鸞ト己テリモ積モ塵   作:サボテンダーイオウ

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18 『ゆうこのきょういく』

 

元気百倍!くー様登場也。たったかと廊下を走り目標発見すると同時に床をばっと蹴って勢いよく見慣れた背中に突進する。

 

ぼすっ。

「君尋~、スイートポテト食べたいぞ!超特大のおねげぇ~しますだ!」

 

なぜなまっているのかは知らないがくーは満面の笑みで君尋にねだった。

季節は少し肌寒くなった秋に突入しようという時期。スイートポテトも旬である。

さて、ねだられた方の君尋と言えばなぜかガッチガチの強張った笑みを浮かべながら振り返り

 

「お、おう!くーちゃんの為なら死ぬ気の炎を灯してみせるよ!」

 

と後半何を言っているのかわからない台詞を言う。勿論のこと、くーは理解できずにきょとんとした。

 

「は?」

「ハっ!?俺何言ってんだよ俺!?ご、ゴメン!?すぐに準備してくるからっ!」

 

脱兎の如く言うだけ言って逃げ去り君尋。残されたくーはと言うときょとんとした表情で「変な君尋」と首を傾げた。

 

なんだかおかしな二人。

そう、以前くーの大胆発言によりちょっと甘酸っぱい雰囲気になった時があった。

侑子の策略により座敷童の元へ向かう事になった二人だったが、そこで座敷童へのホワイトデーの品物を見てしまったくーが、わたしに欲しいとねだった。

それが『ずっとわたしのお菓子を作って欲しい』というもの。

その意味を深読みしてしまえば、一生自分の側にいて欲しいとも読める言葉。案の定、君尋はその通りにとってしまい、今じゃくーを意識して仕方ないほどな状況。

ちょっと近くにいたり指先が触れただけで、初心な乙女の如く、頬を染め照れくささと高鳴る鼓動を鎮める為に後ずさりする始末。果てには逃亡。

 

しかし!真実は違っていた。

実は、くーは君尋とはまったく別の意味で言ったのだ。

つまり本当に言葉の意味そのままそっくり。君尋の美味しいほっぺた落ちそうな夢のお菓子たちを他の人物にとられたくないという独占力から伝えた言葉。

自分だけの為に作って欲しいからそれをホワイトデーのお返しにしてくれとお願いした。

この関係に名をつけるとしたらこれしかなかろう。ザ!すれ違い。

侑子がこの場にいれば『フフフ、青春の香りねぇ!』と極限に面白がる場面。

 

「うわ……俺、心臓持つかな……」

 

と言いながら台所に逃げてぎゅっと服越しに心臓部分を手で当てる君尋と

 

「あーあ、腹減った」

 

ぐーぐぐーと腹減ったコールが鳴るおなかを手で押さえただ君尋が作るスイートポテトを待つくー。とりあえず、二人のすれ違いは続きそうである。

 

(ちょっとは進展あったかも)

 

◇◇◇

 

くーside

 

ゆうこの知り合いはホントたくさんいるなって思った。その理由はすぐにやってくる。

君尋が宝物庫を掃除していて、わたしもお手伝いしていたら棚の上にあった猫さんの絵が入っていた写真立てがいきなりカタ、カタタ!と揺れ出したかと思うと

 

「おわ!?」「おお!」

 

なんと絵から猫さんが飛び出して来た。

鬼灯(ほうずき)を手にもって、だ。どうやらゆうこの知り合いらしい。

君尋の驚く声にひょっこりと顔を出したゆうこと猫さんはあいさつをして、酒盛りに突入!君尋は忙しなく台所と縁側を行ったり来たり。マルとモロも

 

「おつまみー」「おさけー」

 

と楽しそうに行ったり来たり。わたしはゆうこの隣でジュースを飲みつつ猫さんを観察することにした。

ぷはっ!仕事の後の一杯ってのはうめぇもんだな!って、リーマンたちは居酒屋とかで言うらしい。

なるほど、勉強になるぜ!それに喋る猫ってレアだもん。

えれなさんにも教えてあげよう!猫って喋れるんだよって。

どうやら猫さんの名前は『灯(あかり)ちゃん』というらしい。

ゆうこがそう呼んでいるからわたしもそう呼ぶことにした。

灯(あかり)ちゃんはくいっと酒を飲みつつ横目でバタバタと忙しない君尋を見やる。

 

「おやおやこの子が噂の少年かい」

「そう」

 

と相槌をうつゆうこは、さっきから何杯目のお酒でしょう。

そしてわたしは何度おつまみに手を出そうとしてゆうこに手を叩かれているでしょう。

けっ!別に食べたっていいじゃないかと視線で訴えると

 

「アンタの胃袋は底なし沼だから駄目よ」

 

と言われた。ふっ、わたしがそう簡単に諦めると思うてか!

 

シュンシュンシュン!

