高校生達が神社を訪れる話。

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狐の後悔

 底抜けに青い空、悠々と広がる緑。僕は、そんなところに迷い込んでいた。事の発端は多分、友達が近くの神社に遊びに行こうなどと提案したことだろう。そいつはオカルトとかそういうのが好きで、よくそれ関係の本を買っていた。実際に読んだことがあるかは知らないが、そいつの家には並々ならぬ量のそういう本があったのは事実だ。あれらをちゃんと全部読んだのだとしたら見上げたものである。それはともかく、そいつが地元の神社に曰く付きの祠があるという情報を入手し、会話に持ち込んできたのが原因である。都合の悪いことにこういうことに関しては悪ノリしやすい奴が一人いた。そして僕の大まかな人間関係は僕を含めたこれら三人で構成されていたため、何の問題もなくその祠を見てみようという話になったのである。 さて、オカルト好きな奴と悪ノリしやすい奴という呼び方でもいいが、いかんせん回りくどいため、これからはそれぞれ高橋と伊藤ということにしておこう。別に区別して覚えやすければなんでもいいけど。ともかく、その神社は徒歩で行ける距離だったから、その日の放課後すぐに行こうという話になった。僕は本当は断りたかったけど、言い訳に使えるような事は何もなかった

し、伊達に長く付き合ってないだけあって生半可な嘘はバレてしまうため、おとなしくついていくことにした。それに小さいコミュニティを一つしか持っていない人間がそのコミュニティでやっていけなければ、孤立するのは必至だろう。どちらかと言うと僕はそっちのほうが嫌だった。そして放課後、僕達はまっすぐその神社に向かった。

 その神社は稲荷神社だそうで、それなら油揚げの一つでも持っていったらどうだとオカルト好きな高橋に提案してみたが、彼曰くなまじ捧げものをするより、バレないようにするほうがいいということだ。それが一体どこまで信憑性があるのか知ったことではないし、なんなら全部高橋の妄想かもしれないのだけれど、特段反対する理由もなかったから途中で油揚げを買いにどこかに寄るということをしなかった。今考えると、ここで少し無理を通してでもどこかへ行って、適当な言い訳でもして帰ればよかったのかもしれない。あくまでもたらればの話になるけど、それでもこの空間で何も考えないでボーっとしてるよりは多分ずっといい。

 そうして僕達は神社に着いた。高橋も伊藤も興奮気味で、僕はそんな彼らを見て呆れたりしていた。件の祠は少し奥のほうにあるらしく、神社の中を少し歩いた。お賽銭を入れようかどうか迷ったけど、幸か不幸かそんな暇はなかった。祠は案外わかりやすい場所にあって、きちんと手入れもされているようだった。僕達が想像していたような禍々しさは一切なかったけど、そのかわり神秘的な雰囲気を纏っていた。まさに触れてはならないもの、みたいな感じでね。 まぁ最初こそ雰囲気に気圧されていた二人だったけど、割とすぐに余計なことをし始めた。な

んと祠に何かの液体をぶちまけたのだ。もちろん僕は驚いたし、荷担していたと思われる伊藤でさえ目を丸くしていた。まさか本当にやるとは思っていなかったようだ。高橋によればそれは人ならざるものの力を弱める水だという。すると聖水みたいなものかと思ったが、神も悪魔も関係ないらしい。見境なく弱めるのはどうかとも思ったが、逆に人ならざるもの全体を対象にしているということで、若干信憑性が高くなっていたかもしれない。まぁそれでもただの水であろうという考えは揺るがなかったのだが。しかしながら、その水は本当に人ならざるものに効くらしかった。呻くような声が漏れ、僕の意識は遠のいた。そして気が付くとここにいたという訳である

。また、冒頭に迷い込んだと書いたが、実を言うと心当たりが一つだけある。 話はそれるが、神も悪魔も、その力の源は人々からどれだけ畏れられているか、敬われているからしい。そのため、有名な神ほど強い力を持ち、知名度の低い神はあまり力を持っていないということだ。今回言った神社は畏れられなくなって久しく、居ついている神の力も随分と弱っていた。そこに人里に紛れ込んでいる神がいると噂になり、今回神社に行くことになったわけだ。そして完全に力を失った神がどこへ行くかというと、だだっぴろい大自然のようなところという

話がある。まさに、今目の前に広がっている状況だ。もしこのまま畏れや敬いを得られなければ、僕はここでこのまま朽ちていくだろう。人里での生活は退屈ではなく、実に新鮮で面白いことばかりだったが、こんなことになるんだったらやめておいたほうがよかったかもしれない。とにかく、今僕にできるのはここで存在が消えていくのをゆっくりと待つことだけである。これまで神社の手入れをしてくれている物好きな人間のおかげでなんとか消えずに済んでいたが、よもやこんなことで終わりを迎えようとは。そのうち皆から忘れられ、神としての存在も消えてしまうだろう。後悔してももう遅いが、この退屈な場所ではこのとめどない思考だけが慰めになる。も

し他の人間がこの悲しい愚かな一柱の独り言を読んでいる人間がいるなら、もし人間に化けている神が居ても何か危害を加えているのでなければそっとしておいてほしい。もはや僕の願いはただそれだけである。うっかり神になった化け狐の哀れな末路が書き留められたこれを広めてくれれば、それはそれで嬉しいけど。


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