戦いたくなんてなかったんや   作:魚介(改)貧弱卿

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深海、、深海?


番外話 deep Garden

「ふぅ、、はぁ、、よし!」

今日も息を整えて、さぁ始めよう

 

「毎日それやんなぁ、、そないな深呼吸ばっかして疲れへん?」

 

私の友人である深海棲艦:軽空母ヌ級にして艦娘:龍驤(RJ)がいつも通りニセ関西弁で話しかけて来ていた

「疲れないわ、慣れてるもの」

 

一種のルーティンでもあるので

慣れきった動作だそれに深呼吸は精神を落ち着かせる以外に、多量の酸素を取り込む為の行動でもある

 

「今日はどうするん?

まさか資源だけ回収してそこらの海域漁り回るとか言わんなぁ?」

 

「失敬な、流石にそんな事しないわよ、でも」

「でも?」

 

「この前、会った蒼龍と響はどちらも充実してそうだったわね、私が轟沈したのは一年以上前の話だけど、あの子達は忘れないわ」

私の言葉は龍驤に届いたか、それは分からないけど、龍驤は

 

「せやなぁ、元一航戦としては二航戦の成長は有難いところやけど、聞く話によると空母艦はもうあの子だけらしいしなぁ」

 

「それどこ情報ですか?」

思わず敬語になった私を滑稽と見たか

龍驤は、ブフッ!と些か以上に下品で失礼な音を立てて吹き出し

「フフッ!、、イヤぁ、プッ!

単に、クスクス、、そこらの深海組から聞いたら最近空母出て来とらん言うててな?最後に今まで沈んだ空母たちとも接触したけど、だいたい轟沈、少数転属らしいわ」

 

「流石に笑いすぎだと思います」

 

「プッ!だっておもろ過ぎるわ!

突然敬語になる一航戦の青い方って」

「頭にきました」

 

私の払った手が

深海に転がっている鉄鋼の棒材を捉え

「フッ!」

それが振るわれて泥から抜け

自身が纏っていた泥を撒き散らしながら龍驤へ迫り

 

「いっくら深化してるからって

直情的になりすぎや」

 

ヌ級の牙で止められる

 

「うわっ!泥ついてもうた!

洗わんと…」

 

「どうせすぐ落ちるでしょう、ここは水中ですよ」

「正確には深海な。」

二人して笑う、どうも深化してから感情的になりやすい気がする、、まぁいい

その程度、些事に過ぎない

 

「一緒に行きますか?私たちは高練度艦ですからドロップも出来ますよ?」

 

「冗談、あの提督な元になんか帰られへんわ!いやでもアンタの弟は確か司令官とか言われてたなぁ」

 

ビクッとしました

「もしかしたらアレも提督になっとるんやない?そしたらドロップされに行きゃいいやん、所属艦ならケッコンも出来るやろ?」

「はにゃっ!?」

 

「ブフゥッ!!!」

 

海水を吐き出すヌ級、、

思わず変な声を出してしまった私も私ですが、龍驤は笑いすぎだと思います

 

私は近寄って来る龍驤を制止して

「なんやその声ぇ

 

わろてまうわ ウチの腹筋ねじ切らんといて 」

 

本気で苦しそうだったので

救助に入ろうかと一瞬考えたが

やめた

 

どうせ龍驤とて改フラグシップなのだ

そう簡単には死なない

放置しても問題ないだろう

 

五分ほど経った、流石に笑いは収まったのか

静かになった龍驤は目を閉じて口を開く、その瞬間、頭の中にアラートが鳴り響く

 

襲撃だ、

 

どうもこの拠点は探知されていたらしく

艦娘が来ているので

迎撃しないと、、旗艦はどうしようか?陣形は?武装は?深海棲艦側には一切の考慮の余地がありません

 

艦娘時代は作戦を考える時間もあったし、迎撃にも余裕があったものだが、敵になって初めてわかる時間のありがたみというものですね

 

「はぁ、、面倒な」

いつものヲヲヲモードに入り

浮上して、ヲ以外いうのをやめる

こうすれば艦娘は低脳な雑魚艦だと勘違いするから有利に出来るでしょう

 

 

