鸞ト己テリモ積モ塵   作:サボテンダーイオウ

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11 『あの子とえれなのcooking』

くーside

 

今日はバレンタインデーらしい。正確にはあともう少しでバレンタインになる。

つまり真夜中なのだ。しかしバレンタインなるもの、海外と日本のものとは一味違うらしい。日本独自に築かれた文化?らしい。だから女の子は好きな男の子にチョコを贈る。というか日本のお菓子メーカーがそう考えたとか?君尋はゆうこに「チョコ食べてぇ~」と夜中に呼ばれてせっせとフォンダンショコラっていうのを作ってる。

 

「おいしそう」

 

よだれが出てきた。

 

「くーちゃん、よだれ出てるから」

 

おっと、君尋に叱られてしまった。

 

「別にみてるだけだよ?ホントだよ?」

「その手は何?」

 

ぺしっ。手を軽く叩かれた。

 

「痛い…」

 

さて、君尋が鬼ババでチョコくれないから何しようかな?

ゆうこが「チョコチョコ」って煩いからすっかり目がさえちゃった。夜中にチョコ食べるなんて太ると思う。ニキビとかできると思う。ゆうこは虫歯になると思う。というかあれは大酒飲みだから絶対健康体ではないと思う。

 

「くーは本当に素直なんだから」

 

みょーん。意地悪ゆうこが意地悪にわたしの頬を伸ばす。これでもかというくらいに。

……むぅ、なんか面白くない。

君尋は誰にあげるんだろう…。ふと、思った。

わたしはもちろん!百目鬼さんにあげるつもり。だって『好き』だから。あげる。

ゆうこにもあげる、ひまわりさんにもあげる。モコナにもあげる、えれなさんにもあげる。

あ!天姫さんにもあげよう!喜んでくれるかな?…逢いたいな……今何してるのかな?

 

でも、君尋には………なんでだろう。君尋はみんなとちょっと違う『好き』だから、みんなと同じものをあげるのはなんとなくいやだ。

 

何か、特別なものがいい。

 

そうだ、えれなさんに相談してみよう!わたしは急いで自分の部屋に戻った。

そうしたら、えれなさんがニコニコして待っていてくれた。

 

『くーちゃん、今日はバレンタインね』

「うん、あのね。君尋にあげたいけど、何をあげたらいいかわからない。だから何をあげればいいのか教えて?」

『君尋君はくーちゃんにとって『特別』な人?』

「『特別』?『特別』って意味がわからない…。天姫さんは大好き。あの人のこともっと知りたいって思う。けど、それとは違うし…。君尋はわたしにとって、『傍』にいて当たり前な人?とっても温かくて、毛布で優しくくるんでくれる人」

『そう、良かった…くーちゃんにそういう人が傍にいてくれて』

 

ぽん、とえれなさんは嬉しそうに手を叩いた。何か思いついたみたいだ。

 

『それじゃあ私の故郷のお菓子を作りましょうか』

「故郷?えれなさんって何処の生まれ?」

『イタリアよ』

「へぇ~?なんで日本にいるの?魂って何処まで移動できるんだろう」

『私は『呼ばれた』という感じかしら…?たぶんくーちゃんに呼ばれたのかもね』

「わたし?全然呼んでないよ?というかえれなさんの事とかついこの間知ったもん」

『ええ、私もアナタが緋奈の『血縁者』だったなんて知らなかったわ。でも侑子が教えてくれたから』

「ゆうこ、が?」

 

初耳だった。あの『謎』と『大酒飲み』と『毒牙一発』が売りの怪しさ爆発売り出し中のゆうこが?正直、信じられなかった。わたしは。

えれなさんはわたしの心情など知らずに、ウキウキとしていた。

 

『ええ、それじゃあ朝になったら始めましょうか。今は少しでもお休みなさいな。材料は任せて?用意しておくわ』

「え!?えれなさん『幽霊』なのに大丈夫なの?」

 

だがそこは問題ないらしい。胸張って

 

『ええ、私これでも年季が入った『幽霊』だから』

 

と大船に乗ったつもりで任せなさいと張り切って『おやすみなさい♪』と手を振って消えた。……とりあえず、寝るか。

君尋の「くーちゃん?チョコ食べないの~?」と呼び声が遠くで聞こえたが先に眠気がきてしまったのでその声に返答することはできなかった。

 

◇◇◇

 

君尋が学校に行ってる間に作ろう作戦開始!

