鉄血工造はイレギュラーなハイエンドモデルのせいで暴走を免れたようです。 作:村雨 晶
この回で潜伏者と合流します。
時は少し戻って救護者が列車砲へ突っ込む前。
救護者は強奪した装甲車を走らせ、ナビが示す地点へ向かっていた。
無表情で運転していた救護者だったが、見えてきた景色を見てブレーキをかける。
「……ふむ」
救護者は車を降りると崖の上から下の線路を見渡す。
ナビには列車砲の位置は表示されていたものの、詳細な地図までは表示されていなかった。
この世界の道が分からなかった救護者は誤って線路の上に着いてしまったのだ。
救護者が横へ目を向けると列車砲が既にこの場に近づいてきており、今から迂回する時間がないことを知らせてくる。
「いささか強引ではありますが、仕方ありませんね」
救護者は装甲車へ戻り、乗り込む。
エンジンをかけ、思いっきり吹かす。
凶悪なエンジン音が響き、マフラーから煙がもうもうと立ち上がる。
やがて列車砲が救護者のいる崖の真下を通りかかったその時。
救護者は装甲車を急発進させ、崖の上から飛び出した。
一瞬の浮遊感。その直後に装甲車は列車砲の上部に取り付けられた副砲を屋根ごと突き破った。
歪んで開かなくなったドアを蹴破り救護者は外へ出る。
そこには銃を持った男たち。
彼らを即座にテロリストと判断した救護者は拳を構える。
「…緊急治療を開始します」
一番近くに立っていた男に瞬時に肉薄し、顔面を殴り飛ばす。
突然のことに反応できなかった男は吹っ飛び、他の男たちを巻き込んで壁へ激突する。
数人が我に返り、銃を撃とうとするが、時には銃身をつかまれ、時には拳で銃口を逸らされてやはり顔面を殴られて昏倒した。
やがて全員を殴り飛ばし、気絶したことを確認した救護者はテロリストたちを縛り上げ、通路へ転がすと、近くにいた男を見る。
「貴女は?」
救護者は本来衛生兵として作られたハイエンドモデルである。
故に、相手が人形であるならば見るだけでそれが分かるし、その性能もある程度看破することができる。
そのため目の前の男が鉄血のハイエンドモデルであり、その姿が偽装であることに気が付いていた。
「…鉄血工造所属、潜伏者」
「なるほど、私と同類ですか。ちょうどいい、私とこの列車を制圧しましょう」
潜伏者が端的に答えると踵を返し、違う車両へ足を進める。
そんな救護者を潜伏者は慌てて呼び止めた。
「待って。貴女は?」
その声に救護者は足を止め、潜伏者へ向き直る。
「鉄血工造所属、救護者。……あなたと同じ、違う世界から来た人形ですよ」
それだけ答えると、救護者は再び歩みを進めたのだった。