襲撃のタイミングによほど自信があったのだろうか

私たち以外に警戒する様子もない艦娘たち、みたところ重巡、空母で編成された重量級艦隊

周辺の雑魚艦達を瞬殺して時間をわざと掛けて

ゆっくり移動して来たのかしら

 

海軍も無駄な事をする、、時間が夕方なのに空母を出すなんて何をしたいのか分からない

 

夜に入れば空母は副砲積みでもしない限り戦力は大幅に低下する、重巡の妙高改、鳥海改二、摩耶改二のうち、脅威になるのは夜戦の鳥海と対空の摩耶、全体的に私たちを意識した編成だし、人気のある艦だ

 

空母赤城改、瑞鶴、瑞鶴は念願の胸部装甲(トリムネニク)を得たらしく、テンションが高い

 

最後に、、大鷹改二

 

何しに来た?本当に夜戦するつもりなのか?夜戦火力より昼連撃の方が得意なんじゃないのか?

 

私は一瞬混乱し掛けたが

即座に気を取り直して、まずは

(ごめんなさい赤城さん、私の知る赤城さんでないとしても貴女が《赤城》である事に違いないというのに)

 

赤城を狙う、瑞鶴は後回しだ

どうせ装甲空母は大破まで粘る

そんなのに戦力を割くよりまず敵艦の弱点を突き、隙を作ってから叩き潰す

 

それが一番効率が良い

 

「ヲッ、ヲヲッ!」

 

ヌ級に指令を出す、そして

「「第一次攻撃隊、発艦始め(ヲ&ヌ)!」」

 

二人で艦載機を飛ばし、摩耶の類い稀な対空能力を警戒し

急上昇で砲撃圏ギリギリを過ぎて行く

それでも1割ほど落とす辺りはさすがとしか言えない

 

けど、、上に集中しすぎです

 

「!」

ヌ級が突如水中に消える

 

「なんだ、?見捨てて逃げた、のか?」

「一人になったって容赦しない!」

 

摩耶はともかく瑞鶴は血気盛んですこと、そんなんだから貴女はいつまでたっても五航戦なんですよ、なんて、私が言えた義理ではありませんが

 

「ヲッヲッ、、ヲ」

軽空母と正規空母、

二隻分の艦載機を操り

空中から高高度強襲爆撃をかける

「「きゃあっ!」」

「あっぶね!おい赤城!」

 

「まだっ!」

 

圧倒的な多数での爆撃に

範囲内にいた艦娘達は被弾し、幸運にも外れた、または実力で避け、迎撃した艦娘も姿勢を崩した

 

 

そして

夕焼けに背を照らされながら

私はヌ級が拠点から持ってきた砲を構えて

副砲ガン積みに高速換装したヌ級と共に

大火力による集中砲火を行う

少し変則的だが十字砲火といえるだろう

 

左右三十度程と上だと

X字に見えるのは確かだが十字には見えないかしら

 

 

「流石に沈んではくれないわね、、」

何より艦娘は一戦では沈まないという妖精の加護があるため、大破進軍させてから討ち取るしかない

 

「こっちも行くわよ!」

艦娘達は艦載機を飛ばして航空戦を再び開始しようとするが、その瞬間、誂えたように日が落ちた

 

「なっ!」

「もう夜っ!?」

 

「ヲっ、、ヲヲッ!」

夜戦に入って視界が悪くなった瞬間を狙い、砲撃連射で牽制しつつ航空攻撃を行う

艦娘にはできない夜戦航空攻撃

受けて見なさい

「くっ、、迎撃だっ!」

しかし、真っ当な体勢でもない艦娘達の無理な射撃で圧倒的な数の艦載機を落とせはしない

 

「出てきた艦娘達もそこまでの性能でも無かったかしら

一気に決めましょう」

 

砲撃を曲射に変更

魚雷を手投げ、あらゆる手段を持って連続攻撃を仕掛けて

「やられてしまいました、、」

大鷹中破!

「あぁーっ!」

鳥海中破っ!

 

「ヲヲッ!」

摩耶をやれと声を飛ばしてから

自分は摩耶の元から艦載機を引き揚げさせ

小破の赤城を狙う

これを落とせば瑞鶴、妙高以外に無事な艦は居ない

撤退を始めるはずだ

 

え?()()

 

まずい!注意しないといけない艦を見失った!