いつも君尋が使っている台所はいつもピカピカですごい。思わず、指先で触っているときゅっきゅ!と音がした。感嘆しかでない。

 

『さぁ!それじゃあ始めましょうか♪』

「うん」

 

えれなさんはブリブリのヒラヒラがふんだんにあしらわれたエプロンをつけていて

わたしはゆうこに無理やりつけられた割烹着に三角巾という君尋スタイル。

 

『今日作るのは『カンノーリ』よ』

「カンノーリ?何それ?」

『カンノーリはね?小麦粉ベースの生地を薄くのばして、正方形に切ってから金属製の円筒に巻き付けて低温の植物油かラードで筒状に揚げた皮の中に、甘みをつけたリコッタ・チーズにバニラ、チョコレート、ピスタチオ、マルサラ酒とかローズウォーターやそのほかの風味のうちいくつかをまぜ合わせたクリームを詰めたもので主にシチリア島が発祥とされているお菓子なの。昔の有名な映画なんかにも欠かせない重要なお菓子だったのよ?ちなみにカンノーリは複数形として言われていて、単体一つの場合は『カンノーロ』と言われているの』

「……ややこしい、…つまり今日作るのは複数形のカンノーリ?ってこと?」

『正解♪』

 

パチパチと拍手してくれたえれなさん。

ちょっと照れてしまうがな。

 

「よし!お勉強タイムは終了だ。頑張って作ってやる~」

『その意気込みよ!くーちゃん!』

 

えれなさんがなぜか赤いバケツを出して『えいっ♪』と豪快にひっくり返すとなぜかそこからカンノーリの材料とか必要な道具とかがドバァ~と出てきた。

 

「……えれなさん、魔法使えたんだ~」

『え?ああ、コレ?雪彦に借りたのよ。くーちゃんとお菓子作るって言ったら気前よく貸してくれたの』

「……ユキヒコ?なんかよくわからんけどすごい人なんだね?」

『ええ、それじゃあ始めましょう?』

 

『「Avviare la cottura!」』(調理開始!)

 

◇◇◇

 

四月一日side

 

今日は散々な目にあった。

せっかくくーちゃんにたべて貰おうと思ってたのにくーちゃんはそれはそれは可愛い寝顔で寝ていて、わざわざ起こすのは忍びないので学校終わってから食べてもらおうかと思ってたのになぜか俺がひまわりちゃん用にあげようと思ってたフォンダンショコラがひまわりちゃんがおやすみという事でせっかくなら自分で食うかと用意していたのにそれが百目鬼に目をつけられ!あわやアイツの胃袋に収められてしまうという最悪の事態に発展した。

まぁ?それはいいさ。食べたければ勝手に食べればいい。

俺はくーちゃんに食べてもらいたいのであって、決して!百目鬼に与えようと思ったわけじゃない!……なのに、だ。

 

どうしてトラブルに合うんだ?

さっさと帰りたいのになぜか百目鬼と一緒に帰ることになってその帰り道突然見知らぬ女の子がバレンタインのチョコを捜していてちょうど良かったと嬉しそうに百目鬼の躰に手を突っ込んで俺が作ったフォンダンショコラだけ持っていたならまだしも百目鬼の魂まで一緒に持って行ってしまう結果に。

 

焼き芋買いに外に出ていた侑子さんがにやにや顔しながら

 

「さっさと取り戻さないと百目鬼は一生寝たままよ」

 

なんて脅すもんだから俺は

 

「さっさと帰ってくーちゃんにたべてもらいたいだけなのにー!?」

 

と喚いて巨大な鳥を運転するモコナの後ろに乗っかって御空にふわりと飛んで行った女の子を追いかけることになった。

 

そこから俺の大冒険が始まった。

 

遥か上空、本来来ないような高い空の上で空飛ぶスノボ?に乗った子供からハリセン攻撃を仕掛けられ俺はその一発を避けつつも、人数は向こうのほうが上で全てをよけきれずに、鳥から落っこちてしまいああ、俺死ぬ?と思ったその時、

 

「四月一日さんっ!」

 

追っかけていた女の子の『力』なのかわからないけど、地上に叩き付けられることは回避された。というか助けられた。少女の意図がまったくわからないまま百目鬼の魂チョコを返して欲しいと言うとなぜか少女は