 

どうだ見えないだろう!?わたしの風よりも早い手の動きは!

 

残像すら見えてしまう高速手さばきにゆうこは目をキラリン!と光らせ

 

「甘いわね」

 

ベシ、ベシシ、バシィィィンンン!

 

とわたしの手を叩きまくる。

 

くそ、痛いぜ……!さすが、毒牙一発女……。並々ならぬ闘志をひしひしと感じるぜ。

 

滴り落ちる汗を手の甲で拭いながら、相手にとって不足なし!とわたしは口角を上げた。

地味に攻防が続くわたしとゆうこの横で灯(あかり)ちゃんは君尋に話しかけた。

 

「お前さん、コッチの世界じゃ有名人だよ」

「え?俺がッスか?」

「そいでもってお前さんも」

 

いてっ、ゆうこめ。今度は強く叩きやがった。

イテテ、と手の甲を撫でてふと視線が集中していることに気がついた。

 

「?」

 

なんですか?全然話聞いてなかった。

 

「わたし?」

 

なんか君尋のオマケ扱い?別にいいけどなんかわたしって有名人だったのかもってちょっと思う。あの雨童女といい、猫さんといい知り合いに人間がいないのがちょっと心配。

わたしって一体何人間だ?

 

「そう、小さな竜の娘さん。しっかり学びなさいよ。アンタにゃ期待してんだからね?」

 

小さな竜の娘?わたし人間じゃなかったのか!?

ちょっとショック。ここは君尋風に言うとガッデム!

 

「灯ちゃん」

 

ゆうこがわたしと灯(あかり)ちゃんに会話を遮る形で彼女の名前を呼んだ。

またゆうこが怖い。それ以上言うなって視線と言葉で牽制しているみたい。

 

「わかってるよ、あいさつだけはちゃんとしたかったからね。余計な事は言わないさ」

「なんかわからんけどありがとう、灯ちゃん」

 

お礼を言うのと同時に期待に応えられるかわからないけどとも付け足すことは忘れないしっかり者のわたし。えっへん!

 

「もう時間だね、それじゃあ侑子ちゃんに」

 

と灯ちゃんが差し出す鬼灯をゆうこは

 

「それは四月一日にあげて」

 

と言った。灯(あかり)ちゃんは一つ頷き

 

「そうかい、それじゃあホラ」

「俺?」

 

と君尋に鬼灯を手渡す。灯(あかり)ちゃんは「また来年」と庭先から消えて行った。

残された鬼灯は、『ぽわぁぁん』と静かに優しく妖しげに光る。

君尋は渡された鬼灯片手にどうしろと?と困った様子。

ゆうこはニンマリ微笑んだ。あ、これなんかたくらんでる顔だと直感。

案の定、君尋は後にゆうこからあるお使いを頼まれたみたいだ。

わたしも一緒に行きたかったのにダメだって言われた。

 

次の日の夜、君尋がお使いに出てしまって暇を弄ばせていた時、ゆうこから君尋を迎えに行くから着替えなさいと告げられ、わたしは嬉々としてはしゃぎすぐさま服を着替えてゆうことお店を出た。

 

ゆうこの手には大きなお重箱を包んだ風呂敷包みが一つ。勿論、わたしも荷物を持たせられた。働かざるもの食うべからずというやつらしい。

 

よっしゃ!わたしはフルパワーで目的の公園まで荷物を運んだ。

ゆうこはマイペースでわたしの後方を歩く。時折、「こら、走るな」と怒られたりして。こそばゆいなと思いつつ「大丈夫の助!」と言い返してあれよあれよという間に公園へ。けれど君尋の姿はない。どうやら時間になったら現れるからそれまで滑り台の上でスタンバイするわとゆうこからの指示。ドッキリ作戦らしい。

わたしも乗り気で賛成し夜の公園で怪しく滑り台の頂上でゆうこと仲良くスタンバイ。

ウキウキと待っている間、はたりと気がついた。

 

これって見た目、怪しいよね?

 

ゆうこはどう思っているのだろう。正直に疑問をぶつけてみた。そうしたらゆうこは真顔で

 

「これが大人の正攻法のやり方なのよ」

 

というからわたしは衝撃を受けた。

 

そうだったのか!?こんな誰もいない夜の公園で待ち人を待つ時はこのスタイルが主流だったのか…!御見それしましたー!と感激するわたしにゆうこが

 

「フフッ」

 

とほくそ笑んでいたのをその時のわたしは知らなかった。

 

大人の階段上っちゃってんだ、わたし!

 

と感激いっぱいのままお使いから帰って来た君尋に背中からダイブしてさっそく教えてあげたら即行で

 

「違うからそれ絶対違うから騙されるから!?」

 

と大声で言われた。

 

「ガッデム!?」

「オホホホホホホホ」

 

(ゆうこの意地悪はまだ続く)

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