 

その瞬間、背後から砲弾が私へぶつかる

間違いない、アイツだ!

 

「ヲッ!」

即座に反転、砲を向け、発射

この間0.1秒

後ろにいた妙高はそれを軽々と回避して

砲撃してきた

 

そして、私に火力が集中する

砲が破壊され、帽子艤装にも大きなダメージが入った

 

「まさか、、」

そう、重巡三隻と瑞鶴による一斉攻撃

私は撃墜されて行く艦載機を追加する事も叶わずひたすらに回避を繰り返して

 

「ぐぅっ!」

ヌ級の被弾を見た

爆煙を上げながら痛みに耐える龍驤は

空母達の牽制で誘導されて

妙高に狙われたのだ

 

このままでは、龍驤が沈む、、サルベージなんか考えてないコイツらの攻撃で、仲間が奪われてしまう

 

ダメだ

それはダメだ

 

「沈ませないっ!龍驤(仲間)は守ってみせるっ!」

もう、あんな体験は二度と、

しないっ、、!

 

私の周囲のオーラが暗く、暗く染まる

「なに?、皆さん一旦下がって!」

赤城さんが皆を下がらせる、その間に私は艦載機を龍驤に渡して、引き戻す

 

私の周囲のオーラが私を包み

海底の鉄屑が周囲に集う

 

鉄屑は私の中へと入り込み

怨念とともに私を作り変えていく

 

悪しく、悍ましく

そして恐ろしい存在へ

 

強く、忌まわしく

そして呪わしい存在へ

 

「ヒノ…カタマリトナッテ……シズンデイケ!」

 

私は新生した

あらたなる姿の名は

 

 

そう、私は「空母棲姫」

愕然とする艦娘達と相対して

進化に伴って補充された艦載機を飛ばす

 

一番(アレフ)欠番 二番(ベート)出撃三番(ギメル)未補充四番(ダレット)臨戦五番(へー)出撃六番(ヴァヴ)搭乗中七番(ザイン)臨戦八番(ヘット)出撃九番(テット)搭乗中十番(ユッド)補充要員

総員出撃

 

「各員持ち得る全火力を持って

敵艦隊を攻撃せよ」

 

命令を下す

 

攻撃は苛烈にして精密

針の穴を通すような精密行動で編隊飛行し、すり抜けざまに爆撃

赤城を大破にまで追い込む

 

 

これで空母は瑞鶴以外が戦力外

妙高はともかく鳥海と摩耶は損傷も大きい

瑞鶴と妙高を落とせば作戦完了といえるだろう

 

「砲撃できる?」

 

一応下がって戦線を整える、と言うほどでも無いが

敵味方を分けるために龍驤とともに十メートルほど下がる

「状態は中破、まだ、、

撃てる!」

 

龍驤の返事を聞くや否や

私は砲を構えて

それを察した龍驤が副砲の無事な分を展開すると同時に撃つ

揃った砲声は夜の海へと響き渡り

回避を試みた瑞鶴の後部甲板を抉り

大破艦を庇った妙高に直撃し、

彼女を大破せしめた

 

「モウ…ワカッタデショウ

瑞鶴…」

 

「そのこえ、、うそ、、」

私の声が聞こえるの?

 

「加賀さん、、なの?」

「アァ…モウ…ナンデ…

…ナンデコウナルノヨ…」

 

互いに刃を向け合う存在が

かつての仲間なのだと知られてしまった

「ヌッ!」

ドゴン!と再び龍驤が発砲し

中破だった摩耶を文句無しの大破にまで壊し

瑞鶴を警戒させる

 

「私タチハ…シズンダノヨ…

敵二一々情ヲカケナイデ!」

 

私は震える足を意地で抑えて

瑞鶴へ砲を向け直す

 

「加賀さん、、なんで

なんで、、貴女がそんな事に」

 

「シッカリシナサイ!敵二砲ヲ向ケラレテ、項垂レテ待ツ艦ガドコニイル!ソレデモ()()()カ!」

 

私の声に、ビクンと体を震わせる瑞鶴を

私の艤装は容赦なく狙い撃つ

 