 

「アナタに渡したかったんです…」

 

と逆に差し出される結果に。

 

「え?」

 

少女はあっという間にスノボに乗った口調荒い子供たちと一緒に御空の彼方へ消えていった。

 

後から侑子さんに言われてわかったこと。

あの少女は座敷童で、俺にどうしてもチョコを渡したかったけどそこらへんにあるチョコでは納得がいかなくて結果、『力』ある俺が作ったフォンダンショコラと『祓える力』を持つ百目鬼に一度取り込まれたチョコこそ、少女が求めていたチョコが出来上がったわけだ。

俺は魂チョコを百目鬼の胸に溶け込んでいくのを見届けながら焼き芋を喰う侑子さんに尋ねた。

 

「侑子さん、結局これって俺がもらったことになるんスか?なんか違うような…」

「『言葉』でいうならまさにそうでしょう?」

「言葉?…意味わからん…」

「『次』でわかるわよ」

 

そういって侑子さんは意識を取り戻した百目鬼に焼き芋を勧めていた。

まったくもって、今日は意味不明な日だ。それよりもさっさとお店に行ってくーちゃんに俺の手作りフォンダンショコラを食べてもらわねば!と思い、足を動かすことにした。

 

◇◇◇

 

店に着いてやけに静かだなと思った。

くーちゃんの姿を探しながら彼女の部屋に足を踏み入れた途端、

「Music start!」

 

と掛け声一つで目の前は多彩な光を演出するミラーボールが頭上に現れ軽快な音楽がジャンジャカ鳴りだす。昔良きバブル時代、ディスコなる場所を再現したと言っていいだろう。

目の前にはお立ち台という床よりも高い台が設置され、くーちゃんが羽根付き扇子で楽しそうに「ホウ!ホウ!」と奇声上げながら楽しそうに踊っている。

 

「………」

 

俺はそれだけで固まった。

 

「…………」

 

いや、正確にはくーちゃんの足元で腰振って踊っている物体を目にしたときから思考が停止した。いきなり昔の演出でくーちゃんがノリノリに踊りだそうが別にそれはいいだろう。本人が楽しいなら、俺は止めやしない。

 

けれど、違う。アレは納得できない。

そもそも、あれは地球外生命体ではなかろうかと思った。

絶対この世の生き物ではないだろうと断言できた。俺は指差してくーちゃんに尋ねた。

 

「くーちゃん、コレは何?」

「えへへへへ、君尋に食べて欲しくて作ったんだ~」

 

くーちゃんは羽根付き扇子で顔を隠す。

いや、照れるのはいいけど。うん、俺の為に作ってくれたのはいいけど。

 

「この物体は食べれるの?」

 

俺はまた尋ねた。くーちゃんはにっこり微笑んで

 

「うん、一緒に踊ってるけど食べれるよ。だってお菓子だもん」

 

と言った。俺はその踊っている物体を摘み上げて再度くーちゃんに見せた。

 

「この手足が生えて尚且つ軽快にリズムとって踊ってる物体がお菓子なの?」

 

と。くーちゃんはさっきと変わらずにっこにこで

 

「うん!えれなさんが味見してくれたけど『大丈夫!味は最高よ味は!君尋君なら見た目なんか気にしないで食べてくれるはずよ!?だってくーちゃんが一生懸命に作った真心が込められたお菓子ですものっ!』って太鼓判押してくれたから」

 

俺はまったく面識のない『えれなさん』に向って叫んだ。

 

「えれなさぁぁあああああんんんんー!」

 

くーちゃんがえれなさんに教えて作ってもらったお菓子。

カンノーリというらしいが、味は確かにおいしかった。食べるまでが恐怖との闘いで、俺は初めてお菓子と睨み合いをした。でも納得がいかない。

どうやったら、手足が生えるお菓子を作れるんだっ!?

侑子さんは意外にもバリバリ頭から食べていた。

 

「うん、おいしいじゃない」

「でしょ!?」

 

くーちゃんは嬉しそうにしていた。後で百目鬼の野郎にもあげるとくーちゃんはルンルンと踊るお菓子を箱詰めしていた。けれど踊っているので箱がガタガタと揺れて正直、怖かった。

 

(くーちゃんにはある種の天才的な能力があることがわかった)

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