一応現状確認を行っておく

ここ最近の一番の変化はそこだろう

医務官さんが帰ってきてくれたから、代理人は事務的だった治療も、入渠も温かみを感じられるものになった

任務中にも帰投が楽しみと言い出す艦娘もいる

 

ただ、艤装の調子が悪い

佐世保の提督さんから貰い受けた予備パーツは提督になったらしい司令官が技師時代に作って、離任の手みやげにしたものらしいけど

流石に半年は持たなかったようだね

久しぶりに疲労気味になってしまって困惑していた艦娘達が印象的だった

 

彼のメンテした艤装は

なんというか、落ち着く

長年過ごした家のように、自分に馴染む感覚があって

考えるのと同時に、行動に出るより早く艤装が動く、そんな『手足のように』操れるものが急に動かし辛くなれば

扱いにも苦労すると思う

 

「時雨?どうしたっぽい?」

 

「どうもしないよ、大丈夫さ」

再びの質問に答えながら歩く

巡回なって言っても

実際は一棟を歩き回るだけ、か

「これじゃあ本当にお散歩じゃないか」

「ぽい!巡回っぽいっ!」

 

あくまで巡回なんだね

 

というか午前七時だよ、

総員起こししなくていいの?

朝は僕も好きだけど、

時間がなくなってしまうよ?

 

「0700、ごっはんーごっはんー、あっさごっはんー!」

 

本当に総員起こしはしないんだね

まぁ秘書艦指定されているわけでもないからいいか

秘書艦が起こすわけでもないけど、その辺は良識ある艦を僕が起こして回れば十分にカバーできることだと思う

 

駆逐艦が多いこの鎮守府でも

軽巡はいるし空母の蒼龍さん、戦艦の長門さん、金剛さん以外には重巡、雷巡、

大井さん、羽黒さん

が揃っている、、まぁみんな何かの理由で部屋から出ない、コミュニケーションが取れる状態にないという問題があって、接するのには危険があるから

無理に起こさないという方向で意思統一は済んでいるからいいかな?

 

僕が起こすのは、雷をはじめとした第六駆逐隊、天龍さん、帰ってきた龍田さんの天龍型軽巡

あとは陽炎型のみんなで十分かな?

 

残念ながら僕は暁を良識あるレディとは呼べないから、起こすのは雷からにしよう

 

さぁ、仕事にかかろう

「夕立、朝ごはんの前にみんなを起こそう

さぁ、一緒に」

 

「っぽいっ!」

 

夕立を連れて、艦娘寮へ行く

寮はまだ静かだ、

一部艦は帰ってきた頃だし

配慮ある艦は静かにしているか本棟にいるし、提督退任を機にこの鎮守府から転属していった艦も多いから

寮そのものがうるさくなる機会に乏しいというのもあるけど、一番の要因は朝だからかな?

 

「さぁ、みんな起きて」

 

艦娘を起こすのはなかなか苦労する

みんな疲れてるから眠りが深いのだ、、技師さんの影響がこんな所にまででてくるなんて思ってなかったよ

 

「もう朝だよ、起きて」

とりあえず黄色のチェック柄パジャマの雷を起こしてみる

 

 

「にゃのれすぅ」

 

なのです言えてないよ、

電ちゃん、、雷と間違えちゃったし

「起きて、ほら朝だよ」

「zzzz」

 

「朝ごはんだよ?」

「ごはんっ!」

先に暁ちゃんが起きたね

 

「はっ!レディはご飯に気を取られなんかしないわ!」

自分はレディでは無いと?

成長したなぁ、、

 

「すぅ、、すぅ」

ピンク色のチェック柄パジャマで寝ている雷に声をかける

「雷、0700だよ」

「んぇ、、あしゃ、?、おきなきゃ」

 

こんな雷も可愛いなぁ

 

「 」

こっちは水色の花柄パジャマの

響ちゃん、寝言もないのか

「物静かちゃん、司令官の帽子が逃げるよ?」

ちょっとだけ、意趣返ししよう

「えっ!?司令官っ!」

すごくパッと起きた、

ずいぶん寝起きが良くなった様だ

枕元に置いてあった帽子を素晴らしい反応速度で捕まえ胸元に抱いて

落ち着いた様に吐息を零してから

 

「騙したね、時雨」

「なんのこと?」

 

「嘘をついたね」

「だからなんの?」

「司令官の帽子が逃げるって言った」

 

「冷静になってよ、帽子が勝手に逃げるなんてありえないだろう?」

「それでもだよ、私はもうこれ以上大切な物を奪われたくないんだ」

 

涙目になってしまった、

流石に悪かったかな?

 

「ごめんね、響ちゃん

 

さぁ朝だよ、今日はいい天気だ

窓を開けて」

 

「うん、、」

第六駆逐隊のみんなを起こしたあと

僕は夕雲達陽炎型の元へ行く

 

特型は数が多いから夕立が先に行ってる

あれだけの声量で朝の挨拶を食らえば、ねぼすけ達も起きるだろう

 

「おはようみんな!」

「ぅん?、、おはよう」

「おはようごらいます、、なんれすか?不知火になにか落ち度れも?」

 

うん、すでに発音が出来てないと思うよ?

 

「黒潮さん、起きてますか?」

 

親潮、黒潮はこの鎮守府にはいないよ?

 

本来なら多いけど、陽炎型は未着任の陽炎、雪風や時津風を除いて、轟沈してしまっている、僕たちもそう、白露型も村雨、白露、海風が未着任、僕と夕立以外は轟沈か転属か解体されてしまった

 

だけど、僕たちは辛い思い出を乗り越えた、提督の退任が決まって、雨は止んだ

 

「今日は珍しく晴れてるんだから、朝ごはんを食べたら外に出てみようよ」

まだ雲は多いけど、

それでも雨は上がった

 

僕たちはまだ、進める

 

「待ってるよ、司令官」




久しぶりに「玖条時雨」回です

何故って?
夜にパソコンの前で
『時雨さんを僕にくださいっ!』
と叫びながら土下座してから建造したら時雨が出たからです

600話記念番外編は

  • 過去編軍学校
  • 過去編深海勢
  • 裏山とかの話を
  • テンプレ転生者(ヘイト)
  • ストーリーを進めよう
  • 戦争が終わった後の話を!
  • しぐ……しぐ……

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