「まだです!」

唯一中破で済んでいた鳥海がその身を捧げて瑞鶴を護り、引き換えに今にも沈みそうな程に傷ついてしまう

 

「そんな、、加賀さん!」

 

「私ハ空母棲姫!加賀デハ無イノ!」

 

「じゃあ!だったら…なんで泣いてるのよ…」

 

「私ハ深海棲艦ナノヨ…

泣ク筈ナンテ、無イワ…」

嘘だ、、私の、私自身の思考は冷静に現実を見て、私の頬を伝う涙に気づいている

 

しかし、それとは関係のない冷え切ったナニカが、私の体を動かして、砲を放った

 

着弾

 

爆発

 

煙を上げて痛みに悶える瑞鶴を見ながら

それを嘆く私と嗤う私がいる

 

なぜ?

 

「もうやめて!加賀さんっ!」

赤城さんが前に出てきて、

大破した瑞鶴を庇う

でも、もう貴女も大破してるんだから、沈みましょう?

 

「シズメ…沈め」

 

艤装の用意したプリセットから外れて

私自身が誘う

そう、深海なら

何かに邪魔されることもない

 

ずっと、、一緒に居られるでしょう?

 

「よせ加賀っ!」

龍驤、、いや

ヌ級ごときが私に、、

「コノ空母棲姫二指図するな!」

 

砲撃、爆撃、雷撃あらゆる攻撃で撃ち続けて赤城や瑞鶴たち、前にいた艦娘を傷つける

 

 

「加賀っ!戻ってこい!」

 

「ダカラ、、煩いっ!」

騒がしいヌ級を振り切り、攻撃を続行しようとする

 

が、その瞬間に

体に衝撃が走る

 

「これ以上は無駄や、、帰ってこい加賀。

でないと、私がアンタを沈める事になる」

 

再度換装したらしい副砲から白煙を上げたヌ級が、赤城たちの前に立ち

こともあろうか、艦娘(テキ)を庇う仕草を見せていた

 

 

「ヌ級、邪魔するナ、、ワタシハ

仲間の為二、、」

 

「その仲間に砲を向けとるのは誰や!

お前自身やろ!加賀!

深海に引っ張られすぎや、

それじゃ貴女じゃないでしょ!」

 

衝撃だった、、

「私は、、いつから、、

コンナに外れて、、」

 

後ろの艦娘()達、、いや艦娘()達を、、私は傷つけようとしていた

 

 

「なんかよくわかんないけど

チャンスだ、撤退するぞ!」

 

「ええ、、主機損傷はない?」

「「大丈夫です」!」

「まだ動けるわ、、」

 

私の体は勝手に動き、爆撃部隊を差し向けようとする

「やめて、、止まってよ」

 

ギリギリと軋みを上げながら

艤装は駆動して

絶望の声を上げながら

自らの意思で私を裏切った

 

「やめて、、もうやめてっ!」

「加賀っ!」

 

勝手に爆撃を始めた艦載機達に

龍驤が突っ込み、自らに爆撃を引きつけ

直撃、爆発炎上

 

「ウチ、、ちょっち疲れたわ

ごめん」

私の目の前で

深海へと堕ちていった

 

「そんな、、もういや、、」

 

敵を見せられて

友を傷つけて、守りたかったものさえ

自らの手で壊してしまった

私は、役目を終えたように崩れ落ちる艤装を睨みながら

 

私は去りゆく艦娘達を見送った

 

「龍驤、、ごめんなさい」

 

涙を抑えながら呟く

 

「うん、ええよ

許したげる」

 

背後から聞こえた声に

思わず振り向くと

そこには無傷の《龍驤》が立っていた

 

「ドロップしてみたんや、、どう?久し振りの衣装やけど

 

似合っとる?」

 

微笑む彼女を

つい抱きしめてしまった私は

きっと悪くありません

 

「龍驤、、ありがとう」

 

今は、

万感の思いを込めて

ただ一つの言葉を贈りましょう

 

ありがとう




うんこれは深海ですね(棒読み)

600話記念番外編は

  • 過去編軍学校
  • 過去編深海勢
  • 裏山とかの話を
  • テンプレ転生者(ヘイト)
  • ストーリーを進めよう
  • 戦争が終わった後の話を!
  • しぐ……しぐ……

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